黒い森から栄誉を込めて

The Black Grove

 迅疾と機敏さはMorag Tongの本領。彼の者らが動く時、沈黙に包まれ、誰も見ることはない。幻術が彼の者らの敵を惑わせる。肉薄し短剣で突き刺し、または距離を取って密かに、遠方より、飛び道具で寸分違わず暗殺す。軽装が傷より彼の者らを守り、軽業が誰にも見られずに、道を開かせるようにする。これらの長所を兼ね備えているか? ならば、さあ、Morag Tongを礼賛し、誓いを立てて仕えるが良い。
 友に囲まれ美しきものに身を包めど、行く当てが無い者か? 笑い、泣けど、最早何も感じぬ者か? これらの仮面を身に着けているか? ならば、さあ、Black Groveを礼賛し、誓いを立てて仕えるが良い。
 狩る者の血と狩られる者の血。埋伏と発見の歓喜。眼差しと血の門。生の歓喜と死の歓喜。これらを満たす者か? ならば、さあ、Mepharaを礼賛し、誓いを立てて仕えるが良い。
 誓いを立てて仕えるにあたり、それに適する者はGrandmasterを見出すべし。その者はしきたりに従い、Vivec市の、闘争の流血と生命の流水の狭間にあり、誰にも見られず、思いも寄らぬ密やかな場所で暮らしている。

 この世は殺るか殺られるか。
 洞窟を探検すれば、密輸業者に襲われることもある。けれど、奴隷を助けることは出来る。
 ギルドに入れば、上司次第で欲や私怨に絡んだ暗殺命令が出されることもある。
 殺しは避けられない。冒険を続ける限りは、ずっと。
 ならばいっそ、ちゃんとしたところで殺しを請け負った方が良いのではないか。
 Morag Tongは、陽の当たる場所にいられるくらいきちんとした暗殺ギルド。これからも人を殺していく人生が続くのなら、入ったところで何も変わらないのではないか。
 そんなことを思ったのだ。


「Morag Tongに入りたい? ここMorrowindでは、高潔で伝統的なプロの集まりだ。この辺りでよく見かけるよ」

 『The Black Grove』には、入会へのヒントが隠されている。本部を発見するに際して一番重要なのは最後の部分。「闘争の流血と生命の流水の狭間にあり、誰にも見られず、思いも寄らぬ・・・」という部分だ。「闘争の流血」とは、Arenaで流される血のこと。流水とは、下水とか、まあ、水に囲まれてるのだからそれも指すのだろう。そして、誰にも見られぬ場所。合法とはいえ殺しが仕事という薄暗いところがある人たちが潜んでいる場所といったら、十中八九、地下に決まっている。


 ビンゴ。やけに厳重に施錠された扉があった。


 中はかなり広い。人手は常時募集みたいだし、ここに来ることが入会の条件なんだからいきなり攻撃されることは無いはずだが、気を引き締めていこう。


 それなりにわいわいやっているようで、俺を見て目的を察してくれたらしく「あ、Eno様奥にいるからねー」と、案内してくれた。


「Yui-Liというのかね。君は私を見つけたわけだ、君が望むなら、Morag Tong入会への正式な手続きを踏もうじゃないか。Morag Tongは君を見てきたし、会えて嬉しいよ。君の優れた才能はまだまだ伸びる。入らないかね?」
「もうすこし詳しい話とか聞かせてもらっていいですか? こういう組織のことって表に出ない分、わかりにくくて」
「Morag TongはWritによって暗殺し、有力なHouseの支持で特別な任務を実行する。ギルドのメンバーは、ランクに関わらずいかなる兄弟姉妹を傷つけたり、物を盗んだりしてはならない。決して我々の秘密や身元を明かさないこと。これらのルールを破ったならば、直ちにMasterと話をして元鞘に納まるか、さもなくば暗殺の対象になる。これらの指針の下で上手くやっていけそうかね?」
「はい。ギルドの名に傷をつけないよう頑張ります」
「では、志願者として入会させよう。本当に入会するには、テストを通らなければならない。ここにFeruren Oranの栄誉ある処刑のためのWritがある。Hlaalu Prazaの、Eleven Nation Cornerclubで見つかるだろう。彼を栄誉を込めて暗殺し、私に報告するように」

 Writには、標的の人物の名前の下にこんな文章と、Morag Tongの印が押されている。

 上記の人物は、しきたりとMorag Tongギルドが実行することが合法であると認められたため、栄誉ある処刑の対象に選ばれた。この格式高い文章を持つ者は、上記の人物の殺害に関して、公式に認められた許可を与えられている。

 ホントに合法なんだな。


 さて、Prazaといったら高級住宅街だ。それを殺害せいとは、House War絡みかな。


 ただし、本人は「お前のその目が好きじゃない」と、話を拒否してきた。挑発は無理か。


 じゃ、仕方がない。


 すっぱり殺らせていただきますね。


 標的は破壊魔法の使い手で、正直言って至近距離でのガチの斬りあいはかなりキツかった。ま、これくらいやれんようではMorag Tongに入る資格無しということか。Morag Tongがプロの集団ってことがわかるな。
 仕事が終わった後は早々に退散する。ってか、大勢見ているのに『The Black Grove』みたいな誰にも見られず殺るってのはちと無茶だ。案の定店の空気が悪くなっちまったぜ・・・。


 歩いていたら通報されたらしく(そりゃーなー)Ordinatorが駆けつけてきた。通常なら牢屋に行くか逮捕に抵抗するか罰金を支払うかというところで、俺も身構えたが、俺が持っていたWritを見ると、「あーMorag Tongの人か」と納得して、Writと引き換えに解放してくれた。なるほど、だからWritを持っていなくちゃならないのか。


 ぶらぶらする理由も無いので、早速Enoさんに報告する。

「成功したのだね? そうなら、Morag Tongに入ることができよう」
「仰せの通りにいたしました。入会します」
「Feruren Oranは死んだのだね? ならば、Yui-Liよ、Morag Tongへ歓迎しよう。どこの支部のMorag TongのMasterも、Writを渡すことが出来るし昇進を申し出ることが出来る。お前が腕を上げたら、私から特別な任務をあげよう。ああ、そうそう。Sanguine Enterpriseのアミュレットというものがあってね、Webspinnerの糸の一条なんだ。私はすでにこの糸を持ってるんだが、他の糸を見つけることもあるだろう。見つけたら、私に持っておいで」
「はい。あ、そういえばそんな銘のベルト持ってますんで、今度また持ってきます。ところで、給料とかってどうなってるんですか?」
「任務に成功したらその時渡そう。ああ、君が言ってるのはFeruren Oranのことか。これはテストだからねえ。金になるものはあげられないな」
「じゃあ名前! 二つ名というか、名前が欲しいです!」

 やけに目をキラキラさせて言うので、Enoさんは首をかしげたようだった。

「君にはもうYui-Liという名前があるんじゃないのかね。名前は、親御さんが最初にプレゼントしてくれるものだよ」
「そうならいいんですけれど、市場で売られるために付けられた適当な名前だから好きじゃないんです。Enoさんならもっとカッコイイ名前をつけてくれるんじゃないかって思うんですけれど、駄目ですか」
「そうか、君は奴隷だったのか。まあ、事情のある者がこういう所にはよく集まるからね。次のWritを渡すから、それが終わったらまた来なさい。それまでにふさわしい名前を考えておこう」
「わかりました! ありがとうございます!」

 わーいわーいと喜んでいたら、先輩に呼び止められた。


「やあ、新入り君。ちょっと助けてくれないかい。事に当たって、ビミョーな問題があってねえ」
「どうかしたんですか?」
「偉大なるDaedraのMephala様が成すべきことを教えてくださったんだ。仕事にやる気になってくれたら、Mephala様もお喜びになると思うよ」
「いいですよ、で、仕事ってなんですか?」
「いいねー。Balmoraに住んでるBalyn Omavelっていう同胞のメンバーがいるんだ。彼は・・・仕事を自由に請け負ってしまっていてね、そんで君にどうかなーなんて。これはウチとしてはやっちゃいけないことだし、止めなくちゃいけないんだな。でも、不幸なことに、彼の兄が我々の中でも結構重要なポストについていてね、なんで、あまり他のメンバーの目を引くようなおおっぴらなことをやりたくないんだ。そんなわけで、彼の食事に毒を混ぜて欲しい。食べればすぐ効果がでるからね、是非。ハイ、Treated Bittergreen Petalsだよ。間違って食べないでね」
「わかりました」


 とりあえず、Vivecでやることは終わったので、暗殺とCaiusへの報告のためにBalmoraに帰還する。それにしても、勝手に仕事かあ。Morag Tongは「世のため人のため、House Warのため」が基準で仕事を選ぶので、金を積んでも選定に漏れる依頼もある。そんな依頼を請け負ってるんだろうけれど、そういうのって風紀を乱すんだよな。Huleeyaも言ってたなあ。ウチはDark Brotherhoodとは違うって。


 問題のBalyn Omavelの家は施錠されていたが、中程度の開錠魔法で難なく開くレベル。レベル100とかの鍵じゃなくて良かった。でも、いざという時のためにエンチャントした開錠魔法レベル100対応のアミュレット作ろうかなー。


 人目を避けてするりと侵入すると、中には誰も居らず。
 さて、この毒草をどこに仕込もうか、そのままだとアレだよなー、なんて考えていると、鍋にまだシチューが残っていた。ふむ。これなら混ぜてもバレないだろう。一口食べて何かおかしいと思っても、即効性なので気付いた時には手遅れである。


 後日、Balyn Omavel死亡の報がBalmoraに流れた。
 死因は食中毒。間違って毒草をシチューに混ぜたのが原因と見られる、だそうな。当局は安易な薬草摘みに注意を促している。


 その足でCaiusに報告する。しかし、いつになったらNerevarineとか調べてる理由、教えてくれるんだろうか。

「報告を受け取ったよ。Huleeyaと『Progress of Truth』の写しを作ろう。これを読んで考える時間をくれ。それまでは、君をJourneymanに昇進させよう。これからも仕事に励むように。あと、ここに200Drakeあるから、新しい靴を買うなりしてのんびりしなさい。もしくはギルドの仕事をいくらかこなしたり、他のフリーランスの仕事に行ったり、どこかに行くなり、トレーニングでも受けるなりすると良い。それで、そろそろだと思って十分休んだら、戻ってきなさい。新しい任務を授けよう」


 Caiusは早速、資料あさりに取り掛かったので、邪魔をせずに退散することにした。
 今一Bladesに関して不審に思う部分も無いではないが、自由にのんびりあちこちを歩きまわれるので、一応、釈放してくれた皇帝とかいうのには感謝すべきなんだろうか。
 さて、次は何をしよう。暗殺にも行きたいし、巡礼でいろいろな場所に行ってみるのもいいな。メイジギルドもRanis師以外はフツーの仕事もくれるだろうし。しばらくは戻ってこなくても大丈夫みたいだから、その間に色々な所に行って、色々なものを見て回りたいな。

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(2008.6.1)