黄金マスクの悪夢


 厳重に封鎖されていたワケがこれだ。


 上は野盗どもの巣になっていたが、下はまだDwemerの攻撃兵器が生き残っていた。野盗はこれを掃討できなかったので、鍵をかけておいたのだろう。


 しかも、Dwemerの幽霊までいるときた。拾った剣にエンチャントがついているお陰で助かったな。
 最下層は水が溜まっていて、Levitateでしか上がれないところに宝箱があったり。色々包んで持ち帰ると、結構いいお金になった。早速、トレーニングに使ったり装備を新調したりしてみた。危険ではあるが、自分が稼いだお金で自分のためのお金が使えるってことにちょっと感動した。


 早速、戦士ギルドの人に紹介された本屋さんで、参考文献に挙げられていた本を買ってみた。※本当は本を売ってないのですが、話の都合上です。紹介されてるのに無いって・・・。
 それをメイジギルドに持ち込んで、Caiusに貰った『A Short History of Morrowind』やHasphatに貰った『On Morrowind』と合わせて早速読んでみる。

 はじめに
 伝説的な予言者Velothによって導かれ、Dunmer(現在で言うSummerset IsleにおけるAltmer文化からの亡命者)の祖先が、Morrowindの地にやって来た。最初期には、DunmerはNordのバイキングによって侵略され、支配されたりもした。散らばったDunmerの部族たちが現代のGreat Houseの原型の元に統合された時、Nordの圧制者を追放し、更なる侵略者をも撃退した。
 種族における古代の祖先崇拝は、磐石なるTribunal Templeの神政へと移行し、DunmerはResdaynと呼ばれる大国になった。Resdaynは、Tiber Septimに服従した最後の地域だった。Black Marshと同様に、上手く侵略することはされず、Morrowind州として、条約によって平和的に取り込まれた。
 帝国軍が来た約四百年後でも、Morrowindは未だに皇帝を頂く帝国軍が闊歩しているが、帝国はFive Great Houseの統治評議会という伝統的な土着の政府が機能することを許している・・・。

 Vvardenfell管区において
 3E 414年、帝国保護下におけるTempleの支配地域だったVvardenfell地区は、Imperial Provincial Districtとして再編成された。VvardenfellはTempleによって認められた少数のGreat Houseを除き、Armistice条約によってTempleの領地として統治されてきたが、かつてVvardenfellは人が居らず、未開な地であった。
 新しい地区は、Redoran、Hlaalu、TelvanniとTemple地区として分けられ、各々は地元のHouse CouncilやTemple Priestによって管理されている。そして、全てはDuke DrenとEbonheartのCouncilの助言に同意している。条例は、House地区ではHouseの法と帝国の法が入り混じり、帝国兵とHouseのガードで共同で管理している。Temple地区ではOrdinatorたちによってTempleの法と帝国の方が入り混じりながら施行されている。Templeは主要な宗教であると認められ続けてはいるが、Nine Divineの崇拝は帝国軍によって保護され、Imperial cultの使節団によって布教されている。
 Temple地区は、Vvardenfellにおいて、Vivec市、Ghostgate要塞、神聖かつ穢れた場所(Ghostfence内部のようなBlightに汚染された地域を含める)、管理されておらず人のいない地域がこれに属す。実際には、この地区は、Redoran、Hlaalu、Telvanni地区が支配地域だと主張していない全ての部分である。Templeは、その地区において、全ての開発と頑なに戦い、大体成功している。
 帝国の入植者と協力したHouse Hlaaluは、和解と発展の活発なキャンペーンに乗り出した。再編成された数十年後には、BalmoraとAscadian Isles地方は着実に発達した。CalderaとPelagiadは完全に和解したという象徴である。そして、すべての帝国軍の砦はより大きな駐屯軍に対応するために拡大された。
 通常、保守派であり孤立主義であるHouse Telvanniは伝統的な塔村を越えて拡大することに驚くほど積極的だった。その他のHouse、Temple、Dukeと地区議会の抗議を無視して、Telvannniの先駆けはTempleが支配していた荒涼とした大地を侵食した。Telvannniの議会は公式にこれらの危険な入植者に対する責任を否定しているものの、野心的なTelvannniの魔術師たちの支配者によって影から支援されていることは公然の秘密である。
 Templeからの圧力の下で、保守的なHouse Redoranは、彼らの地区を拡大することに断固として抵抗した。その結果、House RedoranとTempleは、より積極的で拡大主義を採るHlaaluとTelvanniの関与によって政治的、経済的に取り残される危険に晒されている。
 帝国の行政機構はVvardenfell地区で多くの困難に直面しているが、最も深刻なものはGreat House間の紛争、彷徨えるAshlanderからの憎しみ、Temple内部の紛争とRed MountainからのBlightである。Vvardenfellの資源を支配するGreat House、Templeと帝国の利益を巡る戦いは、いつでも全面戦争にまで燃え上がることができる。Ashlanderは入植者を襲い、隊商を略奪して、彼らの荒涼とした土地で外国人を殺害する。Templeは非難を沈黙させようとして、その集団の中で改革を要求する試みをしたものの、失敗した。
 だが、Red Mountainから流れ出しているBlightの嵐が生みだす流行病とそれに感染した生き物が、最も深刻な問題である。Vvardenfellと全てのMorrowindの市民は、伝説的なまでに邪悪なDagoth Urと、Red Mountainの地下に潜む彼のAsh vampireや眷属によって長く脅かされている。何世紀もの間、TempleはGhostfenceの中にこの脅威を押し留めた。しかし、最近Templeの手段は崩れ始め、Red Mountainの脅威は物凄い勢いで成長している。もしGhostfenceが失敗したなら、そして、Blightに感染した生き物がVvardenfellの街や村に流れ込んだら、帝国はVvardenfell管区を見捨てて、病と腐敗を見過ごす他に手が無かったかもしれない。
『A Short History of Morrowind』


 Hammerfellの征服後、帝国軍はCyrodiilの北東の境界に沿って集合し、侵入艦隊はSkyrimで備えた。
 まず最初に、帝国軍と海軍が優勢であると多くの者は感じたが、House IndorilとTempleの支配層は最後まで抵抗するつもりだった。Telvanniは静観しており、RedoranとDresはIndorilに賛同した。Hlaaluは、停戦すべきだとした。
 Black Mashにおける国境の計画された事件はあやふやなまま終わったが、湿地が多い地形は帝国軍と海軍に上手く作用しなかった。西のSilgrad TowerとKragrnmoorに対して帝国軍は集結し、BlacklightとCormaris Viewの西の軍隊に対して、Morrowindは民兵とRedoranの傭兵とHouseの貴族たちの精鋭部隊とTempleのOrdinatorとArmigerたちによる小規模な編成しか為されず、哀れなほどであった。更に問題を難しくしたのは、西の境界に守備隊を置くことに対するIndoril、Dres、HlaaluとTempleの拒絶だった。西の境界を守るよりも、IndorilとDresは内部に後退して、代わりにゲリラ戦を行うべきと提案した。和解を主張するHlaaluと、静観しているTelvanniに挟まれ、Redoranは帝国軍に対して孤立するかもしれない事態に直面した。
 Tiber Septim帝と条約の交渉を発表するためにVivecが自らVivec市に現れると、状況は急激に変わった。そして、帝国の行政区として再編されることには応じるが「宗教と自治の全ての権利」を保障するとした時、事前に相談されていなかったであろうTempleの支配層は、発表に気まずい沈黙で応じた。Indorilは、Dresの忠実な支持を得て、死ぬまで抵抗することを誓い、対してRedoranは支援無しで帝国軍に相対する事を避ける上手い口実に感謝してHlalluに迎合し、合意に達したことを歓迎した。Telvanniはどちらの風向きが良いか見計らい、条約を締結する時にHlaalu、Redoranと迎合した。
 誰も、SeptimとVivecの間の個人的な会談の状況や、どこで行われているのか、もしくは条約に先行してどういう準備をしたのか知られていない。一般的な説は、関係したエージェントの身辺を保護するためである。西側は、合意の仲介の際にZurin Arctusが中心的役割を担ったと推測している。東側では、VivecがMorrowindにおいて、自治とHouseの伝統と、宗教を保護する重要な譲歩をした見返りに、AltmerとSummerset Isleを征服する援助としてNumidiumを提供したという噂が密やかに流れた。
 Grand CouncilのLord High CouncilorのIndorilは、その条約を受理することを拒否し、撤退を拒絶した。彼は暗殺され、Hlaaluによって代理を務められた。House HlaaluはHouse Indorilの何人かの老害を暗殺する機だとして、いくつかの地方議会は血なまぐさいクーデターによって、頭が挿げ替えられた。独立国家から帝国の行政区へのMorrowindが移り変わる間、帝国軍に対して、より多くの血がHouse内の紛争によって流された。
 帝国軍の将軍は、Morrowindが侵入することを恐れた。Dunmerは大部分が凄まじく狂信的な敵だと広く考えられていた。そして、更に、Templeと一族の伝統的な影響を受けていた。将軍はTiber Septim帝が発見してつけこみたいと思っていたMorrowindの政治的な弱点を把握できなかった。同時に、Septimによって征服された他の地方が経験した悲劇的な虐殺と破壊を与えれば、Morrowindの帝国的なシステムと経済の移行もスムーズに行くと思われ、Morrowindの下層もしくは上層階級の市民に比較的小さな影響で済ませるために、TribunalもまたMorrowindの防衛が絶望的であることを認めて、平和を提供する最初の人物として重要な譲歩を得るチャンスを得るために交渉のテーブルについたことは賛同できよう。
 対照的に、多くのIndorilの貴族は、移り変わる間にHouseがかなり弱められたために、帝国を甘受するよりも自害を選んだ。そしてHouse Hlaaluへの影響力を失い、その分Hlaaluは帝国と親密に和解することに力を使った。Templeの支配層はより巧みに面目を失わまいとした。そして、政争から離れ、経済的で、教育的で、精神的な福祉に集中することで、変わらずに人々の善意を得ることとなった。
『On Morrowind』


(帝国学者Agrippa Fundiliusによるこの説明は、色々な帝国やDunmerの根拠に基づいて、西側の読者のために書かれている)
 The War of The First Councilは、非宗教的なDunmerのHouse DwemerとDagothと、正統なるDunmer House Indoril、Redoran、Dres、Hlaalu、TelvanniのFirst Ageにおける宗教的な対立だった。
 First Councilは、最初の汎Dunmer政府であり、Dwemerによって行使された魔法とエンチャントがその他のHouseによって不敬なものだと宣言したことによる論争で崩壊した。
 しかし、離反したHouseは、少数だったものの、魔法のように躍進して、NordとOrcの一族によって助けられ、まず最初にMorrowindの北部を征服することに大いに成功し、現在のRedoran、Vvardenfell、Telvanni地区がある多くの土地を占領した。Nerevarが全てのHouseの部隊と遊牧民を結び付けるまで、正しきHouseは広く分散して、十分に組織されず、敗北に次ぐ敗北に辛酸を舐めた。
 Nerevarは遊牧の未開の部族の助けを借りて、VvardenfellのRed Mounrainの離反者の拠点で大戦を開くところまでこぎつけた。離反した軍隊はAshlanderのスカウトの助けにより裏をかかれて破られた。そして、生存者がRed MountainでDwemerの拠点に避難することを強いられた。
 短い包囲の後、裏切者がNerevarと彼の軍団が拠点に入るのを許し、そこで反乱軍の指導者は殺害されたが、Nerevarも致命傷を負った。よくある虐殺が後に続き、そしてHouse DwemerとDagothは滅亡した。Nerevarは、その後まもなく傷によってこの世を去った。
 正しきHouseのNerevarの仲間のうち三人、Vivec、Almalexia、Sothia Silは再編成されたFirst Councilの主導権を握ることに成功し、Grand Council of Morrowindと名前を変えて、神王として降臨し、Tribunal、またはAlmsiviのMorrowindの不滅の統治者として知られている。
『The War of The First Council』


(西から来た読者のための短いTempleのパンフレットから)
 太古の時代、NerevarはDunmerの偉大な将軍であるFirst Councilorで、Vivec、Almalexia、Sotha Silの仲間だった。古代の偉大な、力を持つ指輪、One-Clan-Under-Moon-and-Starを嵌めて、DunmerのHouse同士を結びつけて邪悪なDwemer、凶悪なHouse Dagoth、西側の同盟国とRed Mountainで対決した。その地において、不実なるDwemerは滅ぼされ、同盟国は敗れた、しかし、Nereverは裏切者であるDagoth Urとの戦いで致命的な傷を見舞われ、Red Mountainを去っていった。傷のために長く生きることは無かったが、Templeの誕生を目にするまで生き延び、Dunmerの統一をAlmsiviの元で聖人としてTempleを祝福している。
『Saint Nerevar』


(これは、Ashlander伝説における色々な帝国学者の一連の研究論文から選んだものである)
 太古の日、古エルフととても多くの異国の者がDunmerの土地を盗みにやって来た。その時、NerevarはHouse Peopleの王にして戦争の指導者であったが、Ancient SpiritsとTribalの法を守るために立ち上がった。
 かくして、Nerevarが古代の指輪であるOne-Clan-Under-Moon-and-StarにSpiritsの道と土地の権益を守ると誓うと、全ての部族たちがRed Mountainでの大戦のためにHouse Peopleに参加した。
 多くのDunmerのTribesmanやHousemanがRed Mountainで死んだが、Dwemerは破られた。彼らの邪悪な魔力は滅び、異国の者は国から追放された。しかし、この大勝利を収めると、力に飢えたGreat Houseの王たちはNerevarを密かに裏切り、自分たちを神として宣言し、部族の者たちに交わしたNerevarの約束を反故にした。
 しかし、Nerevarはいつか指環を身につけて再臨し、偽神を駆逐し、指環の力で部族への約束を果たし、そしてSpiritを守り、国からよそ者を追放すると言われている。
『Nerevar Moon-And-Star』


(このTelvanniの家の者のNerevarについての歴史は根拠が挙げられていない)
DunmerがVelothに続いてMorrowindに入ったとき、共通する法律や指導者のいない、争い合う一族だった。一人のDunmerの司令官、Nerevarは、全てのDunmerを支配しようという野心に燃えていた。
 その時代、House Dwemerは偉大な魔道士を擁しており、Nerevarは秘密裏にDwemerの鍛冶屋に行って、彼を助ける魔法をかけられた指環を求めた。指環には、はめた者に弁舌の才を与えた。安全のために、Nerevar以外には、それを身につけた者を直ちに殺す魔法をかけられた。指環はMoon-and-Starと呼ばれ、それはNerevarがFirst Councilへと色々な家の者を結びつけることを助けた。
 しかし後になって、宗教上の議論がCouncil内で勃発し、House DwemerとHouse Dagothと他のHouseとを二分することになった。Nerevarがその他のHouseと遊牧している部族を集めてDwemer-Dagoth-西国軍と対峙しようと行軍するのに対し、DwemerとDagothは同盟国としてOrcとNordの一族を北西のMorrowindの土地に封ずるとして手招きした。
 軍は、Dwemerの拠点であるRed Mountainで衝突した。多大な戦死者を出してDwemerは破られ、途方もない魔法が使われてHouse DwemerとHouse Dagothと彼らの同盟国は悉く根絶された。Nerevarは戦死し、彼の指環は失われた。しかし、Nerevarの同盟はMorrowindの政治的な基盤であるGrand Councilとして存続した。
『The Real Nerevar』

 うーん、大体言ってることはこうだ。
 1 Nerevarというエライ人がいた。
 2 DwemerとDagothが宗教的なことで他のHouseと対立した。詳細は不明。
 3 Nerevarは指環の力で、Houseと部族を纏め上げ、Red Mountainの戦いで勝った。
 4 Nerevarは死んだ。Templeによると戦死だか、Ashlanderは裏切りと主張する。
 5 指環はどっかに行った。
 6 Nerevarは指環をつけていつか戻ってくる(らしい)。
 7 現在のエライ人はVivec、Almalexia、Sothia Silである。
 8 色々多くの問題がMorrowindには存在する。
 9 Nerevarの実家であるIndorilは力を失っている。

 このうち、4と6にズレみたいなのがあるのかな。まあ、こういうズレが一体どっちが正しいのか、学者だったら面白くて調べてみたくなるんだろうな。俺は伝説とか面白いと思うけど、そこまで詳しくやりたいわけではないが。
 それでも、以前は本なんて読めなかったわけだし、面白くてギルドにあった本も借りてベッドであれこれ読んでいるうちに、何時の間にか眠ってしまった。



 金色のマスクをつけた背の高い人影が、死者が並ぶ中、俺を引き連れて行く。まるで結婚式のようだ。何か色々なことを言われたのだが、俺の唇は動かない。息を吸おうと思っても、胸が動かない。死者たちに、背の高い人影は話しかける。まるで生きている人物に話しかけるかのように、笑って、冗談を言って。けれども、死者たちは答えない。俺は叫ぼうとした。しかし、息が出来なくて、舌が無駄に震えるだけだった。



 ・・・ゆ、夢か!!!
 あああああ、夢で良かった、ホントに良かった!!!

 俺はベッドから跳ね起きて時間を見ると、まだ夜明け前だった。他のベッドから、すやすやと寝息が聞こえる。心臓が未だにバクバクしているが、夢にしてはやたらリアルだったな。それにしても、怖い夢だった。何だろう? 読書なんていうことをしてみたからこんな変な夢を見たんだろうか? よくわからないなあ。
 あーもう寝なおし寝なおし、ともう一度ベッドに潜り込んで、そのまま眠った。

 今度は夢を見なかった。

 翌日、Caiusのところに顔を出してみたが、Caiusは、Hasphatのノートは、Sixth Houseのことに言及しているものの、Nerevarine cultのことにはあまり触れていないので戦士ギルドの隣のメイジギルドのSharn gra-MuzgobさんにNerevarineの話を聞いて来いといわれた。やっぱり何かお手伝いをしなきゃいけないんだろうな。あまりよろしからぬ術に手を染めているらしいが。


「全く、こっちは時間が惜しいのに! Caiusのとこの人かい? ならちょっと手伝いなさい」

 予想通りだ(´д`;)
 Andrano Ancestral Tombに安置されているLlevule Andranoの頭蓋骨を持って来いということだ。墓荒らしは好まれないので幽霊に襲われるんじゃね? とのこと。そこで、エンチャントされた魔法剣を貰った。Pelagiadの南にあるらしい。道沿いにあるので、ふんふんと場所を日記にメモって出かけることにした。


 てくてく歩いていくと、荒野から比較的緑のある地形に変化した。そして、もうあと少しで町というときに、一人の女性と出会った。こんな所で一人でいるのもおかしいし、どうにもそわそわしている。ちょっと気になって、道を尋ねるついでに聞いてみた。

「ごめんなさい、この辺りで盗賊の人を見なかったかしら? 見つけなくてはいけないの!」
「え? 盗賊?」
「そうなんです。仕事の都合でこの辺りを歩いていたら、突然盗賊が私の後ろから飛び出してきたんです。彼はDarkElfで――逞しくて、軽快なDarkElfでした。あの人は私を全然傷つけずに、宝石だけ奪っていきました。今までで話した中ではとても紳士的な方でした」

 ん? なんかオカシイぞ。

「宝石を取り返して欲しいとかじゃないんですか」
「え? 宝石のことはどうでもいいんです! 私はただ、盗賊さんにもう一度会いたくて。彼はチャーミングで、愉快で、ただ、もう一度会いたいだけなんです。彼の名前? Nelos・・・Nelos Onmar・・・私の唇が覚えていましたわ。彼が私のことをどう思っているか知りたくてたまらないんです。貴方に頼むしかなくて、どうか私の個人的な事情のためではありますが、手伝ってもらえませんか?」
「そうですね、そこまでおっしゃるのなら」
「やっていただけるのですね? ありがとうございます! 多分、どこに行ったか見当がつきます。多分、Pelagiadじゃないかと。どうか、彼を見つけたら、この手袋を愛の印として差し上げて下さい。もう一度会いたいのです」

 何だか奇妙なことになってしまったが、Pelagiadは目的地の方向でもあるし、近くもあるので行って戻ってくるくらいは構わないだろう。


 兎に角、頭蓋骨も見つけなくてはいけないので最短でも一日はかかると予想し、宿だけ取ってそれからまず男を捜すことにした。この町は帝国系らしいな。奥に砦も見える。交通機関がない割りに、そこそこ発展しているらしい。とりあえず宿に入って、ベッドを頼むついでに食事をして、さりげなく女将さんにNelos Onmarという男を知らないか聞いてみると、その男はその辺で飲んでるんじゃないのー? なんて教えてくれた。って、マジか。


 ありゃ、ホントにいた。すいませーん、と声をかけて、貰った手袋を差し出してみた。

「何か? おやまあ。彼女は可愛らしい若い女性でしたが、私のような物取りを気に掛けてくれると? 彼女は美人で、素敵な感じでしたね。生きてきた中で初めてそんな人に出会いました。私は実際、誰かから物を奪うことに少々後悔を感じていたところです。彼女にまた会ってみましょう。さあ、これを取って下さい。彼女に私からのノートだと言って下さい。また彼女に会わなくてはならないでしょう。このことを忘れませんよ、親切な方」

 そんなこんなで、Nelothさんは紙に急いで何かを書いて、俺に託してくれた。美女と野盗ってなんだかおかしな組み合わせだが、この出会いが切っ掛けで物取りを止めるって言うんなら良い事なんだろう、多分。Nelothさんも大事そうに彼女の手袋を嵌めている。高級なものだから、すぐにそうだとわかるだろう。顔も知ってるし。


 すいませーん、男を見つけましたよー。


「手紙を預かったですって? まあ! 本当にありがとう御座います! どうなったか見当は付くので全てを言わなくてもいいですよ。ええ、本当に嬉しいです。貴方は本当に良い人ですこと。Tel Aruhnに住んでいる私の友人のEmurettle Bracquesを訪ねてみて下さい。彼女は良い人ですから、紹介しておきましょう」

 どうしても気になったので、手紙を渡しに行く道すがらチラッとだけ手紙を見せてもらったのだが。

 Maurrieへ

 実を言えば、貴女にあった瞬間から、一目ぼれしてしまいました。私が過去にした過ちを許して貰えるでしょうか。貴女のように美人で育ちも良さそうな女性が私のようなごろつきに何を認めたのか想像することは出来ませんが、私と貴女を引き合わせた神に感謝しております。出来るだけ早く貴女のところに行きましょう。
 その時まで。

 敬具
 Nelothより。

 いいなー。俺もこういう熱烈な手紙貰ってみたい。もちろんキレイな女性から。


 そうこうしているうちに墓についた。前世は分岐を見逃して、Vivecにまで行ってしまったのだが、中の人は相当アホだな。


 うえ、早速幸先の悪いもん見ちまった。


 墓の中は骸骨や幽霊やゾンビみたいなものがうようよ。全てこの世からお引取り願った。


 これが問題の頭蓋骨だな。そっと手に取ると、厳重に包んだ。


「よろしい。頭蓋骨を受け取ろう。思ったとおりのものだ。感謝する。さて、約束したとおり、Nerevarine Cultについての質問に答えようか。何なりと」
「Nerevarine Cultって何なんですか?」
「Ashlanderは、太古の時代に死んだ英雄Nerevarが栄誉と共に生まれ変わり部族に交わした昔の約束を守ると信じている。伝説によれば、Nerevarineの予言はTribunal Templeの偽神を駆逐し、Ashlanderの伝統的な祖先崇拝を復活させるもので、異国の者をMorrowindから駆逐するとも言われている。Templeと帝国の双方はその宗教を違法だとしているが、Ashlanderは帝国やTempleの法に一貫した反対の立場を保っている。ほら、私のこれについてのノートの写しをCaiusに持って行きなさい。
 Nerevarは第一紀のDunmerの英雄で、偉大な将軍であり指導者でも会った。First Councilを形成するのに助力し、裏切者のHouse Dagothが招いた異国の侵略者に対抗してDunmerの家々を一つにした。Red MountainでMorrowindの敵を撃ち滅ぼしたが、戦死したという。  Nerevarineの予言について、Ashlanderの文化は夢と幻視と予言を尊重する。Templeと西側の文化が好ましく思わないものだ。そういったものは遅れたものだとね。Wise womanが夢や幻視を解釈して、世代間に語り継ぐ。一般的に良く知られているNerevarineの予言の文章はTHE STRANGERだ。Nerevarが所有している『One-Clan-Under-Moon-and-Star』をいう魔力を帯びた指環を知っているかな。NerevarはAshlanderの誉れ高き祖先の文化を守ることと土地の権益をその指環に誓ったのさ」

 ふーん、と、早速貰ったノートの写しを読んで見ることにした。

(Sharn gra-MuzgobからCaius Cosades宛てのノートの内容は以下のようなものだ)

 The Nerevarine cult
 このAshlanderの宗教組織は、誉れ高き古代の約束を守るためにNerevarが生まれ変わり、予言者Velothの伝統を復活させて、MorrowindからTribunal Templeの偽神と異国の者を駆逐するという予言を信じるというものである。Templeと帝国はこの教団を非合法だとしているが、帝国とTempleの圧力にも関わらず、Ashlanderの間で生き続けている。迫害されていることにより、教団は秘匿されている。よって、Ashlanderの間にどれくらい広まっているか、もしくはAshlanderの部族の外部にも信者がいるのか判断するのは困難である。

 The Nerevarine
 Ashlanderは、Nerevarが古代のResdaynの栄光を取り戻すために帰ってくると固く信じている。(Morrowindは、帝国に征服される前は「Resdayn」と呼ばれていた)AshlanderはGreat HouseとTempleが予言者Velothの純粋な教えを捨て、Tribunalの偽神によって祖先崇拝を捨てて、HighElfを堕落させた文明を受け入れたと主張する。Templeは、聖Nerevarを崇拝する一方で、偽の再来者が魔物のように大地を闊歩するなどという愚かな説を否定している。

 Nerevar
 Templeは、Dunmerの最も偉大な将軍であり、First Councilor、そしてVivec、Almalexia、Sotha Silの朋友であり、邪悪なDwemerと裏切者のHouse Dagoth、西側の同盟国をRed Mountainで滅ぼすために、DunmerのHouseを結びつけた聖Nerevarを敬っている。しかし、Ashlanderは、Nerevarが先祖の霊と部族の法を守ると約束し、そして、その約束を守るために再来すると主張する。Ashlanderにとって、これは歪んだTempleを滅ぼして、国から侵略者を駆逐することを意味する。

 Nerevarineの予言
 夢による幻視と、予言がAshlanderの文化において伝統的に尊重されている。Wise womanとシャーマンは、夢と幻視を慎重に見極めて、幻視と予言を後継者に遺産として部族に継承していく。対照的に、Templeと西側の宗教は神秘主義を疑っている。夢や幻視の解釈を、迷信に過ぎないものだと捉えている。

 Nerevarineの予言で最も一般的に語り継がれているものは、THE STRANGERである。細部は違えども、大よそは同じ事を言っている。しかし、二つのことは共通している。
 先ず一つ目のことは、多くの貧相な学者は「月と星の下に征く」という詩句を非常に長い旅行を暗示しているのだと仮定するのだが、伝説におけるNerevarが「One-Clan-Under-Moon-and-Star」という名の魔力を帯びた指環を所有していたことが知られており、Nerevarは昔からのAshlanderの伝統と土地の権益を守るという約束をそれに誓ったと言われている。
 二番目に、「七つの呪い」についての言及は、AshlanderがSEVEN CURSESとして知っている失われた予言の詩句に注意を向けなくてはいけない。

 THE STRANGER

 大地が鳴動し、天空が漆黒に染まり、眠りし者どもが七つの災いをもたらす時、
 その只中に異邦人が降臨し、月と星の下に征く。

 何も無く、親も無く、運命の星の下に生まれん。
 邪悪はその者を追い回し、正義はその者を呪わん。
 予言者は口にすれど、全ては否定される。

 多くの試練が異邦人の運命を照らし出し、災いは打ち払われん。
 多くの試金石が異邦人を試すであろう。
 多くの者は振り落とされ、ただ一人が残る。

 失われた予言
 Ashlanderの年寄りは、Wise womanとAshkhanの最初の世代の不注意や愚かさのために予言が部族の世代間に伝承されないことについて厳しく言っている。疑い深い学者は、これらの予言が故意に忘れられたか、圧力を受けたのではないかと考えている。特に、三つのNerevarineの予言詩が、失われたと言われている。一つ目は、The Lost Prophecies、二つ目は、The Seven Curses、三番目は、The Seven Visions of Seven Trials of The Incarnate。失われし予言の忘れられた記述は、旅行者によって書き留められたり、孤立したAshlanderたちが記憶していたり、Wise womanやシャーマンの秘伝の中において発見されるのではないかと思われる。
『Nerevarine cult notes』

 ふーん。
 流石知識追求のメイジギルドらしいや。少し前進したという手ごたえがあった。予言詩なんてもんもつけてくれたし。解釈は色々しようがあるかもしれないが、Caiusは満足するだろうな。
 普通、聖人が復活なんていったら嬉しいことなんだろうけど、そうでないのは予言が反体制的なものを含むからみたいだな。Nerevarの友達のVivec、Almalexia、Sotha Silが今のMorrowindの頭なので、それを倒すなんていったらエライことだ。でも、何で皇帝はこんなのを調べたいんだろう。まあ、Morrowindは帝国とTempleが自治の何だかんだでなあなあな状態になって四百年、414年に区割りを再編成して、帝国にMorrowindを組み込もうとしている。今年は427年。利潤を巡って帝国とTempleとHouseの間に軋轢があって、火薬庫の上に乗ってるのが現状。皇帝が俺に動いて欲しいみたいだし、その俺がこんなTempleを倒すような物騒な予言を調べてるってコトは、Templeに居なくなって欲しいのかなあ。でも、Nerevarineが居ないのにTemple打倒っつってもムリだろ・・・。

戻る      進む

(2008.5.7)