Uriel Septim VIIの陰謀


 そうそう。服を新調してみた。これから冬になるので、首周りを覆うような感じの服が欲しいのである。前のローブは冒険しているうちにボロボロになってきてしまったし。
 早速おにゅーの服でCalderaまで出かけてみることにした。ここは帝国系の街らしく、家の作りもどことなく大陸風の趣がある。


 そんな感じでのんびり観光してたら、一人のNordの女性に声をかけられた。

「失礼します。助けていただけませんか? 悪い盗賊に追いはぎに遭ったの!」

 俺を冒険者と見込んで声をかけたのだろう。先を促すと、Aeta Wave-Breakerと名乗る女性は興奮しながら続けた。

「ほんの何時間か前のことだったの、盗まれたのはね。Dro'shirrってKhajiitに率いられた一団だったわ。私の手持ちの宝石を全て盗んでいったのだけれど、一番大事にしている二つの家宝まで盗んでいった。私の家が長い間大事にしていたのに。返してくれるなら、それなりの重さの金貨を払いましょう」

「乗った。宝石を取り戻してくる」
「いいの? 凄いわ。Calderaの東のどこかから出没するみたい。けれど、官憲で奴等を見つけた人は居ないって話。驚くべきことじゃないわね」


「聞いたことがある。噂に寄れば街の近辺に出没する盗賊団はどこかに立て篭もってるそうだ。街の東、丘の反対側の洞窟に隠れているらしいね。とっちめてやりたいものだ」

 おまわりさんの話に寄ればこうだ。実際は丘というより山だけどな・・・。よって、徒歩の山越えはちょっと無理。近道したいならLevitate必須。


 ここがShushishi。奴等が立て篭もっている洞窟だ。


 見張りはOrc。エンチャントされた斧で殴りかかってきたが、半裸なので俺の剣を浴びてすぐに倒れた。


 盗賊団は色々な種族から混成されているようだ。とはいえ、互いが離れた場所にいるので洞窟の防衛力は薄い。篭城戦なら防衛側に対して何倍かの兵がいるって聞いたんだが・・・組織されてないと全くダメだな。初戦以外は、忍び寄って左程時間をかけず倒すことが出来た。


 途中の牢屋で奴隷を見つけた。鍵で枷を外して、お金を与えて逃がす。盗賊団の頭はKhajiitの癖に酷いことをしやがる。


 追いはぎどもをサクッと殺して、最深部にいたDro'Zhirrとお目見えする。彼はいきなり襲ってくる気は無いようで、俺の話に答えた。

「家宝? ハッ! Dro'Zhirrはいい家宝を見つけたさ。ポケットの中に落ちたがな! 実際、Dro'Zhirrじゃ今日も早くから新しい一片を見つけたのさ。Nordの女から取ったがな。赤ん坊のように泣いたさ。『オー、私の大切な宝石が!』ってな。あの女と会ったのか? それで何をしたいって? Dro'Zhirrはこれを金にするさ。馬鹿げた感傷なんか糞食らえさ。お前に言うことはこれ以上何も無いね。何か得することを言わない限りは」

 決めた。成敗しよう。
 ちなみに、奥にはArgonianの奴隷がいた。もちろん救出する。


 アミュレットと指環を持っていくと、女性はとても喜んだ。

「見つけてくれたのね! お返ししなきゃ。はい、これが約束したものです。ごろつきどもが襲ってきた時、何とか隠し通すことが出来ましたし、喜んで貴方に譲ります。重ね重ね、感謝します!」

 300ゴールドは決して安い金額ではない。それだけ大事な物だったと言うことなのだろう。ま、いい事をすると気分がいいわな。


 そんなこんなやってるうちに、かなり日にちが過ぎていたので、そろそろ頃合かなーなんてCaiusを訪ねてみることにした。相変わらず半裸だ。なんていうか・・・寒くないんだろうか。


 俺の顔を見て、Caiusは少しの間何か考えている様子だったが、俺が疑問に思う前に口を開いた。

「我々にはAshlanderの情報提供者が必要だ」
「!」

 来たか。俺が集めて回った情報はいずれもAshlanderや反体制派司祭が詳しい情報を握っているものだった。今までは何らかの形で彼らと接点を持った外部の人間からしか話を聞いていない。つまりは「孫引き」状態だ。こういうのって、情報の正確性に欠けるのであまりよろしくない。いずれAshlanderや反体制派司祭とは接触するつもりなんだろうとは思っていたが・・・。

「Ald'ruhnにいるHassour Zainsubaniという男のことを聞いた。元Ashlanderで財を成した商人だ。Ashlanderは、物を貰うこと、プレゼントを受け取ることを好むらしい。100Drakeとっておけ。Zainsubaniの好むものを探し出し、贈れ。贈り物を渡したら、AshlanderやNerevarine教団のことを話してくれるか様子を見るがいい。そして私の所に帰還して報告するように。私はAshlanderのことは詳しくない。多くの物はAshlanderは残忍な野蛮人だと口にする。しかし、大衆は無知だ。Ashlanderは定住したDunmerの同胞を西側の者と同じくらい嫌っているのだよ。AshlanderたちはAshlandで生き抜くために強くならねばならなかった。どうやったら志望者が部族のメンバーになれるのか分からないのだ」

 どうやったら部族のメンバーになれるのか分からない? まさか、誰かをAshlander内部に潜入させる気・・・って、Caiusは蜘蛛のように情報網を張ってその中心に居座り、あれこれ指示を飛ばすのが仕事だから、多分、恐らく、きっと・・・俺なんだろうな・・・。なんてこった。まあ、HuleeyaみたいなAshlanderに接触していると思われるArgonianだっているくらいだし、なんとかなるのかもなー。
 にしても、うーん、贈り物か。難しいんだよな、個人の好みに合ったものを選ぶのって・・・一度Zainsubani本人に聞いてみるのも手か。


 Ald'ruhnへは、メイジギルドの転送サービスが便利。今日は青空が見える。いいことだ。


 Ald Skar InnでのんびりしていたのがHassour Zainsubani氏。この宿屋は盗賊ギルドの溜まり場になっている宿屋より格上で、そこそこのランクらしい。しかし、隙の無い装備だな。心なしか目つきも海千山千って感じがする。早速話しかけるとするか。早速自己紹介から進めると、商人らしいにこやかな態度で俺に語りかけた。

「Hassour Zainsubaniと申します、Yui-Liさん。いいことがあるといいですね。不躾なことになったらすみませんが、何かお話がございましたら話してください。引退した身でありますし、のんびり考え事でもしていたいのですけれど。商いからは一線を退きました。よく旅をしましたし、読書も好きです。けれど、Ashlanderに生まれてその伝統に浴したことは誇りに思っております」

 ふむ、丁寧な言葉遣いだが、基本的に一人にして欲しいみたいだし、これだけは譲らない! ってものがあることを感じさせる。Caiusの知り合いじゃないから、言葉で隠していてもそれほど友好的って感じじゃないし、機嫌を害さないうちに上手いこと言って用件を切り出すとするか。

「実は、自分はメイジギルドに在籍している者ですが、この地方のAshlanderの習慣や伝統、口承に興味を持ちまして、研究したいと思っております。今までは本を読んだり、実際に会った人から知識を教授して頂きましたが、やはりそれでは限界がありますし、又聞きみたいなものですので正確性にも欠けます。そこで、この度は実際に自分でAshlanderの方々と直接お話したいと考えています。ただ、Zainsubaniさんには申し訳ないのですが、Ashlanderの方々は外部の者を快く思っていないことは周知の通りかと。そこで、Ashlanderの伝統について教えていただこうかと、Balmoraから参りました」
「分かりました。Ashlanderについて私から学びたいのですね。何を知りたいのでしょうか?」

 うーん、本当はNerevarine教団のこととかTribunalのこととか聞きたいんだが、そういうのって身内だけのプライベートな話なので、いきなり切り出しても、土足で心の中にはいるような不快を与えるだろう。ここは、Caiusが言ってた贈り物について尋ねてみるのがいいかな。まあ、Ashlanderに限らないと思うが、プレゼントされて不快ってものもそうそう無いだろうし。

「Ashlanderの方々には贈答の習慣があるとお聞きしたのですが、これは一体どのようなものなんでしょう」
「面白い質問だね。贈り物とは、見知らぬ者同士の間で好意を示すものだし、友人同士だったら愛情があることを示すものですよね。見知らぬ者同士では、考え抜かれた贈り物というのは、人が欲しかったり必要としたりしているものについて気をつけていたり、気を配っていたり、その人のことをよく見ているというサインです。このような習慣は、行商人や旅人にとっては非常に頼もしいものになります。友人同士では、それは個人的なことであり、受け手に対して物を贈ることで、多大な危険を背負ってまで濃やかに気を配っているか、その程度具合をテストしているとも言えますね」
「要するに、贈答は好意の証、ということですか?」
「Ashlanderたちは招かれてもいないのにテントに入ろうとする者を詰問することでしょう。習慣は部族によって異なりますが、要求通りにすれば、許されます。特に、部族の頭であるAshkhan、部族の予言者であり相談役のWise Womanには気を払ってください。ある者は歓迎され、ある者は追い出されます。振る舞いには気をつけて、要求を呑むように。もし感情を害することがあれば、攻撃してきます」
「つまり、考え抜かれた贈り物、というのは、敵意がないことを示すと同時に部族に招かれるチケットみたいなものなんですね」
「ええ。贈り物というものは受け手にとって、貴方がその人をよく見ているということを示します。例えば、私は詩が大好きです。赤の他人はこのことを全く推し量ることが出来ないでしょう。しかし、その他人から詩の本を贈られたなら、贈り手は私に敬意を示しているということになりますし、私を喜ばせるために特別に気を使ったということも示してくれます。ところで、貴方の質問にお答えしましたが、私のことについてはまたの機会にでもしましょうか。それともまだ他に何か?」
「いえ、今日のところはありがとうございました。貴重なお時間を割いていただきありがとうございます。まだ色々知りたいことはありますが、あまり長くお時間を頂いてもご迷惑でしょうし、また明日伺います」

 いいことを聞いた。この街は本屋があるし、街自体もRedoranの本拠地だけあってデカイので、詩を収録した本の一冊や二冊あることだろう。早速本屋に飛び込んだ。


 うーん・・・でもそういや俺は社会とか神話関係の本は読んでても詩とかの文学関係は門外漢だったわけで・・・どうしたものかと本棚を前にして考えていたら、店主のおやじさんが親切に詩集のことを教えてくれた。Zainsubaniさんに本を贈りたいと相談したら、その人は愛書家なんだよ、と教えてくれて、『Words of the Wind』、『Ashland Hyms』、『The Five Far Stars』がいいよーなんてアドバイスを頂いた。ZainsubaniさんってAshlanderだし、それっぽい感じのタイトルの本がいいかなーなんて思って、『Ashland Hyms』を購入することにした。恋の歌っぽいね。

 翌日、俺は再度Zainsubaniさんを訪ねて、本を差し出して、Ashlanderのことについてもっと知りたいと伺うと、とても上機嫌になってくれた。

「これを私にプレゼントしてくれると? 凄く嬉しいですよ。『Ashlander Hyms』の写しですね? 一途な心、一途な有様が綴られています。貴方からの贈り物を快く受け取りましょう。私の属していた人たちは文字を好むことをしなかったのですが、文字の魅力を嗤って否定するのが共通認識なんて、酷い話ですねえ。ありがとう、あなたの好意を称えましょう、Yui-Liさん。貴方の好意に対して、私も質問に答えることでお返しいたしましょう。AshlanderやNerevarine教団について何を聞きたいのですか?」

 よっしゃ! 本屋のおっちゃんありがとう! 俺は心の中でガッツポーズを決めると、まずはAshlanderのことから聞いてみることにした。

「Ashlanderのことについては言いたいことが多すぎてねえ。ほら、このメモを取っておいて下さい。AshlanderとNerevarine教団について知っておくべきことを纏めておきました。けれども一番重要なのは、キャンプを訪れた際にはAshlanderたちの間にある好意と挑戦について知っておかなければならないということです。それに、Nerevarine教団のことを聞くからには、Ashlanderと外国人についての私の視点に興味を抱いていることでしょう。Nerevarine教団を突き動かしているものは、外国人を嫌う気持ちですから」
「Nerevarine教団はどのような組織なんですか?」
「信者は、昔、邪悪なDwarfと、Red Mountainの地下に潜む凶悪なDagoth Urと彼の穢れた眷属を追放したGreat AshkhanにしてHortatorの、Nerevar Moon-and-Starを崇拝しています。教団はAshlanderの宗派の中では小さな割合を占めており、Urshilakuの人々の間でのみ信じられています。他のAshlanderの部族は教団の志を共有しておりますが、疑いや疑問の目でNerevarineの予言を見ています」

 ありゃ。意外にNerevarine教団って小さな規模の教団だったんだ。それに、AshlanderにとってNerevarineの再来が必ずしも期待されているわけではないのか。ま、流石にその辺は現実見てますよって感じだな。

「好意のことは聞いたのですが、挑戦とはどういうことですか?」
「スポーツのために挑戦されたときは、拒否することもできます。名誉のために挑戦されたときは、拒否は恥と受け取られます。名誉をかけた挑戦は言動が無礼なものだった場合や、地位を巡るものやしきたりに則った儀礼的な挑戦である場合です」
「成る程。Ashlanderと外国人ってどうなんですか?」
「大部分のAshlanderは、外国人や偽神がMorrowindから駆逐されるべきだと願っております。とはいえ、悪い外国人は平和的に彼らのテリトリーから離れて欲しいと思っています。Ashlanderは武装していない者を襲うことは恥と見なしておりますが、武装した者がAshlanderを傷つけたり、一族の法を破った時は躊躇いなく殺します。Ashlanderたちは帝国に対して戦争を仕掛けるほど馬鹿ではありません。しかし、そのような戦に勝たねばならない時は、多くのAshlanderは自ら、戦の勝利のためにその命を投げ出します」
「Ashlanderの人は名誉を大事にするのですね。そういえばNerevarineの予言は一部のみに信じられているみたいですが」
「私が聞くところによれば、予言はNerevarの生まれ変わりが戻ってきて、Ashlandsから外国人を追放しTempleの偽神を打ち倒し、真の先祖崇拝を復興させる、ということを告げるものです。全てのAshlanderの夢を体現するものですが、多かれ少なかれ、私を含めた多くのAshlanderにとっては、昔の馬鹿げた伝説だと思っていますよ」

 そりゃまー仕方のないことだよな。Nerevarの生まれ変わりってのは待てど暮らせど、全然現れないわけだから。待つのに疲れて予言が馬鹿馬鹿しいものだと思っても、誰も責められないよ。

「そういえば商人としてあちこち回ったんですね」
「ええ、今は旅をするには年を取りすぎましたし、荒野に住まう獣や苦いBlightの危険にも耐え切れなくなってきましたし。今はここに座って暖を取り、大事なCyrodilic brandyを味わっているところですが、私の冒険心に富んだ息子が、Hannat Zainsubaniというのですが、私の商いを助けて、良質なEbonyの鉱脈や、いい値段でそれを売買したりとかしています」
「へえー」
「でもねえ、父に何も言わずに長い間どこかに行っているものだから、私のことは死んでも気にしないのかと。私が死んだらこの美味しいブランデーも相続できますしね。たまにRed Mountainの西にある、昔の建物のMamaeaの地下に行っていることを話してくれましたが。旅をする際に息子に会う機会があったら、彼を叱って、老人の息子はいい加減子供の一人でもできたのか知らせをずっと待っているんだよと言って下さい」
「あはは、わかりました。それでは、良いお話をありがとうございました」
「ええ、こちらこそ」

 和やかに話は終わって、ZainsubaniさんはAshlanderについて纏めたノートを渡してくれた。早速受け取って、ギルドに持ち帰って読んでみる。まあ、話してくれた内容とほぼ同じだ。

 Zainsubani's Notes


 (以下のものは、AshlanderとNerevarineに教団についてHassour Zainsubaniが用意したものである)

 Ashlanderとは、預言者Velothの後に続いて、現在Morrowindと呼ぶところの国に入植したAldmeri民族の直系の子孫です。Ashlanderは緩やかな遊牧の生活と、素朴な祖先崇拝を保っており、入植したGreat HouseのDunmer文化の退廃的な礼拝となよなよした生活を蔑んでいます。荒野は厳しく、暮らしにくいものであり、そうした中で私どもは鍛え上げられた民になりました。しかし、私どもの素朴な生活は美しさと栄誉があり、TempleとGreat Houseの俗物は私どもを未開の野蛮人として排除する愚か者でございます。

 Ashlanderと外国人
 多くのAshlanderにとって、外国人全員と、偽神がMorrowindから追放されたらと願っております。最大に譲歩しても、Ashlanderは、外国の悪魔が自分たちをそっとしておいてくれることを願っています。Ashlanderは、武器を持たない人を攻撃することは恥と考えておりますが、武装した人間が一族の法に背いた場合は躊躇せずに殺害します。Ashlanderは、帝国と戦争をしようと思うほど馬鹿ではありません。しかし、そのような戦争に勝たなければならない場合は、多くのAshlanderは喜んで彼らの命を捧げることでしょう。

 Ashlanderの礼儀
 Ashlanderは、招かれていないのにテントに入ろうとする人を詰問するかもしれません。習慣は部族ごとに異なりますが、要請された場合に立ち去ると、許されるでしょう。特に、部族の頭であるAshkhanと、部族の予言者で相談役のWise Womanには注意を払って下さい。ある者は歓迎し、ある者は敵対的な物腰を取ることでしょう。言動に気をつけて、要請を受けた場合は去るように。そうしないと、攻撃してくるでしょう。

 Ashlanderの挑戦
 スポーツの場合に挑戦を受けた場合、拒否しても構いません。名誉をかけた挑戦を受けた場合、拒否は恥とみなされます。名誉をかけた挑戦は、侮辱的な言動を受けたと見なされた場合や、地位を巡るものやしきたりに則った儀礼的な挑戦である場合です。

 Ashlanderの宗派
 部族内の全てのAshlanderは、一族のAncestor教団で生を享けます。しかし、Nerevarine教団は違います。非常に小さな規模の教団で、予言を視る才能のある少人数のWise Womanと、教団と予言者を保護する二、三人の聖戦士で構成されています。UrshilakuのAshkhanであるSul-Matuulが教団の守護戦士であり、同じくUrshilakuのNibani Maesaが教団の神託を受ける予言者です。

 Nerevarine教団
 彼らはGreat Ashkhanであり、HortatorであるNerevar Moon-and-Starを崇拝しています。そして、大昔に、その人は凶悪であり、神を信じないDwarfを滅ぼし、Red Mountainの地下に潜むDagoth Urと彼の穢れた眷属を追放しました。教団はAshlanderの宗派の中では小さな部分を占めるのみで、それもUrshilakuの間だけですが、その支持者は誰もが影響を受けています。他のAshlanderの部族も教団の志を共有していますが、疑いや疑問の眼差しでNerevarineの予言を見ております。

 Nerevarineの予言
 予言はNerevarの生まれ変わりが帰還して、Ashlandから外国人を追放し、Templeの偽神を打ち倒し、真の祖先崇拝を復興させるということを告げています。しかし、それはあらゆるAshlanderにとっての夢ではあっても、大部分のAshlanderにとっては、馬鹿げた古代の伝説以外の何物でもないと考えています。

 UrshilakuのAshlander
 UrshilakuはVvardenfellの北西、Ashlandsの北に位置します。AshkhanのSul-Mattulは部族の頭であり、勇敢で尊敬される戦の指導者で、Nerevarine教団の守護戦士です。Nibani Maesaは、部族のWise Womanで、Nerevarine教団の深謀遠慮の相談役にして、予言者です。Urshilakuの野営地は放牧しつつ移動しておりますが、通常はSea of Ghostの近く、Maar Ganの北、北Ashlandsの北海岸沿い付近にテントを張っています。


 Caiusにノートを持って帰って報告してノートを渡すと、それを読み始め、いつになく神妙な顔になって口を開いた。

「報告に感謝する。しかし、ZainsubaniのAshlanderについてのメモは取っておきなさい。必要だからね。君を昇進させて、Urshilakuの野営地に派遣し、Sul-MatuulとNibani Maesaに話を聞きに行かせよう。しかし君を行かせる前に、これから何をさせるつもりなのか話しておいても良い頃合だと思う」
「な、何ですかそんな改まって・・・」
「皇帝陛下と彼の相談役は、君がNerevarineの予言の条件に適合する兆候があるとお考えだ。そんなわけで、陛下の恩赦を与えられて牢獄から連れ出され、私の元に送られたわけだ。そして、君はNerevarineの予言の条件をきちんと満たし、Nerevarineになれ。ほら、ここに、君が最初にやって来た時に私に差し出した暗号書を解読した写しがある。その手紙を読めば、全てが説明されていることだろう」
「え? えええ!? ま、マジですか? 俺Argonianだけど・・・」
「解読書を見れば、陛下と相談役は、君が予言の条件を満たす『兆候』があると仰っている。本当に君が予言に一致する人物なのか? 本当に予言されたNerevarineなのか? 最初、私は口の上手い詐欺師を作り出すよう支援するだけだと考えていた。今はそう考えていない。ただ、一つのことは確実だと思っている。これはただの古臭い迷信ではなく、陛下が指揮し、慎重にに取り扱うべきものだ」
「え・・・」
「それで、ZainsubaniはUrshilaku野営地のSul-MatuulとNibani MaesaがNerevarine教団の指導者だと言った。だから、君に話をさせに派遣するつもりだ。彼らに君のことを打ち明け、Nerevarineの予言に対してテストさせるよう仕向けなさい。Nerevarine教団の旗頭であるからして、君が予言を満たす者であるのか一番良い判断を下してくれるだろう。彼らと話したら、私の元に戻ってくるように。先立つもののために200Drakeある。それに、Moonmoth砦から支給品があるからそれも取っておけ」
「えええ・・・」

 えーえーしか言ってないが、それしか言葉が出てこない。CaiusがSkoomaキメすぎて頭がおかしくなったんじゃ・・・と思いたいのだが、思いたいのだが・・・そうだったらどんなに良いことか・・・。

「君が渡した小包には予言の条件と、君がそれに適合することが書かれている。『孤児である』ことと、『特定の日に、親が分からない状態で生まれた若者』であることで、予言の基準は曖昧だった。Nerevarineを我々に引き込むに都合が良かったことだろう、と思えるな。本当の話ならばな。だが、皇帝と助言者は予言は本物だと――いかなる『本物の』予言であろうとも、慎重に扱わなければなるまい、解るな、Yui-Li?」
「は・・・はあ」

 Caiusは言いたいことだけ言うと、俺の手に暗号文の解読書を押し付けた。Caiusに、何も知らず、夏の日に持ってきた文章。

decoded package

 Spymaster Caius Cosades
 帝国軍Blades所属騎士
 東部属州Vvardenfell地区 帝国軍情報部隊 隊長へ

 身分無く、特定の組織に加入していないYui-Liという者に関して、陛下の願望をお伝えする光栄に浴している者です。

 Yui-Liは、陛下の権限によって刑務所から釈放され、この書状を持たされて貴方の元へ送られました。Yui-Liは、Bladesの帝国軍のNoviceとして加入し、陛下のあるお望みに関することを外れずに貴方の権限の下で適当に使うようになさってください。

 陛下のお望みとは、以下の通りです。

 地方の迷信では、不確かな両親であり、特定の日に生まれる孤児にして追放者の若者が、Dunmerの全ての部族を結びつけ、侵略者をMorrowindから駆逐し、古代の法と習慣、DarkElfたちの国を復活させると考えています。
 この孤児にして追放者は、伝説で「Nerevarine」と呼ばれており、昔に死んだDunmerの将軍であるFirst Councilor、Lord Indoril Nerevarの生まれ変わりであると思われます。
 Yui-Liは、この地方の迷信の条件を満たして生まれました。従って、Yui-Liが、現状のまま可能な限りで、この古代の予言の条件を満たしてNerevarineになることが、陛下のお望みです。
 この予言は古代の地方の迷信に過ぎませんが、陛下は最も信頼している専門家、情報提供者、相談者とこの問題に関して協議し、そして、完全に、またはいくつかの箇所において、陛下は予言が本物で重大なものであると納得されました。あの方は真剣であり、あなたがこの問題を細心の注意を払って扱うようにと要求なさっておられます。

 この古代の迷信の概要はこの文章の終わりに記されており、更なる考証の材料は一番最初にやって来たメッセンジャーによって間に合わせることができるでしょう。勿論、貴方が地元の関係者からこの古代の迷信の詳細についてよく知っておくことが必要です。この問題が密接にYui-Liに関係しているので、このことに関する情報を集めるために彼を雇用すべきと思われます。陛下は、Nerevarineの伝説と予言をとても気にしておられますので、貴方の報告を心待ちにしていらっしゃいます。

 栄誉ある閣下の臣にして従順な僕

 皇帝専属秘書官
 Glabrio Bellienus


 Caiusの家を出て茫然自失の状態でふらふらと歩いていると、川岸に立っていることに気がついた。Caiusに俺が刑務所から連れ出された理由を聞かされた時は、ただ混乱していただけだったが、冷静になり、これから先のことを思うと、考えるのも恐ろしくなってくる。天気は晴れているが、俺の心は正反対だ。震えが止まらない。
 まさか皇帝がボランティアや親切心で俺をNerevarineにしたいわけではあるまい。Nerevarineは外国人とTribunalを追放するものだ。皇帝が俺をBladesにして帝国側に就かせているし、自国の益に反するなんてことするわけないから、俺を操ってTribunalだけを追放して、Templeの政治体制を崩壊させる旗頭にさせるつもりか・・・それも皇帝自らの手を汚さず、俺が音頭を取ったように見せかけて。MorrowindがTiberによって併合される時も、Vivecが頑張って自治と宗教の自由を獲得したくらいだからな。はっきり言ってTribunalは帝国にとって目の上のタンコブだ。最近、帝国も管区を整理して、Morrowindを締め上げてるみたいだし、神王Vivec、Almalexia、Sotha Silの三柱には死んで欲しいはずだ。
 それにしても・・・逃げるってのは・・・出来ないよな。嫌がれば、俺は秘密を知りすぎているわけだし、殺されるかもしれない。いや、「かもしれない」じゃなくて、絶対に殺される。秘書官が俺の手紙で言っていたのは、そういうことだったか。それに、Tribunalと戦うってことは、神と戦うってことだ。俺、まだ20くらいなんだが、来年の今頃も生きてられるかな・・・というか、Nerevarineを名乗らなきゃいけないってことは・・・明日の命もヤバイ。彼女の一人や二人作りたかったのにな・・・そういえばAlmalexiaってMilo司祭に聞いた話では、Nerevarの妻だったっけ・・・人生真っ暗だ・・・あーあー・・・。

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(2008.6.22)