究極の選択


 俺の状況はやや汚い表現で言えばこうだ。「う●こ味のカレーを食べたいか、カレー味のう●こを食べたいか」
 本当に泣きたくなるような状況で、途方にくれているのだがとりあえず先に進まないと殺されるのは確定だ。うん・・・まだ色んなもの見て回りたいから、死にたくない。重い足を引きずってMoonmoth砦に行く。こうなったら貰えるもん貰っとくしかない。不要なものだったら売ればいいのだ。


 責任者の人に聞くと、「へい、ちょっと仕事引き受けないかい?」と言われた。何だろうと思っていると、勝手にべらべらと喋り始めた。

「色々なツテから、君の置かれた状況を少しばかり知ることになった。君にちょっとした話をしよう。話し終わったら質問してくれたまえ。それから、まあ何をするべきか決めることだね。それをするかもしれないし、しないかもしれない。君の事情次第だね。あと、陛下が君に授けたがってるんじゃないかとおもわれる素敵なプレゼントのことも話そうか。何処にあるんだかわからないけど、再び会った時には見つけてるかもね。勿論、事を成した後でね」

 俺にひどい運命を押し付けた皇帝か。俺は心の中で毒づいた。しかも、この男、仕事が終わったら見つけるかもしれないと言いやがった。とっくに見つけてるんだろ、というか、預かってるんだろ。一筋縄ではいかない男だな。俺は皇帝のことを聞いて、かなり機嫌が悪くなっており、喋りたくなかったので適当に頷いた。

「昔々、あるところに、悪い組織から、刑罰や罰金を帳消しにすることを引き換えに、金を受け取っている悪い判事がいました。みんな、その人のしていることを知っていました。しかし、誰もそれを証明することが出来ません。なぜなら、証明しようとしても、悪い判事は要人をお友達にしていて、その要人の前では証拠など力がないのです。それと同時に、法律をきちんと守らせようとする善良な役人がいました。その人は法律はみんなを幸せに、安全にするものだと思っていたのですから。悪い判事は役人が捕まえた悪い人たちをすぐ釈放してしまうので、折角法律を守らせても、と、それはそれは悩んでいました。長い時間の果てに、善い役人は溜息を吐いて言いました。『どうしよう? 悪い判事は要人を友達にしているし、彼に近づくことなど出来ない』しかしその時、善い役人は言いました。『あ、ちょっと待てよ。悪い判事に、悪い奴等はお金を貢いでいるんだったな? 悪い奴等は要人を友達にはしていない。それに、奴等が周囲にいなくなれば、悪い判事はこれ以上お金を受け取れなくなる』そして良いことに、良い役人は悪い判事にお金を貢いでいる悪い奴等は犯罪者ではないかと思った。そんなわけでこうすれば丸く収まると思った。良い役人は悪い判事に貢いでいる悪い奴等はいなくなるべきだ。永遠に。そして善い役人は、悪い奴等をちょっと殺して消し去るために、ちょっと特別にお願いをすることになった。素敵な話だろう? でもお話は終わっていない。願いを終わらせなくてはいけないし、誰も殺されていない。まだ話は終わっていないよ」
「悪い奴等について・・・」
「ああ、悪い奴等というのはCamonna Tongのことさ。みんな知ってるんじゃないかな。彼らは犯罪組織だ。不幸にも、誰がCamonna Tongか特定はしていない。誰も私に密告してくれない。役人だしね。それに、役人への告げ口は暗黙の了解ってやつに逆らうのさ。だが、盗賊ギルドの人間はCamonna Tongが嫌いだ。君が盗賊ギルドに聞きにいけば、悪い奴等が誰で、どこにいるのか喜んで教えてくれるさ」
「殺し合いになるのか」
「私が話した悪い奴等は、Camonna Tongのメンバーのうち5人だ。私が知っているのは、スカウト、質屋、学者、盗賊、鍛冶屋で、Balmoraにいるということだ。悲しいことに、名前までは知らない。でも君は彼らの名前を知ることが出来るだろうし、居所もわかるはずさ。そして私の話をハッピーエンドで終わらせておくれ。ちょっとした願いと引き換えに、ちょっと血が飛ぶけどね」


 気は進まないが、Bladesも帝国軍の人間だし、帝国軍の頼みを断って険悪な関係になるというのもまずいので、Camonna Tongのメンバーを暗殺することにした。早速、盗賊ギルドの溜まり場「South Wall」で聞き込みを行う。話をすると、ここの元締めのKhajiitは笑って言った。

「あなたが探してるその悪い奴等ってBalmoraにいるCamonna Tongのことね。Council Clubって居酒屋でたむろってるわ。Balmoraに住んでるCamonna Tongたちの行きつけの店なの。スカウトはVadusa Sathryon、Marasa Arenは質屋。盗賊はMadrale Thirith、Sovor Trandelは学者、Thanelen Velasは鍛冶屋じゃないかしら」

 盗賊ギルドは基本的に非暴力なんで、表向きには殴りこみに行きにくいから俺は渡りに船なんだろう。快く情報を口にしてくれた。じゃー、早速いくか。


 入り口に一人。


 奥に一人。


 広間で三人、と。挑発し、喧嘩に持ち込ませて殺害する。

 隊長に報告すると、そいつは指環と本を差し出した。

「全てはなんとかなったようだね。法に抵触するようなこともなく、目立った騒ぎにならなかった。私が望んでいたよりもいいね。それに、陛下からのプレゼントも見つけたし万々歳だ。ほら、ただの指環に見えるけど、とても素敵な指環だよ。手紙くらいついてるんじゃないかと思ったんだけどねえ。でも、陛下は君が受け取ったことはお分かりになると思う。あの方もお喜びになるだろうね。そして、これは私からだ。良い判断をしたからねえ、私の本棚からの特別な一冊を、賞賛を込めて贈ろう」

 貰ったのはRing of Surrondingsと、Biography of the Wolf Queen。本は持ち歩くわけにはいかんしなあ。指環も、Ring of Khajiitに比べればイマイチな感じがする。溜息を吐き、指環は適当に鞄の中にでも詰め込んで、本はギルドに寄付しよう。

 砦を出ると、Balmoraに帰って荷物整理を行い、メイジギルドの転送サービスでAld'ruhnに飛んだ後は、Silt StriderでKhuulに向かう。そしてこっからは徒歩。地図的に、山を越えるよりも水上からUrshilakuに向かったほうが早いし、魔法をこまめに唱え続けられる限りはDreughにも襲われないし。そんなこんなで水面をとことこ歩き、時折岸辺で休憩し、Daedraの祠近くの海岸に上陸した。近くに洞窟があったもんだから一眠りしていこうかなあなんて探検していくと、変わったものを見た。


 死霊術師みたいな術者を斬って、洞窟を下っていくと、すぐ傍にあるDaedraの神殿の基底部に出たのだ。そこを進んでいくと、厳重な扉があって、Hirake Gomaでその扉を開けて中にいたGolden Saintを倒したのだが、どうもここ、誰か名のある人の墓らしい。置いてある装備もレアなDaedraの盾とかだったし。しかも、部屋を見上げてみるとEleidon's Wardっていう白い盾が飾られていたのだ。でも、気分が最悪まで落ち込んでいた俺は、盾を取って眺めてみても、そんなに嬉しいとは思わなかった。
 そこで一晩野宿して、神殿から東に行くと、すぐにキャンプが見つかった。


 思わず岩陰に隠れて様子を見たが、別段、変わったことはなさそう。俺は外国人だし一応武装してるんで気をつけたいところだが、Ashlanderは礼儀正しいっぽいので、殴りこみに来たわけでもないのにいきなり斬った張ったになることはなかろう。誰かと喋りたい気分では無いのだが、ここまで来た以上仕方あるまい。Argonianは表情が非常に読み取りづらいから俺が嬉しかろうが悲しかろうが表情に出ないしなんとかなるだろ。

 意を決して歩き始めると、目と鼻の先なんで、すぐに視線を感じた。俺を見た村人の人は何だ何だな顔で俺を見ていた。とりあえず武器を向ける気は無いみたいだし、話を聞く気もあるみたいだ。贈り物を聞くのはルール違反ではないので、早速外にいた人に聞いてみると、Trama Rootが欲しい、卵が欲しいと言ったので、(Trama Rootは実はその辺に生えているので、行きがけに抜いてきた)早速贈ってみると、にこやかな顔になってくれた。彼らの話では、Sul-MatuulやNibani Maesaと話をするのは一筋縄ではいかないらしい。とりあえず、偉い人のテントはひとまず避けてそれ以外のテントに入ると、テントにいる人は、贈り物はお金がいいと言ってきたので、早速賄賂してみたり。
 そろそろいいかなー、何て思っていると、向うのほうから、何をしに来たのか尋ねられた。そりゃそうだ。Nerevarineの予言が聞きたいというと、ちょっと眉をひそめるような顔になった。

「よそ者がUrshilakuのNerevarineの予言をどうして聞きに?」
「いや、どうも俺がNerevarineの予言に適合してると他の人が言うもんだから。ここが一番Nerevarineの予言を信じているようなので、見てもらいに」
「いやあ、そんなこと信じられないねえ。あんたが自分のことをNerevarineと思って、Sul-MatuulとNibani Maesaと話したいだなんて。あんたはNerevarineに見えないし。でも、嘘を言っているようには見えないし、狂ってもいなさそうだし。いやはや、じゃあ、テントにいるZabamundに相談しに行くことを勧めるよ。その人はGulakhanでね、Sul-Matuulを守っていて、何が正しいか決定権を持つ。Zabamundが許可してくれれば、Ashkhanのテントに入ってSul-Matuulと話すことが出来ると思う」
「成る程、ありがとうございます」

 Nerevarineに見えない? そりゃそうだろ、Nerevarって大昔のMerの英雄で、俺はArgonianなんだから・・・。否定してくれれば話が早いんだけどなー。でも、否定されてもそれはそれで秘密知ったということでBladesに殺されそうだけど・・・。


 萎える気力を振り絞って、贈り物(お金)を渡して機嫌が良くなったところで、早速予言のことを聞いてみた。

「Nerevarineの予言はよそ者には教えられない。Sul-MatuulやNibani Maesaがこれらのことを打ち明けるとでも? お前は何物だ? 何か納得させられる根拠でもあるのか?」
「うーん・・・実はこれこれこういうわけで・・・」

 と、Sixth HouseやNerevarineのことでこれまで見知ったことを打ち明けて、(Bladesとか帝国の陰謀は伏せておいた)Sul-Matuulと話がしたいのだと言うと、Zabamundさんは難しい顔になった。

「ふむ。これは一筋縄ではいかなさそうだな。思ってたより色んなことを知っているようだ。初耳なこともある。Sul-Matuulと話すべきだと思う。多分、私に当たるんじゃないかとはおもうけれどね。まあなんとかするさ。Ashkhanのテントに行ってSul-Matuulと話し、質問をぶつけてみたまえ、私が許可したと伝えてくればいいから」
「ありがとうございます」

 これでテントに入っても良くなったので、早速お邪魔してみる。


 うわ、防御魔法唱えてる。俺が変なことをしないか警戒してるんだな。だがまあ、至極真っ当な反応か。Zabamundから許可を貰ったことを告げると、眉間の間の皺を一筋減らしてくれた。

「そうか、私を守っているZabamundがNerevarineの予言について話し合うようにと送りやったのか。ならば宜しい。Yui-Liよ、話したまえ。非常に惹きつけられる」
「えーと・・・突然なんですが、俺、Nerevarineの予言の条件を満たしてるって人に言われたんで、詳しいことが知りたくなったんです。これまでも色々調べたんですが、Nerevarineを一番信じているのがここだと伺ったんで。ここで見てもらえば、そうなのかそうでないのかわかるかなーなんて思いまして」
「Nerevarineに予言に適合していると考えているのか。それで、Nerevarineなのかテストして欲しいと思っているのだな。よそ者がNerevarine教団に入ることは許されていない。だが、もし君がAshlanderの部族のClanfriendならば、入ることもできよう。入門の儀式を行おうか。この儀式に合格すれば、AshlanderのClanfriendとして受け入れよう。その時、我らのWise womanで、予言と神秘に造詣が深く、予言と君とを照合してくれるNibani Maesaと引き合わせるつもりだ」
「そうですか。入門の儀式というのは何ですか?」
「部族に受け入れられるためには、墓所に行く必要がある。墓所にて、霊と祖先が君の価値を試す。Urshilaku Burial Cavensに行き、Sul-Senipul's Bonebiterを持ってきてくれ。さすればClanfriendとして君をAshlander部族に受け入れよう」
「あのー、場所を教えて欲しいんですが・・・」
「洞窟はキャンプの南南東で、小さな丘に北に面したドアがついている。我々のいる場所とRed Mountainを結ぶ道の中間だ。水辺に辿り着くまで北に行き、それから東にいって石塔がある浜が見えたら、南に曲がってドアを見つけるまで直進するといいだろう。我々の祖先の守護霊が洞窟を守っている。彼らは攻撃してくるし、君も例外ではない。彼らの手より道を切り開き、或いは避けて、弓を得て戻って君の価値を示しなさい」
「わかりましたー」


 早速言われたとおりにする。ここが石塔のある浜辺。ここから南進していくのだが、運が悪いと迷うことになる。Blightの嵐が吹くと視界が悪くなってもっと見えにくくなるので、注意が必要だ。


 中に入ると、先祖の遺体が収められている。本当に墓所なのだ。


 なお、ここの埋葬品は凄いので、Levitate必須。でもまあ、俺は本以外は欲しいものも無かったので持ち帰ることはしなかった。荷物重くなるし。


 洞窟の最深部には、おやっさんの霊がいた。すいませんSulさん、ボカスカ殴って・・・。


 この霊が弓を持っていたようだ。早速持ち帰る。


「これが私の父のBonebiter Bowだ。君は入門の儀式を終えた。私の名において、Yui-Li、君をAshlanderのClanfriendとしよう。我が父の弓はとっておき、名誉と共に手にしておくといい。君は我ら部族の友だから、Urshilakuのベッドは自由に使っていい。だが、他の部族の仲間を傷つけたり私物を持ち去ってはいけない。それで、今度は私が約束を果たす番だな。Wise womanのテントに行くがいい。Nibani Maesaが君を試し、Nerevarineの予言に適合するか否かを判断するだろう」
「ありがとうございます」

 弓か・・・弓は下手なんだが、まあ折角頂いたんだし、Morag Tongの推奨スキルでもあるし。ちなみに、どう下手なのかというと、止まっているものは何とかなるが、動いていると至近距離でも当てられないのである。俺がテントを出ようとすると、Sulさんはこんな注意もしてくれた。

「今や君はClanfriendだし、腹を割って話そう。君がNerevarineだと信じることは受け入れがたかった。君は外国人なのに、Nerevarineは全ての外国人をMorrowindから追放するのだから。いかにして外国人がIncarnateになれるのだろうか? Great Houseは我々から土地を奪い、偽神と共に我等を嘲笑う。神を信じない外国人も我々の土地と誇りを奪っていく。NerevarineはAshlanderの最後の希望なのだ。君は外国人だが、この望みを我々から奪わないで欲しい」
「・・・・・・」
「深刻なことを言ってしまったな、Yui-Li。生死に関わるようなことを。私は君に、名誉と美点を見出した。だから胸を張って、君をClanfriendとしたのだ。しかし、Nerevarineとして物を言ったり行動したりすることは気をつけて欲しい。さあ、Nibani Maesaに話を聞きに行きたまえ、君に全てを話してくれよう」
「・・・ありがとうございます」

 どうしよう。どうしよう。俺だって外国人なんだし、いい人もいるんだから出来れば追放とかそういうことはしたくない。けれども、Ashlanderの人たちは本当に困ってる。だってここ、Vivec周辺の緑の平原とは違って、緑の草木なんて生えていないんだし。
 それに、本当は、俺は帝国の傀儡で、皇帝は俺に偽神を殺させて、Ashlanderの人たちが大嫌いな外国人の入植を円滑に行いたいんだ。最後の希望どころか、止めを刺しにきたのかもしれないのに、何も知らずに優しい助言をしてくれる。俺に何か返せるものがあるんだろうか。


 迷いを抱えたままテントに入り、Sulさんから許可を得たことを話すと、Wise womanは挑発的に笑った。

「さあ、お話なさい。Nerevarineの予言に何か質問があるのですか? 試練を合格したのか知りに来たのですか? それで、自分はNerevarineだと考えているのですか?」
「ええと・・・まずは予言について教えて下さい」
「Nerevarineの予言は多くの種類があり、多くの物事を示唆しています。運命の星の下、不明な両親の元に生まれること。Moon-and-Star。Sleeperども。七つの呪い。呪いの災い。Strangerの予言。Seven Visionsの予言。失われた予言があります。色々聞きなさい。我慢強くて、賢いならば。あるいは、単刀直入に知りたいなら、このように聞きなさいな。『Nerevarineの試練に合格してる?』それでは、異国の者よ。私がWise womanです。貴方の質問をぶつけなさい。私はそれに答えましょう」
「じゃあ、生まれのことから。俺って確かに親の顔なんて知らないんですが、これってどうなんですか? まあ、予言に合ってるといえばそうらしいですが」
「貴方の言っていることが正しいなら、確かに、特定の日に、名も知れぬ両親の元に生まれ来た、ということになります。これが予言の一部に当てはまります。ただし、同じ誕生日の人は沢山いますし、親の顔を知らない人も多くいるでしょうね。興味深いのですが、これだけでは貴方はNerevarineとは見なせません」
「ですよねー」

 まあ、誕生日何ざ365種類しかないんだし、野生動物だの野盗だのいるご時世なんだから、Tamrielとは言わず、Vvardenfellに住んでる人だけでも予言に適合する人を集めたら、多分、数えるのも嫌になるくらいになるぞ。

「Moon-and-Starについてはどうですか」

「伝説では、Indoril Nerevarの家紋に月と星が描かれていたとか、Nerevarの鎧と武器にこの文様が象嵌されていたとか。或いは、生まれつき、月と星の痣が体にあったとか。または、Moon-and-Starの銘が刻まれた魔法の指輪を所持していたとか。別のものでは、月と星の元に生まれたなど。いずれにしても、月と星、というのはNerevarineの証なのでしょう。でも、あなたはこの印を持っていません。よって、あなたはNerevarineではありません」

 いきなり俺≠Nerevarineになっちまったぞ。まあ、そのほうが気楽でいいんだけれどさ。でも、家紋や武具とか、痣とかの話は聞いたことが無いから、この場合、「月と星の銘がある指環を持っていること」が正解なのかな。確か、Red Mountainの戦いでNerevarが死んだ時に紛失したとか何とかで、Nerevar以外が嵌めると、死ぬんだっけ? つまり、指環を嵌めてたら、Nerevarineであることを証明できるのだ。でも、そんな指環見たこと無いし、どっちかというと呪いの指環で有名になりそうだが、噂も聞いたことが無い。うーん。

「Sleeperって何者ですか」
「町の噂によれば、『Sleeper』と呼ばれる狂信者たちが、一般人を襲う際にDagoth Urの目覚めと、Morrowindから外国人を追放することをわめいているそうです。多分、そのことを言っているのでしょう。しかし、それはNerevarineが再臨する予言とは関係がなさそうだと。貴方こそがNerevarineだという印には必要が無い予言なのですから。恐らくはNerevarineが再臨する時期のことを言っているのでしょう。そして貴方は折り良くやってきた。これは試練に受かったということではありませんが、Nerevarineが再来するのと関連して、貴方は何かその一部に組み込まれているということなのかもしれませんね」
「ああ、そういや、街でそんな奴等に絡まれましたっけ。襲われてはいないんですが・・・で、七つの災いってなんでしょう」
「別のAshlanderの予言から聞いたものです。『The Seven Curses of the Sharmat』と呼ばれるものですが、私はそれを知らず、誰が知っているのかさえわかりません。恐らくは失われたのでしょう。察するに、Wise womanが死亡したか、忘れ去られたか、もしくは一族ごと・・・。誰かは知っているのでしょうが、隠されたままなのです。恐らくは、定住した人々が書いた数多の書物の中にあるのでしょう。Templeの反体制派司祭がその手の本を所持していると聞いたことがあります」
「成る程。で、Strangerの予言って、聞いたことがあるんですけれど」
「Nerevarineの予言の中で一番知られているものですからね、我々は『The Stranger』と呼んでいるのですが。

 大地が鳴動し、天空が漆黒に染まり、眠りし者どもが七つの災いをもたらす時、
 その只中に異邦人が降臨し、月と星の下に征く。

 何も無く、親も無く、運命の星の下に生まれん。
 邪悪はその者を追い回し、正義はその者を呪わん。
 予言者は口にすれど、全ては否定される。

 多くの試練が異邦人の運命を照らし出し、災いは打ち払われん。
 多くの試金石が異邦人を試すであろう。
 多くの者は振り落とされ、ただ一人が残る。


 このようなものです」
「俺が聞いたのと同じですね。予言の一部と合っていますし。Seven Visionsについてはどうなんでしょう」
「この予言の正式な題名は『Seven Visions of Seven Trials of the Incarnate』といいます。聞きなさい、その詩を教えて差し上げますから。

 七つの試練
 その者が手をかければ、それは為されるであろう。
 残されしものも、為されるであろう。

 第一の試練
 不確かな両親の元、特定の日にIncarnateは月と星の名の下に生を享ける。

 第二の試練
 Blightの病も、歳月もその者を害することはない。
 肉の呪いもその者の前に吹き飛ぶであろう。

 第三の試練
 Azuraの目の見守る暗き洞窟で、月と星は光を放つ。

 第四の試練
 異邦人の声がHouse同士を結びつけるであろう。
 三つの家はその者をHortatorと呼ばう。

 第五の試練
 異邦人の手がVelothiを結びつけるであろう。
 四つの部族がその者をNerevarineと呼ばう。

 第六の試練
 その者は嘆かれざる部族の血を想う。
 その者は彼らの罪を食い破って再臨せん。

 第七の試練
 その者の慈悲は呪われし偽神を解き放ち、枷を打ち砕き、狂気を止める。

 一つの運命
 その者はVelothの民の法を告げる。
 その者は彼らの土地と名を讃えよう。

 この予言は何を意味しているのか? Nerevarineが再来し、その者の運命を果たす前に耐えなければならない試練を告げているのでしょう。幾つかの箇所は理解できますが、幾つかの箇所は理解できません。なるべく質問には答えられるようにはしましょう。ただ、解る範囲以外のことは何とも言えません」
「お願いします」
「第一の試練についてですが、これは貴方の生まれ星――特定の日に、不明な親の元に生まれ来るというもので、The Strangerの予言ともぴったり一致します。第二の試練は示唆するものがよくわかりません。Nerevarineとして、Nerevarの魂を抱いて再臨する者がBlightや老いに害されないということなのでしょうか? 分かりません。しかし、肉の呪いはBlightやCorprusの病のことなのでしょう。恐ろしい病であり、犠牲者の肉体を歪めるものですから。Nerevarineはこの病を治すことが出来るのかもしれません。それがNerevarineとしての証なのでしょうね」
「うーん、俺ってArgonianだから病気にはかかりにくいですけれど、完全に病気にならないわけじゃないですしねえ。歳だって取るんですから。次は何でしょう」
「伝説では、Incarnateの洞窟と呼ばれるAzuraの神殿があるそうです。この洞窟に関する秘密を教えることは許されていません。聞かないで下さい」
「Moon-and-Starと関係ありそうですよね。そういう指環のことなら聞いてるんで、もしかしたらそこにあるのかも。それで、第四よ第五は」
「『Hotator』とは、DunmerのGreat Houseが通常の諍いを脇に追いやって共通の敵に対して結束する時に選ばれる戦争の指導者です。帝国が我々の土地を侵略して以来、誰も指名されていません。第五の試練についてですが、AshlanderはVelothiと呼ばれることがあります。昔々にこの土地に我等を導いた予言者Velothの名に由来します。Vvardenfellには四つの部族があり、それぞれUrshilaku、Ahemmusa、Zainab、Erabenimsunといいます。長いこと散り散りになってしまったこれら四つの部族がお互いに結束するなど、夢のまた夢でしょう。しかし、Nerevarineはこの奇跡を成し遂げなければならないのです。第六の試練はよくわかりません。『嘆かれざる部族』は、Red Mountainの戦いの後に掃討されたSixth House、House Dagothを指すのかもしれません。ですが、Dwemer、もしくは西側的に言うならDwarfたちのことも示しているのかもしれません。『罪を食い破る』とは、他者の贖罪をするという意味なのでしょう。第七の試練ですが、Incarnateは失敗できません。他の者が為そうとしても成されますが、Nerevarが手をつけたとき、Incarnateの試練は終わるのです」
「それで、Nerevarineの運命とは」
「Velothの民はDunmer、AshlanderやGreat Houseを含む全てのDunmerです。Velothiだった頃の最後の時代は、Red Mountainの戦いでNerevarの下に結束していました。今なら、Nerevarが再臨して全てのDunmerを結びつける、といった感じでしょう。その者はMorrowindをDunmerのために復興させ、Verothiの民のかつての栄光を取り戻すのです」
「そうなんですか・・・それで、俺はNerevarineのテストに受かってますか」
「貴方はNerevarineではありません」
「ですよねえ」

 ちょっとホッとしたのだが、次のNibaniさんの言葉にギクッとした。

「貴方はNerevarineになれるかもしれないのです。困難で、厳しい道程です。しかし、幾つかのピースは見つけました。もっと見つけることが出来るかもしれません。Nerevarineとして選ばれし者なのか? それはTempleの反体制派司祭の間に伝わる、失われし予言を見つけたときに解るでしょう。失われた予言を見つけ、私の元に持ってきてください。そうすれば手かがりを与えることが出来ます。それから、The StrangerとThe Seven Visionの写しを持っていきなさい。さあ、知っていること全てを話しました。行きなさい。私が話したことを考えて、すべきことをするのです」
「あ、その前に、失われた予言についてちょっと」
「それらは散逸したNerevarineの予言です。The Seven Cursesや、その他色々。幾つかは忘れられ、または隠され、故意に失われたものです。Wise womanはVelothiの民の記憶ですが、不完全な記憶であり、私たちも定命の者であることは免れず、死とともに知識は失われます。しかし、Templeの反体制派司祭がNerevarine研究をしていると耳にしたことがあり、本に纏めているそうです。このような記録された言葉は決して死ぬことはありません。彼らの下に行き、これらの本を譲ってくれるように頼み込んで、見つけ出したものを持ってきて欲しいのです」
「わかりました。いずれ、反体制派司祭と接触するだろうとは思ってましたから」

 Nibaniさんの言葉を借りれば、完全にNerevarineだと証明できるものが無いので、断定することは出来ないが、俺はNerevarine候補で、予言の試練を実行することで認められる、ということか。正直に言って、やりたくないのだが・・・でも、やらないと殺されそうだし、死にたくないしなあ・・・。

「他のキャンプのことを聞いてもいいですか」
「いいですよ。GrazelandsのAhemmusaは穏やかで平和を愛する部族です。AhemmusaのWise womanはSinnammu Mirpalといい、Ashkhanも兼ねています。Molag MarのErabenimsunは身内には好意的で、武力至上主義ですね。彼らのAshkhanのUlath-Palは冷酷で野心家であり、彼のGulakhanたちもまた彼と同じ心をしているとか。Wise womanのManiraiは慎重で道理をわきまえています。彼女の助言を仰ぐことです。貴方の話術を戦好きの王どもに振舞うのは時間の無駄ですよ。ZainabのAshlanderたちは陰険でずる賢い者たちです。キャンプはGrazelandsの内陸部ですね」
「なるほど・・・」

 話を日記にメモすると、Nibaniさんは予言のメモ書きをくれた。ちょっと疲れたし、考えを纏める必要があるし、何よりも、俺も気分は上々どころか下降線辿っているんで、すぐ検証する気になれず、後で見ることにした。Urshilakuの人はいい人たちなんだけど、騙すようでちょっと気分が悪いなあ。俺がNerevarineじゃないって試練で証明できればいいんだがなあ。そうしたら「なーんだ」で済むだろうし。まあ、命はヤバイが・・・暗殺の腕をもっと磨こうかな。反体制派司祭に接触しなきゃいけないからTempleにコネ作っておくのもいいかもしれないし。兎に角、街に帰るかな。

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(2008.7.4)