お届けものは何ですか

 Caiusは本を調べなくちゃならないし、内容も濃い本だけに時間がかかりそうだったので、この間にあちこち出かけてみることにした。


 Pelagiad付近の洞窟にメチャ腕の立つ密売人がいて、最初に行った時は命からがら逃げてきたのだが、かなり腕も良くなったので成敗することにした。何かお宝ないかなーなんて物色していると、チェストから銀のボウルが音を立てて落ちた。拾い上げると、特別な品らしく、『East Empire CompanyからArmond Beluelleへ、会社の特使を支え、その勇気に報いて感謝を込めて贈る』と書かれている。ふーん、面白そう。


 早速Pelagiadで聞き込みをしてみると、その名前に心当たりのある人物がおり、Piernette BeluelleというBretonの女性が、Pelagiadの東、Hairan湖を渡ったところにあるDren Plantationの東で農業を営んでいるという情報をゲットした。彼女の友達のYgfaがここでヒーラーとして働いていて、もっと詳しいことを教えてくれるらしい。


 一応俺はTempleの人間なので入ってきたときはちょっと嫌そうな顔をしたのだが、Beluelleの名前が入ったボウルを見つけたと言って見せてみると、格好を崩して応対してくれた。

「ええ、Piernette Beluelleは私の友達で、持ってたボウルを盗まれてしまったの。これは同じものに違いないわね。Piernetteのとこまで行って話してくれないかしら。一番いい道筋としてはVivecのForeign Quarterの北の入り口の橋から出発して、そこの東から西に池を通る縄の橋があるからそこを東に抜けて、道なりに北に行くとNileraの農場が左手に見えるから、そこの北隣の家がPiernetteの農場よ」

 ちなみにこの説明、英語が苦手な中の人には原文ママの文章が非常にわかりにくく、東に行くところでうっかり西に抜けてしまい、家を探し当てるまで結構迷走した。


 ここが件の家。Vivec周辺は割と緑が多い豊かな土地なので、農場が多いみたいだ。


 早速お邪魔して、ボウルのことについて聞いてみると、かなりびっくりしたみたいだ。

「失くした銀のボウルですって? 夫に贈られた銀のボウルが最近盗まれてしまいまして。何かご存知なんですか?」
「いえ、偶然にもこのボウルを見つけまして」

 Piernetteは驚いた顔で事情を説明した。

「そのボウルは私がFort Pelagiadの友人を訪ねている時に家から盗まれてしまいましたの。私の夫は――Argoniaで軍の公務員として仕えておりまして、East Empire Companyの商人から感謝の印として受け取ったものなのです。夫の仕事は特使をエスコートして野盗から守ることでした。けれど、野盗を取り逃がしてしまいまして。それで・・・ボウルをどうしたいのですか?」
「いえ、どうぞどうぞ」

 薬の行商でそれなりにお金はあるし、これ以上、一間の家で暮らしているようなつましい生活をしている農場の人から搾り取るっていうのもアレだ。元々は好奇心だし、それが満たされたんだから良しとする。

「本当にありがとうございます。私と夫にとって価値のあるものなんです。でもごめんなさい、私は貧乏な農民に過ぎませんし、これに報いるには少ししか持ち合わせが。けれど、ここで何年も暮らしていて、夫と私も沢山友人ができました。恐らくは、ものを買う時にベストな価格を引き出すちょっとしたコツをお教えできるかと。それに、Fort Pelagiadの友人のことはご存知ですか? YgfaはヒーラーでImperial CultのAdeptですの。彼女はImperial Cultに入信させようとするかもしれませんが、悪くない話ですよ」
「ありがとうございます」

 そういって、商売のことをちょこっと教えてくれた。それにしても、うーん、帝国教団かー。内偵すべき事柄なんて今のところ無いから、別に触らなくてもいいか。


 家を辞して道なりにぷらぷらしていると、Guarを連れた行商人っぽい人に出会った。どうやら立ち往生していたらしく、俺を見て渡りに船な顔をして、自分はTeris Raledranという者だと名乗って話しかけてきた。
 
「失礼ですが、ちょっと雇われてみませんか。Rollieと私のことについてなんですが」
「なんでしょう」
「ええ。Rollieと私はVivecに服屋のAgrippia Herreniaのところに服の荷物を届けにVivecに向かっている最中なんです。ええ、それはもう本当にあなたが見たことのないような綺麗な服なんですよ・・・興味がわいてきましたか? ええ、そうなんですが、最近Vivecへの道も物騒になってきてしまいまして。我々をエスコートして頂けませんでしょうか? Rollieと私にとってもいいことですし、それなりの額を支払いますよ」

 ふむ。Vivecに行くついでに暗殺と巡礼をするのも悪くないな。お金も貰えるんだから、特に断る理由も無い。

「わかりました。Vivecまでのお二方の道程を手助けしましょう」
「なんていい人でしょう! Rollie、この国にもまだ良い人はいるもんだね! Rollieは年を取って悲観しがちになってるけどね、助けてくれる人もいるもんだねえ! Vivecについたら、報酬を払いましょう。100Septimを考えています。では、三人で行きましょうか」
「RollieってこのGuarなんですか?」
「ええ、知りうる限りでは一番頭がいいGuarです。この子と私で何年も一緒にやっていましてね。ええ、喧嘩もしましたし、時にはかぶりとちょっと噛まれたかな。でも、いつも一心同体みたいな感じなんだ」


 近辺はまばらに人家があるので、左程危険とは思えないのだが、念には念を入れて、ということなのだろう。最近物騒になってきたのは本当のことだからな。先行して野生動物が襲ってこないか辺りを伺いつつVivecまでの道程を歩く。


 Rollieは何も言わないけれど、目をキラキラさせて興味津々で俺のことを見つめている。撫でてやるととても喜んだ。非常に行儀のいいGuarだ。
 それからしばらく歩き、もうそろそろVivecの街が見えるというところで、Terisさんは俺を呼び止めた。


「ああ、Yui-Li。もうそろそろ街なんですが、GuarのRollieのような大きな動物は街の中に入れないことになっているのです。全く、この子はとっても人懐っこいのに、けしからんことだねえ、Rollie? ともかく、ここから、私と貴方二人でAgrippniaの元まで行かなくてはなりません」

 それは残念だな。近くの農場の人に預けて、荷物を背負ってTerisさんは俺とVivecまで行くことにした。


 結論から言って、道中は全く平和。野盗とかも出なかったしな。


 服屋は地下にあるので、そこまで案内した。

「オーケー、Yui-Li、ここでいいです。助けてくれてありがとう、Rollieも街に入れたらありがとうと言うでしょうけれど。誰かに助けてくれたことを話したくてたまりません。旅はとても楽しかったです。何日もあの子は話したがるでしょうね。あ、いけない、お金お金」

 とまあ、そんな会話をしながら報酬を貰って、そこでTerisさんとはお別れした。いい人だったから、成功するといいなあ。
 

 ここからは俺の仕事。
 船に乗ってRedoranの居住区に行き、階段上がるのは面倒くさいので浮遊魔法でPrazaに入る。


「こんにちは、死をお届けにあがりました」


 Toris Sarenは顔の利く名士。俺を見るなり、Morag Tongだと看破して襲い掛かってきた。


 大きな家なので家族もいるようだが、手出し無用と言われている。余計なことはせずに、俺の姿を見られる前に帰るとする。


 巡礼は、Temple地区に三箇所ほど固まっているので楽チン。『The Pilgrim's Path』を読むに、Ministy of Truthが月Baar Dauなのか。狂神Sheogorathも「Vivecの街がムカついたからやった。反省は全くしていない」といってあんなもん落とすなんてなあ。まあ、神の言動を人が理解しようとしても無駄だし、狂ってるなら尚更だな。


 近くに立ってるおねーさんにポーションを売ってもらって(ちなみにこのおねーさんはステータス回復の魔法も売ってるのでResote Strengthだけでも買っておくといいかも)早速お供えして、碑文を読んでみる。なになに、『勇気を称えよ:Load Vivecの勇気に感謝いたします。危険を避けず、臆病で手をこまねくという仮面の影に隠れず、勇敢な行いに幸あらんことを』と、碑文を読んだらLevitateの強力な魔法が俺にかけられた。うわ、普通に走るより早いぞこれ。


 えーと、次は宮殿か。意外に質素な扉だな。Prazaの扉みたいなもんかと思ったんだが。えーと、全ての人を思って100ゴールドを寄付、だったな。ちゃりーんとコインを置いて、碑文を読んでみる。『寛容を称えよ:Load Vivecの寛容に感謝いたします。無駄に財を溜め、盗むこともせず、宝を無闇に追いかけません。しかし、喜んで家の暖炉の前で分け合いましょう』・・・要するに目先の利益を追いかけてケチったり悪いことをして財を溜めるなってことか。


 次はその地下の、Puzzle Canalに向かう。
 内部は、北から南に抜ける水路があるように見えるのだが、実は南についている扉は魔法がかけられていて、そこを抜けると、気付いたら違う階層の扉の前にいた、という仕掛けになっている。ついでに言うと、南に抜ける扉は存在しない。
 散々迷ったのだが、第三層の水路と水路を繋ぐトンネルの真ん中に、中央への扉があった。うん、中の人は正しい順路で水路を抜けると正しい場所に行き着くはず! とバカな発想をしたんだな・・・ここはドラクエ5の試練の洞窟じゃねえっての。


 奥に向かう回廊には、障壁があって進むことが出来ない。ここで何かをすると開くらしい。


 むむ、と思ったがヒントはこの石柱に書かれていた。『彼の人の栄光に満ちた水を吸い込め。さすれば、道は開かれん』・・・って、溺れろってことか。


 意を決して飛び込んだ。最初は何ともないが、次第に息が苦しくなってきた。死んだら元も子も無いので浅い所を選んだが、次第に意識も朦朧としてきた。まだ、まだなのだろうか・・・ともうそろそろ限界に近づいてきたその時、一瞬、視界が黒く染まり、何か大きなものが動く音がした。


 俺は慌てて、力を振り絞って水面に上がって新鮮な空気を吸い込んだ。障壁が取り払われ通路が出来ているのが見えたが、何せ危うく死ぬところだったので、Healthも真っ赤である。すぐには動く気になれず、通路に突っ伏してしばらくぜいぜい息をした。少し落ち着くと回復魔法をかけたりして気力を取り戻せたので、服も乾かしてから奥に向かった。※MorrowindのArgonianはOblivionと違って溺れる。


 階段を上がると、Dremoraが一人。傍のチェストには銀の長剣が入っていた。襲ってくる気配は無い。
 えーと、故事によれば、VivecはMehrunes Dagonとの戦いで、丸腰のDremora Loadに剣をあげたんだっけ。Dremoraは騎士道を重んずるので感嘆したらしい。本では、Krazzt(このDremoraさんね)に礼儀正しく話しかけて銀の剣を受け取らせるといいらしい。早速、チェストから一本拝借して礼儀正しく名乗ってみた。

「巡礼に来たのだな? Silver Logswordを差し出すが良い」
「これですね?」
「見ての通り、我は武器を持っておらぬ。しかし、貴様は勇敢で立派な者なのだろう」

 Krazztは溜息を吐いて、続けた。

「貴様の持っている長剣を渡せば、貴様を下す機会も得られような?」

 む、まさか決闘なのか? しかしここで断るわけにもいかんからな。俺は銀の剣を両手で捧げ持つようにし、どうぞ、と、Krazztに渡した。

「宜しい、この剣を受け取ろう。礼を言うぞ、Yui-Li。貴様は礼儀の何たるかを知っているようだ。聖地の碑文を読んで巡礼を果たすが良い」

 なるほど、反撃を恐れず最後まで礼儀正しい行動が取れるかテストしていたのか。Dremoraって余程じゃないと普通の人間には太刀打ちできないからな。素手でも怖いしそれが剣をもってりゃ尚更だし、そこで拒否するのなら礼節を示せてないってことか。えーと、『礼儀を称えよ:Load Vivecの礼儀に感謝いたします。嫌なことや冷たい言葉を投げかけません。たとえ敵であろうとも、尊敬をもって話しかけます。節度を踏まえた言葉は怒りを追いやるでしょう』か。人格者になれっつーことだな。
 まあ、当たり前だがどんな宗教も基本的には人の理性的な側面を促進させることを言うものだ。だからこそTempleはMorrowindで受け入れられているんだろう。でも、高僧は目先の利益を追いかけて肥え太り、Ordinatorは敵に冷酷な仕打ちをしているという。反体制派司祭はこういう碑文に刻まれているような、基本的な信条を忘れてしまったTempleの人間が嫌でたまらないんだろうな。Tribunalのことも告発してるけど、善い行いは否定していないから、最初は間違っていたとしても、行いそのものは碑文のように、立派なんだろうな。少しフクザツだ。

戻る      進む

(2008.6.6)