不治の病を得て

 夢の中で、黄金の仮面を被った高い人影が俺に話しかけてくる。

「Load Nerevar Indoril。Hai Resdaynia! 長らく忘れ去られ、生まれ変わった貴方! あの三人が貴方を裏切り、あの三人が貴方に背いたのです!  貴方が剣を向けた一人こそ、三人分正しいのです! このLoad Voryn Dagoth、Dagoth Urこそが! 貴方に尽くし続けた忠実な部下であり、親友として、Red Mountainに登って来てくることをお勧め致します! Red Mountainの地下にもう一度至り、貴方が縛り付けられている枷を壊し、呪われた肌を脱ぎ捨ててMorrowindからよそ者を追放しましょう!」

 ・・・疲れたんで、宿屋で寝てたんだが、余計に疲れた。
 まさか、この声の正体って本当にDagoth Urか? ええ? だとしたら敵の親玉にまで俺=Nerevarineって認識されてる? えええ・・・マジ?(´д`;)


 がっくりしながらもBalmoraに戻る。
 Nibaniさんがくれたメモは、『Seven Visions of Seven Trials of the Incarnate』と『The Stranger』の予言だったので、まあ別に改めて紹介はしない。
 それよりも、Nerevarineが俺ってのは本当に嫌なんだけれどなあ。でも、逆らったらとんでもないことになりそうだし。夢のことはともかく、Caiusに報告するかー。


「Sul-MatuulとNibani Maesaと話をしてきたか。彼らの言ったことから考えるに、やはり君はNerevarineのようだな。実に驚くべきことだ。しかし、これから先のことを考えなければな。Mehra Miloに私の言葉を伝えてこよう。失われた予言を知っている反体制派司祭がどこにいるのか、彼女ならば分かるだろう。しかし、その間に、とても手ごわい任務があるのだが。準備は出来ているか?」
「任務ぅ?」
「ふむ、まあそう考えすぎないでくれ。しかし、用意は出来ているのだな。何かのために400Drakeあるからとっておきなさい。出発する前に、回復薬を買ったり、装備を新調したり、トレーニングをちょっと受けてみたり、他の必要そうなことに使うといい。そして覚えていてほしいが、トラブルに巻き込まれたら、戻ってきて、休み、十分な休息を取るといい。あまり深入りしすぎんようにな。これは困難な任務だろう」
「どんな任務で?」
「今から任務を申し渡そう。Gnaar Mokに派遣されたBuckmoth砦の警備隊が、Sixth Houseとコネのある密売人を掃討していたのだ。一隊はSixth Houseの基地、Sixth Houseの神殿を発見し、Dagoth Garesと名乗るSixth Houseの僧侶と遭遇した。Buckmoth砦のまとめ役であるRaesa Pulliaに話を聞け。彼女は警備隊のことやSixth Houseの基地について教えてくれるだろう。君の任務は、Sixth Houseの基地を発見し、Dagoth Garesを殺害した後、Sixth Houseの基地についての詳細な報告をすることだ」
「基地の発見と僧侶の殺害、報告ですね。わかりました」

 ま、体を動かしていたほうが楽だしな。暗殺なので俺の領分でもある。


「Fort BuckmothはRedoran地区の駐屯軍だ。Ald'ruhnの南に砦はあり、Ald'ruhn南門から歩いてすぐの場所にある。Buckmoth砦のチャンピオンのRaesa Pulliaは、地元の者がIlunibiと呼んでいる洞窟にSixth Houseの拠点があることを巡視兵が発見したことを報告したらしい。しかしながら、一人の兵士だけが逃げ延びてそのことを報告し、Corprus病に感染して死んだ。死ぬ前に、その兵士は魔物や教徒どもと戦ったこと、Dagoth Garesと名乗るSixth Houseの強力な僧侶について色々報告したようだ。だがまあ、Buckmoth砦のRaesa Pulliaと話していくといい。詳しいことを言ってくれるからな」
「Corprusについて、何か知ってる?」
「それについてはよく知らない。感染者を見たことが無いからな。『Corprusの獣』と呼ばれるRed Mountainの魔物と接触すれば感染することもあり得るが。Blightの病に似ているが、もっと酷いものだと予想している。犠牲者を発狂させ、見るに耐えなくなり、体を捻じ曲げるのだという。私のツテに当たって、治療法を見つけ出してこよう。その間に、君は命令をこなしてくれたまえ。今のところ他に何も無いのでな」


 ここがBuckmoth砦。


「こんにちは、Yui-Li。Gnaar Mokの近辺にあるSixth Houseの拠点についてもっと情報が知りたいのだな?」

 Raesa PulliaはRedguardの女性。この砦を任されているようだ。

「たった一人の兵だけが戻ってきた。彼は帰還後、間もなく死亡したが、Corprus病にかかっておぞましいまでに変わり果ててしまった。心までもな。狂乱の最中にあっても、彼は海岸沿いの洞窟のことを口にした――『Ilunibi』と呼んでいた。我々の地図には載っていない。Gnaar Mokの地元の住民に聞くべきだな。一隊は教徒や、獣と化した人間――Corprusの魔物と戦ったのだと思う。魔物どもは襲撃者を撃退して洞窟の中に消えた。その中にDagoth Garesと名乗る半人間がいたそうだ。このDagoth Garesが残存した巡視兵を皆殺しにした。一人を除いてな。生き残った兵士にメッセージを伝えるためにね。『Sixth Houseは目覚めた』と、『Dagoth Urは我が主君、そして私は彼の僧侶である』と、『全てはあの方の肉の元に一つとなり』と吹き込まれた。兵士は洞窟の外で目覚めてここに帰還した。我々は彼だと見分けがつかなかったし、質問に答えられない状態だった・・・死ぬまで狂人のように錯乱し続けていた」


「兵士はどんな状態でしたか?」
「Corprus病のことは前々から耳にしていたが、見たことはこれまで無かった。その兵士の肉はぶくぶくに膨れ上がり、骨は捻じ曲がって見る影も無くなっていた。まるで夢うつつのように独り言を呟いていた。我々は最初、彼だと見分けがつかなかったのだ。服と鎧でなんとか、な。砦の司祭が呪文や薬を用いたが、病を治すことは出来なかった。彼は砦に到着して間もなく死亡した。こんなにも早くCorprusが死に至るとは思いもよらなかった。ぞっとしたよ。その兵士は震えていた。実を言えば、私も感染していないか少し恐れているのだ」
「なるほど。あ、そういえば、皇帝って今はどうなんですか?」
「現在の皇帝はUriel Septim、UrielVII、Septim王朝の二十四代目だ。皇帝は齢八十を越え、健康を損なっている。世継ぎと目されている者は二人おり、EnmanとEbelというが、Imperial Cityでは王位継承問題について論争があるそうだ」


 ふーん、と思ったのだが、王位継承問題のことはすぐに忘れた。六年後のことは思いもよらずに。

 それよりも、地元で聞いてみると巨岩「Khartag Point」の近くに問題の洞窟があるらしい。


 ここが問題の洞窟。対岸に巨岩がある。


 教徒どもか。残念ながら、俺は夢に浮かされた人間を正気に戻す方法を知らない。なるべく一発で済むようにしよう。


 洞窟には、裸の教徒の他に、


 おぞましい異形の僧侶や、


 Corprus末期の症状を呈している獣と化した人間、


 名状しがたい存在と化した魔物がいた。


 他にもアンデッドやDaedraがいる。洞窟は密売人どころの話ではない、もっと凄惨な様相を呈していた。遺体が横たわっているのをちらほら見かけたが、殺害されたという兵士たちだろうか。


 歩いていくと、洞窟の一番奥と思われる場所に、祭壇を見つけた。
 奥から僧侶が来て、俺の目の前で立ち止まった。剣を握ったので拍子抜けだったが、気は抜けない。Dagoth Garesと名乗った僧侶は、表情のない顔を歪ませると俺に挨拶した。

「Sixth Houseは貴公を歓迎します。Load Nerevar、もしくはYui-Liと名乗る者よ。私はIlunibiの神殿の司祭にしてSixth Houseに仕える臣下、Dagoth Garesとして名の通っている者でございます。私の主君のDagoth Urが貴方の到来を告げました。この機会に、剣を向けるのではなく、主君同士の友誼を結びたいと考えております」
「・・・話は聞こうか」
「Sixth Houseは滅んではいません。眠っているだけです。今や、我々は長い夢から目覚めました。我等が主君のDagoth Ur様は、外つ国の統治者と偽神からMorrowindを解放するために出て行くつもりです。偽神となった友人と、強欲な泥棒どもをこの国から払いのけた時、Velothの子供たちは荒廃した不毛の地に新たに多くの楽園を作ることでしょう」
「・・・ここはどういう場所だ」
「Ilunibiの神殿はちっぽけなものですが、Sixth Houseに仕えし者たちの静かな休息所。瞑想し、Load Dagothの示す道に従い、強く、賢くなるための場所なのです。この地にて血と肉の秘儀を分かち合い、我等がLoadの夢を見続けるのです。ここと、他のより地位の低い島中の神殿は詮索好きどもの目を逃れるために隠されているのですが。Sixth Houseに仕えし者の最も大きな神殿はRed Mountainの地下に横たわっている要塞で、我等がLoadと近しい眷属の座しております」
「Sixth Houseに仕えている者とは? まあ、ぶっ倒してきた奴等だよな」
「不躾な迎えをお許し下さい。しかし、貴方が私たちに剣を渡さない限りは、我々は貴方を敵として迎えねばなりません。SleeperとDreamerはLoad Dagothの元に集いし新参で、彼の力を吹き込まれて祝福されておりません。しかし、あの方の肉を享けた子供は、あの方の神秘の力に心の底まで浸されております。彼らの肉体はあの方の恵みを得て大きくなり、我等がLoadの宴の素晴らしき聖餐をもたらすのです。そして我々はあの方に仕えしAsh Poets、Ascended Sleepers、Ash Vampiresの末席に連なる者、彼らは主君の惜しみない栄光に浴し、我らの上に立つ方々」
「で、Dagoth Urは俺に夢で来いとか言っといてお前たちが殺しに掛かるってどういう了見だ」
「Load Dagothは貴方を敵ではなく、親しい友人として見ております。しかし、あの方に従う意思を見せない限りは、Sixth Houseに仕えし者は敵として見なしますし、殺そうとします。もし我らの同胞となることをお望みなら、まず彼の城であるRed Mountainに座すLoad Dagothの元に行き、過ちを償うことです」
「ふーん・・・で、Dagoth Urってどういう奴だ」
「Dagoth Urは目覚めしSixth Houseの長。偽神を撃ち下し、異国の者をこの地より追放し、Morrowindの昔の栄光を取り戻すためにお出でになられる。あの方は貴方にRed Mountainを訪ねてきてほしいとお望みです。かつて我々が背負いあった交友と名誉のために。あなたが新たに友情を誓いさえすれば、私はあなたに助言と力を与えましょう。Red Mountainへ至る道は長く険しい。しかし、価値を見出せば、あなたはそこで知恵と、確固たる友人と、正しく世界を支配するための全ての力をそこで見つけるでしょう」
「・・・俺とお友達になりたいってか、で、その手に持ってるカンペは何だ」
「Load Dagothは貴方に伝えるように、と、これらの御言葉を下さいました。お聞きくださいな。『平和な時も騒乱の時も、我々は友であり兄弟でありました。どんなHousemanよりも、ずっと良く、忠実に仕えてきました。あなたの命令を沢山こなしてきました。多くのものを失いましたが、とても名誉なことに思ったものです。Red Mountainの地下で、あなたは私を宝の守りに呼び出しました。私が宝を守っていた時、あなたのことが心に浮かんだものです。あなたの手で打ち倒されたことがどんなにひどい裏切りとして私の心に打撃を与えたことか。しかし、我々の古い絆を思い出したら、私はあなたを許して、高く持ち上げようと思っております』」
「宝・・・?」
「我が主君Dagoth様は貴方をRed Mountainにお誘いなさっております。かつて交わした友情と名誉のために。あの方は貴方がもう一度友誼を結びなおそうとすれば、話し合って力をお与えになるおつもりです。私は貴方のLoad Dagothではありませんが、私の言葉は彼の言葉・・・貴方は剣を振り下ろす覚悟がありますか? そうでなければ武器をしまい、私と友誼を結びませんか?」
「冗談言うなや。本来の姿を歪めてまで力が欲しいかよ。鏡を見たことあるのか?」
「ならば仕方がありませんね!」


 言うなりDagoth Garesが放った魔法は強烈な代物だったが、耐え切って剣を振り下ろす。袈裟懸けに肩から腹まで切り裂く手ごたえがあった。


 倒れたDagoth Gares。しかし、息を引き取る間際、Dagoth Garesは笑って俺に何か呪いのようなを与えた。

「全ては我が主のお望みのままに。貴方はあの方の肉を纏い、あの方の肉となりに必ずあの方の元に行く・・・」
「は?」

 何かようわからんのだが、奥の部屋を物色すると、それなりにいい宝物があった。Fists of Randagulfとか。しかし、呪われた気がするのだが。うーん。何だか熱っぽいし、頭がふらふらするな。俺はArgonianなんで病気とかかかった覚えが無いのだが、病気でもうつされたんだろうか?
 まーいいや、それよりRed Mountainの宝って、『Progress of Truth』が言っていた、「Dwemerの冒涜的な秘密」なんだろうか。うーん。あ、そういやカンペを持ってたんだっけ・・・と、死体から紙片を抜き取って読んでみた。

Message from Dagoth Ur

 Lord Nerevar Indoril, Hai Resdaynia
 私の主であり、友であり朋友であるあなたへ。

 Load Nerever、平和な時も騒乱の時も、我々は友であり兄弟でありました。どんなHousemanよりも、ずっと良く、忠実に仕えてきました。あなたの命令を沢山こなしてきました。多くのものを失いましたが、とても名誉なことに思ったものです。

 Red Mountainの地下で、あなたは私を宝の守りに呼び出しました。私が宝を守っていた時、あなたのことが心に浮かんだものです。あなたの手で打ち倒されたことがどんなにひどい裏切りとして私の心に打撃を与えたことか。

 しかし、我々の古い絆を思い出したら、私はあなたを許して、高く持ち上げようと思っております。Sixth Houseは滅んでいません。眠っているだけです。今や、我々は長い夢から目覚めました。外つ国の統治者と偽神からMorrowindを解放するために出て行くつもりです。 偽神となった友人と、強欲な泥棒どもをこの国から払いのけた時、Velothの子供たちは荒廃した不毛の地に新たに多くの楽園を作ることでしょう。

 旧友よ、Red Mountainに来て下さい。かつて我々が背負いあった交友と名誉のために。あなたが新たに友情を誓いさえすれば、私はあなたに助言と力を与えましょう。Red Mountainへ至る道は長く険しい。しかし、価値を見出せば、あなたはそこで知恵と、確固たる友人と、正しく世界を支配するための全ての力をそこで見つけるでしょう。

 変わらずにあなたに敬意を込めて尽くす下僕にして忠実なる友人、Load Voryn Dagoth、Dagoth Ur。

 ・・・本当に俺のことをNerevarineと思ってるのか。まあ、しかし・・・Caiusに考えてもらうか。何だか本当に気分が悪いし。ふらつく体でRecallの呪文を唱えてBalmoraに帰ると、俺を待っていたのは悲鳴だった。

「アンタCorprus病にかかってるよ、よそ者! 死ぬんだ、治せないんだぞ!? 離れろ! アッチに行け!」
「ちょっと、私から離れて! Corprus病にかかってるじゃない! Corprusは治せないのよ!? はやく何処かに行って!!」


 なんじゃこりゃあああああああ!!!!


 水面に姿を映すと、確かに顔つきが変わっている。え? 変わってない? ごめん、それMODのせいだから・・・って、違う! ちょ、砦の人も、司祭が手を尽くしても治せないって言ってたのに! 急いで病気のポーションを飲んでみたが、効果なし。どうしよう、と思ったが、CaiusがCorprusのことを調べていると言ったのを思い出した。


「Caius! Dagoth Garesは倒してきたが、こんなんになっちまったぞ!」

 と、怒り爆発な俺を見て、流石にCaiusもSkoomaをぷかぷかするのは止めて厳しい目つきになった。

「Dagoth Garesの死に伴い、Sixth Houseの神殿は最早脅威ではなくなった。君の多大な働きに、Travelarランクに昇進させよう。君のCorprus病がとても心配だ。だが、それについていい知らせがある。治療が可能かどうか、ツテと話したのだがね。任務の間に感染するかもしれなかったからな。Fast Eddieから聞いたのだが、かなり昔から生きているTelvanniの魔術師で、病気の犠牲者を収容しているCorprusarisumを運営している魔術師、Divayth Fyrに行けば治る見込みがあるかもしれないとのことだ。ほら、Dwemerの工芸品と1000Drakeがあるからこれを持ってTel Fyrに行きなさい。Divayth FyrはDwemerの工芸品が好きだというからな。この贈り物が彼の機嫌を良くすることだろう。金は物入りのものがあるだろうし、そのために使いなさい。それから、Levitationの薬を何本か用意した。Telvanniの塔でこれらのものが君に必要だという話だからな。魔術師は階段を使わないのだ。早く行って、Corprusの病を治してきなさい。そしたら急いで戻ってくるように。どうやって失われた予言を手に入れてNibani Maesaに見せるか、アイデアが出掛かっているところだからな」
「Fast Eddieって誰?」
「Edd Themanのことだ。『Fast Eddie』、『Eddie the Rat』という名でも知られている。稀に見る人物で、以前はTelvanniの魔術師で、帝国に行っていた頃はメイジギルドに所属していたこともある。経歴に富んでいるが、信用はならない人物だね。しかし、彼はGreat House Telvanniの内部事情を知る者として、とても稀有な人物なのだ。彼はここBalmoraに小さな家を構えているね」
「ふーん・・・」


 Caiusはどんなコネを持っているのやら、といつもなら興味を抱くところだが、何せ致命的な病にかかっているのでそういう余裕はない。兜を被って顔を隠し、Tel Fyrに早く行くことにした。前にも行ったことがあるんだが、まさか自分が行くハメになるなんてな・・・ああ、何てこった。

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(2008.7.12)