王室の狂気(Missing Prince)


 さて、指定された町の宿に会いに行きましょう。部屋を探し、人に話しかけます。


「Yui-Liですか? シーッ。貴方と話をしているところを誰にも見られたくないのです。UnderkingがC'urhtte王子を誘拐した濡れ衣を着せられていることが私どもの耳に入りまして。判断を下す前に、The Fortress of Fhojumを探しなさい。地図に印を付けておきましょう。私が何者かですって? ただ忠実な従者とだけ呼んで下さい。さあ、誰かがいぶかしむ前に出ましょう。早く逃げるのです」

 Underkingの濡れ衣を晴らそうとわざわざ動く者・・・つまりそういうことです。Arenaでも名前だけが出てましたが。
 巷の噂によれば、ある種の古代のリッチであり、非常に強い力を持っているそうです。


 さて、つきました。


 内部は獣人や人間の敵などがいましたが、しばらく探索するとこんな紙切れが。


 遺書を拾い上げた。





 第三紀400年 Morning Star(1月)23日
 The Fortress of Fhojumにて。

 この地下室に食料や水も無く閉じ込められて二日が過ぎた。飢えか、病がちの身体か、この湿っぽい穴倉の中にいる生き物の一匹のどれが私を最初に殺すのかは分からない――間もなく死んで、骨さえも残らないであろうことを知るのみである。歳月が過ぎ、この手紙が読まれ、SentinelのPrinceであるC'urhtteの悲話が語られることを祈る。

 これを書いている時点で私は15歳。そして、私の人生の大半は脆弱な身体で苦しめられ、健やかな両親に不満を与えてきた。西Tamrielの最高の腕を持つ治癒師や薬師が、私が咳をしたり熱を出したりする度に精魂込めて尽くしてくれたものだが、何度も何度も私の命を救っても、病気がちの身体を改善することは出来なかった。振り返ってみれば、私は王や女王から真の愛情を受け取ったことなどほとんど無く、このような足手まといが王国の後継者であることに恥を感じていた。愛情を受けることが出来なくて寂しかった、とは言えない。私は、宮廷にて医者、僧侶、植物学者から絶えることなくよく尽くしてもらった。確かに、King Cameronがそうであったような戦士になれそうではなかったが、親友の一人であるStendarrの僧侶は、Sentinelの歴史上初めての学者王になるかもしれないと言ってくれた。

 私の妹Aubk-iは、両親から本当に可愛がられていた。健康で、美しく、魅力的。彼女のことを悪く言う言葉を考えるのは難しい。そこまで迫ってきた死については覚悟しているが、もう一度彼女に会いたい。六年もの間、Aubk-iと私は、Sentinelのただ一人の子供たちであった。8年前、女王はGreklithという名前の男子を産んだ。強き王という古代のRedguardの言葉にちなんで。その言葉を話す者はもうほとんどいないが、Hammerfellの学者と貴族は全員理解しているだろう。それに、Greklithは本当に強い男子だった――咳をするところさえ見たことが無い。Greklithの一年後に生まれた女王の次の子供は、更に不吉な名前を誕生に際してつけられた――Lhotun。次男という意味だ。恐らく、私は生来から内向的でなく、もっと懐疑的であったならば、これらの命名の意味を読み取っていただろう。LhotunやGreklithは我ら氏族の、よくある名前だと私は結論付けてしまった。そうであったとしても、今は悟っている。非公式なものであったとしても――継承権を失ったのだ。

 Lhotunが生まれる数ヶ月前そしてその後三年以上に渡り、私はとても深刻な熱と戦っていた。医者は匙を投げたが、どういうわけか、非常にゆっくりと、私は元気になった。最初で最後であったが、私は父であるKingの表情を読み取った。それは無関心ではなかった。嫌悪だった。

 それは二週間前のことだった。三日前の夜、散歩中に見知らぬ男たちに襲われた。私は口を塞がれ、縛られ、乱暴に袋に放り込まれている間、私の乳母は驚いた様子も無く立って見ていたのだ。奴らがどれ位の間私と一緒に乗っていたのかわからないが、遂にはここに置き去りにされた。どうにかして戒めを解くと、一人であることが分かった。彷徨っても、何処にも行くことが出来なかった。この場所はいかなる出入り口をも塞ぐ不死の化け物で一杯だったからだ。

 希望は残されていないが、恐怖も無い。ただ、少し残念に思うだけだ。歴史と科学ではなく魔術を学んでいたならば、この場所から抜け出せたかもしれない。私の家庭教師の一人がUnderkingの話をしてくれた。如何にして己が生命力を強大な身体に注ぎ込み、そうしてTamriel全土を大昔に征服したのかを。そのような強力な身体であったならば。

 だが、私は魔法を学ばなかった。私は歴史を学んでいた。よってこの手紙を残す――自身の復讐ではなく、歴史に残る文章として。


 王子に手紙を渡しに行きましょう。彼以外の人間に手紙を渡してはなりません。
 第一王子について聞きまわると、War of Betonyで死亡した父王Camaronは、書籍に傾倒していた彼のことを嫌っていたという噂が聞けます。Redguardは種族的に戦士向きですから、そういった戦士になれそうにない彼のことを排除したがったのでしょう。


「これは私が最も恐れていたことです。可哀想なC'urhtte。お約束の通り、Lysandusについて聞いたことを。これがどれほど秘密なのかは知りませんが、貴方を信じることにします。Lysandusは自分が囲っていた宮廷魔術師と恋をしていました。その貴婦人の名前はMedora Direnni。そして、我々との戦いの間、女王に見つかったというわけです。夫が居なくなっている間に、女王は宮廷からMedoraを追放したと言われています。私の姉Aubk-iは現在女王として、平和条約の保険の一部となっていますが、Myniseraは未だに夫を亡くした王母としてCastle Daggerfallに暮しています。Medoraが何処に行ったのかは分かりませんが、Isle of Balfieraに巨大な城を所有していることは知っています。ですが、彼女にはある種の呪いがかけられており、決して外に出ることが出来ないとも聞きました。それが貴方の助けになるかどうかは分かりませんが、これが私が知っていること全てです。C'urhtteの手紙のこと、重ねて感謝いたします。何が起きたのか知って、いくらか重荷が取れた気分です。感謝の印として、このShort Shirtを受け取ってください」

 ゲーム中では、この話はここで終わります。しかし、Lhotun王子は第一王子の無念を決して忘れませんでした。
 後代のシリーズに存在する書籍『Night Falls on Sentinel』にて、この暗殺事件の最終的な結末が語られます。

 SentinelのNameless Tavernに音楽は流れておらず、実際、慎重で、用心深い囁きで交わされる会話、そしてホステスの石を鳴らす柔らかな足音、ひいきの客がささやかに音を立てて飲み、舌を酒瓶に巻きつけ、焦点の定まらない目をしている以外はほとんど無音であった。
 特に夢中になるものが無ければ、黒いベルベットのケープに身を包んだRedguardの女性の出現には驚きと目を引くものがあったかもしれない。疑念さえ引き起こしたであろう。言わば、見知らぬ人物は、影に溶け込みひっそりとして看板も出していない地下室には不釣合いであったのだ。
「貴方がJomic?」
 がっしりした中年の男は見上げて頷いた。そしてまた飲み始めると、若い女性は男の隣の席に腰を下ろした。
「私はHaballaと申します」と彼女は言って、金貨の詰まった小さな袋を引き出すと彼のマグの隣に置いた。
「そういうわけか」とJomicは歯を剥いて怒鳴ると、彼女の目を再び見つめた。「誰に死んでもらいたいんだ?」
 女は目を逸らさず、ただ尋ねた。「ここで話しても大丈夫かしら?」
「手前たち以外のことは、誰の問題だろうと知ったことじゃないさ。あんたが鎧を脱いでおっぱいを丸出しにしてテーブルの上でダンスをしたところで、誰も唾さえ吐かんよ」よ男は笑いながら言った。「で、誰に死んでもらいたいんだ?」
「実際には、誰も」とHaballaは言った。「本当の所は、ある人に・・・暫くの間、そこにいないでもらいたいのです。害されること無く。お分かりでしょうか。だから、そういうわけでプロを欲しているのです。貴方が素晴らしいと推薦されたわけです」
「誰がお前に話したんだ?」と、Jomicは鈍い声で尋ね、また飲み始めた。
「友人の友人の友人の友人からです」
「そいつら友達の一人は自分が何のことを話しているのか知らなかったんだろう」と、男は文句を言った。「二度とそんなことはさせんぞ」
 Haballaは静かにもう一つの財布から金を取り出し、男の肘元に置いた。彼は暫く彼女を見て、そして金を掻き込み数え始めた。それと共に、彼は尋ねた。「誰にいないでもらいたいんだ?」
「少しお待ちください」と、Haballaは笑いながら言って、頭を振った。「詳しいことを話す前に、私は貴方がプロであること、そして貴方がその人をほぼ無傷のままにできるかどうか知りたいです。それに、口が堅いことも」
「口を堅くしてほしいって?」男は数えることを止めた。「分かったよ、あんたに昔の仕事のことを話してやろう。それは――あんまり信じちゃないが、Arkayにかけて――二十年以上は前だったか、その仕事に関わった奴は、俺以外生きちゃいねえ。War of Betonyの前まで巻き戻るが、覚えちゃいるかい?」
「赤ん坊だったわねえ」
「当たり前か」Jomicは笑った。「皆、King Lhotunには死んだ年上の兄弟Greklithがいたことを知っている。そうだな? んで、奴には年上の姉妹Aubkiがいて、DaggerfallのKingってのと結婚したことも。だが、実は奴には二人の兄がいたんだと」
「本当に?」Haballaの目は、好奇心に輝いた。
「嘘じゃねえぜ」と男はくすくす笑った。「ひょろひょろのもやしっ子はArthagoといって、KingとQueenの最初の子供だったんだ。とにかく、この王子は王座の継承者だったが、両親はというとぞっとしないことに、しかしQueenはより逞しそうなもう二人の王子から締め出したのさ。俺と仲間がその時雇われてな、Underkingかあるいはそういうのによって第一王子がさらわれたように見せかけるよう話をでっち上げたのさ」
「分からないわ!」と若い女性は囁いた。
「勿論そうだろうさ、それが問題点だ」と、Jomicは頭を振った。「好きなように判断してくれ。俺たちはその男の子を捕まえて、古びた廃墟の中で下ろした。それだけさ。騒がれもしなかった。たった二人で、鞄と棍棒」
「それは面白そうね」とHaballaは言った。「その技。私の・・・誘拐されなくてはならない友達もこのPrinceのように弱いの。棍棒は何のために?」
「道具さ。昔はより良い多くのものがこれ以上周りに無くて、ただ今日の奴らが仕事をきちんとこなすに使いやすいものを好んだせいだな。説明させてくれ。平均的な人の身体には、七十一箇所の主要な痛点がある。ElfとKhajiitは大分敏感で、それぞれ三箇所と四箇所多い。ArgonianとSloadは大体五十二と六十七同じようにあるんだ」Jomicは自分の短い指をHaballaの体のそれぞれの箇所に指し示した。「六箇所があんたの額に、二箇所が眉に、二箇所が鼻に、七箇所が喉に、十箇所が胸に、九箇所が腹部に、三箇所がそれぞれの腕に、十二箇所が股に、四箇所があんたのおみ足に、五箇所がその他の場所にある」
「六十三じゃない」とHaballaは答えた。
「違うだろ」とJomicは怒鳴った。
「違うわよ」若い女性はまた叫んだ。数学的な技術から出た疑問に憤慨したのだ。「6足す2足す2足す7足す10足す9足す腕一つの3足す別の腕の3足す12足す4足す5。63だわ」
「いくつかを省いちまったようだな」とJomicは肩をすくめた。「大事なのは、杖や棍棒によく慣れて、これらの痛点をマスターしなきゃならんってことだ。正しい場所を打てば、軽い打ち込みでも殺すことが出来るし、あざをつけずに気絶させることもできるぜ」
「それは素敵ね」とHaballaは笑った。「それに、誰にも見つかったことは無いの?」
「何故そんなことを? 男の子の両親のKingとQueenは、もう今は死んでしまった。他の子供たちは兄弟がUnderkingに連れ去られたんだと固く信じてるぜ。それが皆思っていることだ。それに、俺の相棒はみんな死んじまった」
「自然な原因で?」
「湾で起きることに自然も何もないだろ、そうじゃないか。一人はSelenuの奴に吸われちまった。他にも、QueenとPrince Greklithは同じ流行り病にかかって死んじまった。『泥棒が死ぬほどの暴行を誰かに働くこともない』あんたは俺のように身を低くして、視界に入らんようにしなくちゃならん。命が惜しかったらな」Jomicはコインを数え終わった。「あんたはそいつを押しやらなくちゃならん。誰をだ?」
「貴方に見せたほうがいいかと」Haballaが言って立ち上がった。後ろを振り返ることなく、彼女はNameless Tavernから大股で歩き去った。
 Jomicはビールを飲み干して歩き出した。その晩はIliac Bayの海から押し寄せる気ままな風のために涼しく、回る陰のように木の葉を飛ばした。Haballaは居酒屋の隣の裏通りから踏み出し、手招きした。男が女に近寄ると、彼女のケープがそよ風を孕んでまくれ上がり、その下にあった鎧とKing of Sentinelの紋章が露になった。
 太った男は逃げようと後ずさりしたが、彼女のほうがあまりにも早かった。あっという間に、男は背後の路地にいること、女の膝がしっかりと彼の喉を抑えているのを感じた。
「Kingは玉座に座られて以来、お前とお前の協力者を何年もかけて探してこられたのだ、Jomic。お前を見つけた際に何をするべきか、あの御方は私にはっきりとは命じて下さらなかったが、お前はアイデアをくれた」
 ベルトから、Haballaは小さく頑丈な棍棒を取り外した。
 バーから出て千鳥足の酔漢は、泣き声じみた呻きと共に、柔らかな囁き声が路地の暗闇から流れてくるのを聞いた。
「今度はきちんと数えましょうか。一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ・・・」

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(2009.9.13)