巫女の愚痴


 首尾よくBulfimさんの治療が上手くいったことを報告するため寺院に向かう。今日はBlightの嵐がふいてなくていい天気だ。俺はピーカンよりも曇ってて適度に湿り気が多いのが好きなのだ。晴れの日も嫌いではないが。


 帰ってきた俺を見て、早速師が寄ってきた。

「Bulfim gra-Shurarzに慈悲を示せたかね?」
「ええ。治って喜んでましたよ」
「君はBulfim gra-Shurarzを治療したことで慈悲があることを証明して見せたわけだ。この本に興味は湧かないかと思ってね。慈悲の見返りについて大切なことを学べるぞ。それで、ポーションは返却できるかね?」
「はーい」

 山に近いせいか、Blightの嵐が吹きまくるAld'ruhnでは一本でも多いほうがいいし、素直に返却する。それにしても、本を貰ったってことは、もっと学べってことかな。本を読むのは嫌いじゃないけどさ。タイトルは『The Four Suitors Benitah』かー。


 住まいなんだが、幸い俺はメイジギルド員なので、ここの師に申し出て部屋を安く貸してもらえた。その代わり、仕事を頼むこともあるだろうから、その時はちゃんと顔を出すように申し付けられた。Ranis師よりはまとも…だといいなあ。
 Temple? まあ、ベッドを貸してくれないこともないけど、Dunmerばっかだからちょっと居づらいんだよなあ。
 服も新調したし、頑張ろう。
 さて、住むところも決まったので、Morag Tongの事務所に挨拶に行く。
 事務所はSkarの中にある。巨大な蟹の殻の中に家がいくつかあるんだが、Redoranの貴族が多い。高級住宅街ってわけだ。


 Balmoraと同じく、「いかにも」な感じぷんぷんだなあ。何で本部は怪しくないんだろう。本部以外の支部は「Morag Tongの顔」だから…依頼に来る人って、何ていうか…「そういうもの」を期待してるのかなあ。


「こんにちはー。In-The-Nightと言います。Templeのお仕事でBalmoraからこっちに引っ越してくることになりましたので、しばらくお世話になると思います。よろしくお願いします」

 ここのMasterであるGoren AndarysさんはDunmer特有の気難しそうな顔を少し緩めて歓迎してくれた。

「こちらこそよろしく、兄弟よ。しかしまあ、Templeか。よその国ではともかくこの国ではMorag Tongは公的な身分だよ。他所にきちんとした身分を作らなくともやってけるのにねえ」
「あ、いや。魔法なども学びたいなーと思いまして。メイジギルドにもお世話になってます。住所もここのメイジギルドですので、何かありましたらYui-Li宛によろしくお願いします」
「ああ、そうかいそうかい。そういえばArgonianの新人が入ったって噂があったね。Argonianは珍しいから覚えてるよ。君だったのか」
「はい」

 そんなこんなでしばらくのほほんとAld'ruhnについて教えてもらっていたが、自然と仕事の話になっていった。

「しかしまあ、私は君の仕事の程を見ていないわけだ。どうだね。Writを開けてみないかね?」

 一瞬考えたが、急な仕事も無いので、大丈夫だと返事をした。

「Sarayn SadusのWritとEthal Seloth、Idroso VenduのWritがある」

 俺が二つの巻物を確認すると、師は続けた。

「そっちはSarayn Sadusに対する訴えだな。Nightよ、君に割り当てることにした。そいつは他のならず者と一緒にZaintirariに身を潜めているのだ。そこは君が名誉を持って暗殺したOdaishah Yasalmibaalのテントの近くにある。君の地図にErabenimsun Campの位置をつけておこう。ここから、枯れ木に囲まれた蒸気が出てくる穴が見えてくるまで北西に行くこと。Zaintirariはこの穴の北にあるが、岩に隠れている。上手に探せ、Nightよ」
「わかりました。で、こっちの二人のほうは? 一人ずつじゃないんですよね」
「君が暗殺するのは、一人ではなく二人だ。Ethal Selothと、Idroso Vendu。彼女たちは殺人を犯したのだが、Telvanniの者なのだ。Dukeは何もしようとせん。被害者の遺族は、制裁を下すためにMorag Tongに惜しみなく支払っているというわけだ。VivecのTelvanni Plazaの、Temporary Housingを探し出せ。迅速且つ正確にな」
「はい。一方がVivecなので、まずSarayn Sadusを片付けてからVivecに行って仕事して、ArenaのEnoさんに報告したいと思います」
「頼んだぞ」


 というわけで、まずはSarayn Sadusを暗殺する。何をやったかは知らないが、ならず者と親しい連中だ。お察しください、だな。


 Odaishah Yasalmibaalを暗殺したときの近くなんだったら、その時に貰いたかったなー、というのは野暮だなあ。


 Tel Fryを通り過ぎて、本島まで歩く。


 おっと、潮が引いた際に取り残されたか、ぴちぴち跳ねてる魚を発見。早速さばいて焼き魚にした。


 キャンプに着く頃には日もすっかり暮れていた。洞窟を見つけるのは明日にしたほうが良さそうだ。AshlanderのClanfriendなので、どこかに泊めてもらえるか聞いてみると、Wise Womanのとこなら寝床が空いてるよ、と教えてもらった。
 しかし、みんな顔が変に暗いなあ。


 ほこほことあったかいお茶をWise WomanのManiraiさんから頂きつつ、一体どうしてこんなに変な空気が漂っているのか聞いてみると、「実はねー」とひそひそ声で教えてくれた。

「警告するわ。AshkhanのUlath-Palと取り巻きには注意しなさい。あの人たち、みんなよそ者が嫌いだし、探し出して殺すことがこの上なく好きなのよ。しきたりやもてなしのことなんて気をかけていないし、丸腰の男女、子供を殺すことさえ厭わない。悪人よ、リーダーとしては最悪ね。あいつらには気をつけなさい」

 それはひどいですね、と言うと、溜まっていた鬱憤が一気に出たのか、色んなことを教えてくれた。Wise Womanはそれなりに高い地位にあるはずなんだが、きっとManiraiさんが諫言しても、平気のへの座なんだろうなあ。

「Ulath-Palはいつもテントにいて、護衛のGulakhanのAhazに守られています。私はか弱い女性に過ぎませんし、あなたもそれをよく存じていると思いますよ。でも、私だったら二人のうち弱いほうのAhazを最初に殺して、ついでに、もし秘密の魔法や力があったら、二人いっぺんにかかられても、それを使って身を守っておきます」
「Ahazってどんな人?」
「AhazはUlath-Palが信頼している護衛です。Ashu-Ahhe――強大な戦士で――Erabenimsunの中で最も強く経験豊富な戦士なんですが、Ashu-Ahheほど強くなく、スキルもありません。彼はエンチャントされた鎧とブーツを着ているので、Erabenimsunの人たちは誰も彼を倒せないのですよ――Ulath-Palでさえね」

 流石に言い過ぎたと思ったのか、そこで言葉を切って、周囲を見回した。聞き耳を立てている者がいないと分かると、ほっとしたように胸をなでおろしたが…Clanfriendとはいえ部外者の俺にこんな内部事情を話すなんて、よっぽど腹に据えかねることがあったんだろうな。
 「見つからないよう、明日は早くに出発したほうがいいわ」という親切な忠告をありがたく受け取って、貸してくれた毛布に包まった。
 Nerevarineだなんて突拍子も無いことを言った俺を、笑ったり怒ったりしなかったSulさんのことを思い出した。試練は出したけど、ちゃんとClanfriendとして認めてくれたSulさんはよく出来た人なんだよな。今更なんだが、身に染みて実感した。そういえば、Sulさんたち元気かな。予言は手に入れたけど、怖くて決心がつかなかったからな…。
 もやもやした考えを振り払うように頭を左右に振ると、毛布をかぶった。今は仕事のことだけ考えよう。


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(2008.11.23)