夜を纏う者


 Odaishah YasalmibaalにWritを届けるため、Morrowindの東側に出張中。
 まず、メイジギルドの転送サービスでSadrith Moraに行く。そこから船を乗り継いでTel Mora→Tel Aruhnまで行き(何でSadrith MoraからAruhnまで直接行く船便が無いんだか)、そこからは徒歩。標的は本島の、南西の方角にある小さな半島にテントを張って潜伏しているという。ちなみに、遠くに見えるのがTelvanniの魔術師たちが住まう塔。幹部が住んでいる上階に上がる階段は無いので、会いに行くには浮遊魔法かポーションが必要になる。つまり、神秘魔法か錬金術が使えないとかなり不便だ。市販のポーションは無駄にかさばって困る。


 途中で食料を買い込み、のんびり景色でも見ながら歩く。Argonianは泳ぎが得意で、俺も例に漏れないが、水中を進むと視界が悪い上に魚だのDreughだのに食いつかれる。真珠の採集するわけでなし、仕事前に疲れたくない。


 しばらく歩くと、話の通り小さな半島にテントが建っているのが見えてきた。あれが標的の潜伏先か。


 それじゃー、まあ。やりますか。


 ごめんくださーい。




 標的は大した装備もせず、一人だけだったので割りと簡単だった。とはいえ、この剣の切れ味のお陰によるところが大きい。自分ももっと精進しよう。


 RecallでBalmoraに戻って、ギルドを経由してArenaの本部に向かった。Enoさんに会いに行く前に、首尾よく毒殺が成功したことをTarosさんに告げると、マスク越しににこにこ笑って祭壇を示した。

「よくやったね。Mephala様が君と直接話したいとお望みだ。凄く栄誉なことだよ。さあ、彼女の祭壇に向かってくれたまえ」

 えーと、MephalaってMorag Tongが祀ってるDaedra Loadだったっけ。うわ、つまり神様? 神様と話したことなんて無いしどうしようなんてドキドキしながら心の中でMephala様を呼んでみると、気配が祭壇の周囲に満ちて、女の声が周囲に響き渡った。


『よくやりましたね、定命の者よ。Morag Tongを守るためには必要なことなのです。まあ、仕事が大っぴらになるというのも一興ですけれどね。それもまた楽しみなのです』

 女神(ついてるもんついてるらしいので正確には女神とは言えないかもしれないが)の声には楽しげな色が混じっていた。MephalaはTempleでも崇められてるんだが、なかなか癖のある神様だなあ。

『この指環を取りなさい、定命の者よ。どんなに陽の光が照らそうとも、速さと他から隠れる力を与えます。さあ、お行きなさい』

 そう言うと、祭壇にRing of Khajiitという指環が現れ、気配は消えた。うわー、凄いなー。俺ってカミサマとお話しちゃったよ。しかも何だか高そうな指環・・・というか本当に高いんだけれど。評価額18,000だし。使うと透明になって、しかも足が速くなるらしい。周囲を見回すと、うんうんと周りの先輩たちも頷いている。俺が取ってもいいらしい。ええーいいのー? 俺がやったのなんか鍋に毒混ぜてきただけなのにー、と思いつつも、やっぱり良いものが貰えるのは嬉しい。慎重に、そっと手に取った。
 ちなみにこの指環、逸話があって、濫用した者を敵の眼前で見捨てて姿を眩ませたらしい。便利なだけに、俺も気をつけよう。幻術の勉強もしっかりせねば。


 WritをOdaishah YasalmibaalとToris Sarernに送ったことを報告すると、厳しそうな顔つきのEnoさんは少し微笑んで包みを渡してくれた。ついでにBalmoraのメイジギルドに置いてあったSanguineのベルトを渡すと、Enoさんはもっと機嫌が良くなったようだ。良かった良かった。
 ベルトを机に置くと、Enoさんは俺を見た。

「お前は名前が欲しいと言っていたな。それで、考えておくと約束した」
「はい」
「Morag Tongらしい名で、折角だからArgonianらしくもあるほうがいいだろう。我らの所業は決して人には知られず、夜の領域に身を置くもの。故に、In-The-Nightという名を考えてみたが、どうだ」
「凄くいい名前です、本当にありがとうございます!」

 種族的に表情があまり変わらないので笑顔が伝わりにくいのがもどかしかったが、名前をつけてもらえて本当に嬉しかったのでわーいわーいとはしゃぎまくったら、「こらこら落ち着きなさい」と言われてしまった。でも本当に嬉しいなあ。Yui-Liで表の世界は通ってるし今更変更するのも混乱するだろうから、こっちの名前は身内だけで使うものだけれど、でも嬉しいなあ。何だか、本当に自由になったって気がする。


 Morag Tongの本部からBalmoraに戻って、ニヤニヤしながらその辺を散策していると、一人の女性に出会った。

「こんにちは、旅の方! ねえ、助けてくれないかしら? 道に迷ってしまって、探している聖地を見失ってしまったの」
「聖地?」
「そう。Kummuの野ね。聖地への巡礼に行きたいのだけれど、迷ってしまいまして。貴方ならわかるんじゃないかしら? 多分私よりこの辺のこと知ってそうだし。そうね、タダとは言わないわ。150Septimでどうかしら」
「えー、俺も巡礼してる途中で、Kummuには行ったことが無くて。いいですよ、一緒に行きましょう。お金の分は働きますよ」
「本当に助かったわ。Kummuは湖の近くにあるらしいの。わくわくするわ。そこには農場があって巡礼者の人は時折そこに立ち寄って疲れた足を休めるそうよ」
「へえー、いい人なんですねえ」


 お金もらえてついでに巡礼も済ませられるので願ったり叶ったり。それに、こんな街外れもいいとこの場所に寸鉄も帯びていないような人を見捨てておくのも人としてどうかと。地図を広げると、北東の方角にKummuはあるらしい。このまま道なりに進めばPelagiadとBalmora間の街道に出るので、早速エスコートする。


 街道に出たら北に進み、道の分岐点をBalmora方向に行かず、Amaya湖の方に向かう。ここまでくれば、大丈夫。あとは湖沿いに進むだけ。Nevrasa Dralorさんは穏やかないい人だ。俺とは違って、Templeを心から愛してるって感じがするし、とっても心優しい。信者の鑑だなあ。


 しばらく道沿いに歩いていくと、三面石の柱が建っているのが見えた。傍には花が植えられている。

「ありがとうね、Yui-Liさん。これがお約束したものです。無事な旅路をお祈りしておりますわ」
「いえいえ、こちらこそ。気をつけてお帰り下さいね」

 Nevrasaさんはその辺を見てからお祈りするみたいだったので、先に俺が祈っておくことにした。えーと。Muckを供えるんだったな。『謙遜を称えよ。Load Vivecの寛容に感謝いたします。横柄で慢心な振る舞いをいたしません。この素晴らしい世界の中に自分がいる場所があることを理解し、感謝いたします』・・・か。


 これが巡礼ガイドにもあったAlofさんの農場。お邪魔してみると、快く水を飲ませてくれた。ええ人や。質素な佇まいだし、ほとんど無償で巡礼の人を休めてあげたりしてるんだろうなあ。こうしてみると、TempleがMorrowindの人にとって心のより所になってるって感じがする。Nevrasaさんのようにね。でも、Templeも上のほうは問題があるらしいし、帝国教団との軋轢があるんだよなあ。難しい話だ。

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(2008.6.10)