From The Memory Stone of Makela Leki
Makela Lekiの記憶石から
Makela Leki

 これは、Makela Lekiの所持していた記憶石に記録された思考を忠実に複写したものである。Bankorai Passで発見されたものであり、恐らく第一紀973年のものである。Orsinium陥落のためにDaggarfall、Sentinel、Order of Diagnaの連合軍の結成を試みる七年前のことである。
 Makelaは記憶石に自分自身のことを記録する手順や、学術的な記録を残すことには不慣れであったため、その大部分は主観でものが語られている。それでもやはり、彼女の英雄的で勇敢な行いを損ねるものでもなく、石の中に込められた彼女の記憶は、感じたことや聞いたことが刻み付けられていることで、生き生きとしたものになっている。

「・・・あー、あー、これってちゃんと動くのかしら?」
「動かなければ、Mages Guildは25,000ゴールドの山盛りをふんだくってくれたことになるわね。想像できる? この石が私の思ってることを記録するですって? 何て言ってたかしら? 銀箔と皮袋を開けて身体に触れさせるとすぐに記録が始まるようね」
「うう、痛くてたまらない。遮断しなきゃ。痛みまで記録しちゃったら私の石を持って考えてることを聞きたいなんて誰も思わないでしょうし。EbonarmとHall of the Virtues of Warで受けた訓練に感謝いたします。この痛みを遮断できそうね。ええと、そうね、あ、あそこ、仕切りがあるわ」
「ああ、そこにいるのが見える。意識の彼方に、飢えた狼のようなものがうろついているのが――もうじき私を食べてしまいそうな狼が。これらのひどい傷のお陰で、死ぬのは避けられないかしらね。薬も無いし、治癒魔法が込められたクリスタルや指環も使い切っちゃったし、蝋燭を灯せるだけの魔力も残っていないの。ああ、でも神様は私に他の才能、剣の歌の才、戦いの歓喜、Frandar Hundingの『Book of Circle』、剣の道を教えて下さった。ああ、でも私の話をしなきゃ。ちゃんとしなくてはね。
 私は戦士Makela Leki。Sword Singer、Anseiの第二段。私が揺り篭の中にいた時、霊剣Shehaiを作ったんですって――神秘的な剣よ。澄んだ心から作られるもので、私のは大蛇と薔薇の蔓とが絡み合って剣を形作っているの。その美しさといったらまるで・・・。
 ああ、でも私はあなたに全部聞いてもらわなくっちゃ。あなたに、私の話を。勇敢に戦った話を。私の愛を。私の戦いを。裏切りと、この最後の素晴らしい勝利のことを。あなたに、どうやって私と五人の仲間がこの遠くて人里離れた峠に来たか、人間や怪物と戦い、夜中に卑怯者のように私の同胞に襲い掛かる兵士たちを打ち倒してきたかを教えたいわ。でも、自分のことをもう一度言わなくてはね。
 私は純然たる戦士よ。Maiden of the Spirit Bladeとして育ったの。Singerになりたがっていたことを思い出したわ。握っていた剣の渇望を感じるために、活力と敵を葬り去るのを感じるために。随分昔、同胞が砂漠を故郷としていた頃、私たちの民は職人と詩人だったってことを聞かされたわ。今、Hammerfellという名がついている新しい故郷では、同胞の多くはそういう昔のやり方に戻ったのだけれど、私にとっては、道は一つしかなかった。剣の道よ。
 どう言えばいいのかしら。私は高貴な家柄の出なんだけど、三人の兄弟と二人の姉妹のうち、たった一人が剣の歌の呼び声を感じることが出来たの。父は解っていたわ。彼も呼び声を感じていたから。父は家族が育った土地に落ち着くずっと前に師範とAnseiになったの。十一歳の時、私はHall of the Virtues of Warに入って、Maiden of the Spirit Bladeたちに加わったわ。団員は六人。勇敢なるJulia、不動のPatia、大なるKati、しなやかなCegila、賢明のZell、そして私――みんなもう死んでしまったわ、私を助けようだなんてして。でも、私もすぐにみんなと一緒のところに行きそうね。・・・名も無き戦神の殿堂で、また仲間になるんだわ。
 みんなで一緒に酒を飲んで、一緒に戦って、一緒に泣いて、一緒に剣の道を窮めたものよ。Brothers of the Bladeたちと一緒に、訓練場での鍛錬に参加したわ。お互い学びあって、Hall Masterの足元に一緒に座って、Shehaiの奥深さを一生懸命学んで――Frandar Hundingがそうなさったように、実物の剣のように霊剣を作り出すものよ。心と徳が澄み切った一握りの人がその境地に足を踏み入れ、剣聖であるAnseiたちの神秘を学ぶことができるの。
 全てのBrotherとMaidenたちのうち、私だけに特別な資格があったのかしらね。そんなに多くは無いけれど、Shehaiの力を呼び出す程度には強い魔力を持っていたの。何度も召喚してみても、滅多に武器と呼べるほどのものにはならなかったけれどね。
 初段のAnseiになるためには、それを召喚出来ることが求められるの。で、私はそれが出来たわけだから、二つの仲間たちが集ったその道場の、最初のAnseiになれたのよ。ああ、沢山言いたいことがあるのに。沢山の記憶、あなたと分かち合いたい沢山の宝、無名の仲間たちのことを言いたいのに。どこから言えばいいのかしら?
 ううぅ・・・痛みが飢えたようにうろついてる。ゆっくりと私の残りかすを食べているようね。最後の戦いのことを話したほうがいいか。私がここに残せるものの一つだから、私の人生のことや、Raliphへの愛のことをこれを聞いている人に遺しておきたいわ。ああ、いい人だったわね・・・素敵な時間を共にして・・・Ebonarmよ・・・お許しください、心が浮ついてしまったこと・・・最後の戦いのことを話しましょう。
 うぅ、続きから、始めましょ、くっ。ええ。私たちMaidanは育ち、学び、道を窮めて、Walk-Aboutを完了させたわ。Singerでない人たちのために言っておくと、Frandar Hundingの時代を真似て荒野を旅するのが趣旨なの――私たちはそれぞれ辺境に赴いて世直しをして、怪物を倒して、美徳の名において探索をするのよ。私たちの殿堂の何人かは、終わらせるのに何年もかかったわね。常に危険に晒されるの。私たち六人のMaidenは運良く戻って来れたけれど、Walk-Aboutから生きて戻って来れない人も多いのよ。私たちは戻ってきたわ、生きてることを各々確認するために、週に一度道場に戻ってきて自分たちの話を新たなMaidenやBrotherたちに話して、剣の道を教える者として教鞭を取るのよ。MidYear Festivalの夜まではね。
 私たちの民はみんな飲めや歌え・・・じゃなかった・・・食事を楽しむの。私たち六人のMaiden以外はね。たまたま、その祭日の日が道場で落ち合う日で、剣の道に祈りを捧げ、断食を行い、その栄誉を讃えることになってるの。
 落ち合って、その夜遅くに、ノックの音が扉の外から聞こえたの。開けると、Wrothgarian MountainsのBankorai Passの守衛がいて、傷を負って死に掛けてた・・・北の裏切りのことを話したの。High RockのCrystal Towerが侵入に手を貸していたわ。DaggerfallのJolie王が――Orsiniumとの戦争の同盟国が!
 私たちは傷を治すためにすぐ回復のクリスタルを使ったわ。我々は王の所に彼を送って、その間に私たち六人は力となる武器と鎧を取って、持てる限りの薬や、印、クリスタルや指環を取った。
 手遅れになっていないようにと祈りながら、峠に飛んで行ったわ。私たちの旅は無駄じゃなかった。丁度最後の三人の守衛が軍隊に制圧されかけていたところだったから。峠に入る時、古典的な隊列を組んで、六人並んで、走りこんだわ。
 ええ! 私たちは戦い抜いた。
 剣の歌は邪悪なる者どもの群れを切り裂く、痛快な歌だった。何時間も戦った。Juliaが最初に死んだわ、毒を塗ったダガーが卑劣にも彼女の鎧の切れ目に差し込まれたのよ。それから、順番に皆死んでいって、私が助かった。
 ・・・ああ、無慈悲なEbonarm・・・それから私の愛用の剣が、父の剣、大蛇のとさかのついた、剣鍛冶の達人Singer Tansalの打ち出したものが、手の中で壊れていった。みんな死んでしまった。私たち六人の死を無駄にして。今や、奔流のような軍勢が峠を流れ下ろうとしていた。生まれたばかりの子供のように、格好の餌食となった。悔しくて涙が流れた。
 それから、家の炉辺にあったもの――本のことを思い出したの。Frander Hundingの『Book of Circles』、戦略の技法が書かれた本。霊剣Shehaiを手に取った。私が必要としたときにはちゃんと形作られなかったものを。眺めると・・・それは生きていた。炎を纏って生きていた。私の手の中で形となっていた。力が溢れかえって――ええ! 果敢に斬り飛ばしたわ。右に左に、小麦を刈り取る鎌のように。Lord of the Towerまで、戦い抜いて見せたわ。一振りすれば魔法が込められた鎧を切り裂いて、もう一振りすれば首が飛んだ。
 でもそれと引き換えに、沢山の傷を負った。魔力が込められた鎧は身につけていたけれど、私の霊剣のようなものではなかったし、私の剣や霊剣ほど頑丈じゃなかったの。だから、ひどい傷を負ったわ。
 Jolie王を倒して、軍隊を蹴散らしてやったわ。あいつら、私の怒りを前にして逃げ出したのよ。みんな、同胞の死体や負傷者を集めるために立ち止まることもせず、峠を尻尾を巻いて逃げてったわ。立っていることが出来た者は、みんな命惜しさに逃げてった。追いつける限りの者を斬っていったけれど、息切れと、痛みが・・・。
 とうとう私は今あなたが私を見つけたでしょうこの岩の上で、腰を下ろすことにしたの。何故たまたまこの石を持ってきたのかは解らないの。高価なものとはいえ、気まぐれで買ったのに・・・ああ、この辺にして私の話に戻りましょう。もう少しあなたに語りかけることが出来そうね・・・永遠の夜は、思ったよりゆっくりやって来ているみたい。
 まだ、辞世の詩をかく準備ができていなかったわね。ほんの一口の水と・・・まあ、話を元に戻して、あなたにわたしの生涯のこと、戦いのことをもっと詳しく話したほうがいいかも。そして、ああ、そうね。Raliphとわたしたちの子供たちのことを、ううん、どこから始めようかしら。
 ・・・うあ・・・ぁぁぁ・・・。
 わたしは・・・純然たる戦士・・・Maiden of the Spirit Bladeとしてそだった・・・さいしょに・・・最初におぼえているのは・・・」


 訳注
 Ebonarm・・・戦士たちの神。
 Frandar Hunding・・・Redguardの英雄。以下はUESPより。
 有名なRedguardの英雄であり、正式名はFrandar do Hunding Hel Ansei No Shiraではあるが、省略してHundingと呼ばれることもある。High Desert地域の境界域である遠い砂漠地帯にて、旧暦で2356年、第一紀720年あたりに生まれる。Hundingとは、生まれた場所に程近いHigh Desertの一地域の名前である。No Shiraは貴人あるいは貴人より生まれた者を意味し、Hel Anseiとは剣聖たちにおける彼の称号である。
 14歳(第一紀734年)の頃、Hundingの父は数多く発生した反乱の一つで死に、母と四人の兄弟を支えることを余儀なくされた。
 Hundingが三十歳の頃には、九十以上の決闘を戦って勝ち抜き、敵を皆殺しにした。剣においては実質的に無敵と化し、そのような腕と知識を極めると、彼の種族の職人たちが製造していた形ある剣を使うことを止め、「霊剣の技法」Shehaiを編み出した。第一紀760年ごろ(旧暦では2396年)にDivadをもうける。Divadは父の不在に怒り、第一紀776年にサーカスの軽業師になるために出奔した。
 六十歳の頃(第一紀780年)には、無敵になったとして、隠者となってHigh Desertの山中の洞窟に隠遁し、彼の哲学たる剣の道をBOOK OF CIRCLESとして著した。六十になっても意気衰えず、まだまだと思っていたが、彼の同胞の、Sword SingerたちはHira皇帝の迫害に対して彼を必要としていた。Hundingは、息子Divadによって、Hattuに勝つための戦いの旗頭になれることを説得された。
 偉大なる戦士の王子に敬意を表するために、Hammerfellの各家庭には巻物――『The Book of the Circle』を置くために、炉辺の傍に十分な入り込みや空間をもうけるのである。
 
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