人を呪わば

「Ethal SelothとIdoro Venduに制裁を下したことは聞いた。さあ、受け取れ。Writの名誉を守ったことだしな」


 早速Arenaの地下の本部に行って報告すると、Enoさんは二人分のお金をくれた。やっぱ、一人500が相場なんだなあ。うーん。重いのやら、軽いのやら。


 たまにはゆっくりしていきんさいと言われたので、この間にあれこれ教えてもらうことにした。
 教えてもらった幻術魔法の修行をしたり。幻術は破壊魔法と違ってモノを壊さないから撃ちまくっても心配ない。人に当てるとまずいが。
 俺は戦闘では刀剣がメインで飛び道具がサブ、魔法は回復くらいしか使わない。でも、幻術はMorag Tongの推奨スキルだし、身を隠したり人の心を操れたりも出来る。上手く使いこなせば戦闘でかなり役に立つのだ。あらかじめ透明になっておいて、周囲の状況を偵察したり、こっそり相手の間合いに忍び寄ったり、戦闘を回避したりとか。


 皆でMephala様の祭壇にお祈りをしたりもした。


 居心地がいいし、あれこれ色んなことを教えてくれるので(Skoomaをキメるのは断ったけど!)ついつい一日中いついてしまいそうになるんだが、あまりだらだらしているのもアレなので、街に出かけてみることにした。ターゲットの率も普通の街よりは高いから、地理も覚えておいたほうがいいわけだし。
 というわけで、短剣一本を腰に挿し、身軽な装いで散歩することにした。今は真昼間だから人も多いし、散歩程度ならあの聖剣のようなものものしい武器じゃなくても大丈夫だろう。


 てくてく歩いて、訪ねてみたのは、Arenaの隣のTelvanni地区。「The Lizard's Head」なんていう食堂兼宿屋があったので、入ってみた。落ち着いた雰囲気の店だなあ。テキトーにご飯と飲み物を注文してちびちび食べてたら、Nordの男に話しかけられた。

「よう、この疲れた年寄りの海の荒くれにMazteを一杯おごってくれんかね?」
「いいけど?」


 MazteってのはMorrowindの地酒だ。そんなに高いものじゃなし、お金に余裕はあるので一杯おごることにした。女将さんから一杯貰って、おっさんに渡すと、美味そうにごくごく飲み始めた。流石Nord、いい飲みっぷりだなあ。俺はそう沢山飲みたいってわけじゃないし、最近色々狙われてるから、あまり飲まないんだよな。こういう豪快な飲みっぷりを披露してくれる人ってのは、ちょっと羨ましい。
 おっさんが一息ついたところで、席に戻ったのだが、「お返しにいい話をしてやる」とおっさんも席についた。

「Mazteありがとよ。こういう気前の良さを見せてくれたからには、何かお返しってものをしなきゃならん。Nordがかつてはこの国を支配してたことは知ってるか? Dark ElfたちがNix Houndにキャンプファイアのように群がっていたような頃のことは? 第一紀の頃、Harald Hand-Freeの息子が、Skyrim征服の際、Tamrielの北海岸を支配していた頃のことは? はは、賭けてもいいが、Haraldの庶子の、Olmgerd the Outlawが、Nordの君主の息子に相応なように、母なる岩の深くにある墓の船の中に埋葬されていることまでは知るまいよ」
「へえー」
「もちろん、一緒に埋葬されたのがStormkissという銘の武器だ。Stormkissは、エンチャントされたOlmgerdの戦斧でな。この古びた鍵がわかるか? 言いたいこ とはわかるな? 『Stormkiss』だよ。ほら、もってけ。ヒーラーが言うには、Mazteの飲みすぎでな、俺はもう長くないんだそうだ。Skyrimに戻って逝くことにするよ。あんたはまだ先があるからな。ほら、もってけって」
「え? でも…」
「Olmgerdは、昔のDunmerの墓の底に埋められたそうだ。詩人の言い伝えでは、埋められたのはVvardenfellの南海岸にある長い指のような島らしいがな。半島の西海岸に面した、近くの小さな島だそうだDaedraの遺跡のZaintirarisとTel Branoraの間のどこかにあるらしい。神のお導きをってやつだな。Mazteもありがとよ」
「鍵ありがとう。探してみるよ」

 おっさん、Ennbjofさんって言うんだが、その人は俺に古びて錆の浮いた鍵を持たせると、Mazteを飲み干して、手を振って宿を出て行った。あのおっさん、元バイキングか何かだったのかな。時間があったら探してみよう。何千年も前の墓が手付かずで残されてることをギルドに報告すれば、きっと喜ばれるだろうし。

 いい気分で、食堂を出る前にトイレに行こうと思ったのだが、うっかり間違って倉庫のドアを開けてしまった。ふと見ると、Argonianが一人いるのが見えた。


 動く気配が無いので、不思議に思って近寄ってみると…。






 あー、だからこのお店の名前が「トカゲの頭」って…。

ギャアアアアアアアアア!!!!!(゜д゜;)




(しばらくお待ちください)





 何をどう歩いたのか覚えていないが、気がつくとTelvanni地区とはArenaを挟んで正反対の、Redoran地区にいた。
 人を何人も殺しておいて首が怖いとは笑える話かもしれないが、あれには不意をつかれた…これだからTelvanniは。青い顔でその辺の店に入って水のボトルを買い、ぐいぐい飲みながら、ついでにレア本やソウルジェムもいくつか物色していたのだが、出て行こうとしたところで店のオヤジさんに呼び止められた。


「この哀れな商人を助ける気はないかね? うちの価格は順当なんだが、どうもツキが回ってこなくてね」
「ツキ? それってどういうことですか?」

 Balen Andranoさんは、話を聞いてくれる気があると見るや、店の隅っこのほうに連れて行って、俺に愚痴った。

「最近どうにも不景気でね。以前みたいに荷物がきちんと届かなくなってるんだ。だから価格が跳ね上がってしまってね。しかし、Foreign QuarterにJeanneってのがいるんだが、彼女は儲かっててね。客の入りもいいし。そこで、彼女の運を変えたいんだ。うちの商売分まで取っちゃってねえ」
「え? でも運を変えるたって…」
「わかってるさ。方法はある。君にその気があればね。最近あるものを手に入れてね、どうも、魔法がかかってるもののようなんだ。大昔に死んだDwarfの骨でね。Jeanneの店のしかるべき場所に置けば、彼女に一発食らわせることができるってわけだ」

 どうしようかなー、と迷ったが、とりあえず引き受けてみることにした。殺すまではしないつもりみたいだし。

「協力に感謝するよ。彼女の寝床の近くのチェストにでも置いておいてくれ。床に就いたら、骨に込められた魔法が発動して、いくらかトラブルをもたらすだろう。そうすれば、私の商売は右肩上がりになる」

 そういって、戸棚から箱を引っ張り出すと、俺に手渡した。ちらっと見たが、中には本当に骨が入っている。こりゃ魔法がかかってなくても、枕元に置いとくだけで呪われそうだな。
 おやじさんの店も、品揃えは悪くなかったんだがなあ…治安が悪くなってるのが地味に効いているのかもしれない。この間も、殺人事件があったんだっけ。


 さて、Jeanneの店は、下層にある。早速客の振りをして偵察してみた。


 ちょっと棚を見てみたが、品揃えも悪くない。それと、店の奥に、プライベートルームの扉があるのを見た。あっちが寝室だな。最低でも一晩は骨があることに気付かれるわけにはいかないので、強行突入してチェストにねじりこむような行為は避けたい。俺も一応Templeの人間なので、店を守ってるOrdinatorとやりあうわけにもいかないし。そういうわけで、客らしく買い物を済ませて夜を待つことにした。


 深夜。店の鍵を開けて中に入る。鍵は甘く、中程度の開錠魔法で簡単に開いた。


 足音を立てずに忍び込むと、Jeanneの寝息が聞こえた。起こさないように慎重に、ベッド脇のチェストまで進んで、そっと開ける。油がよく差されているのか、音はほとんどしなかった。中には何も入っていない。これから何か入れるつもりなのだろうか。単に何もいれず放置してあるだけなのか。後者のほうがオヤジさんには都合がいいんだろうが…。チェストの中に骨を入れると、さっさと店を後にした。


 翌朝、Balenさんのところに報告しに行くと、とても喜んでくれた。

「やったんだな? 素晴らしい! 今に商売が上向くだろうよ。友よ、ありがとう。これが約束したお礼だ。相手をぐっすりとお休みさせるものだ、君に似合うんじゃないかな?」

 そう行って、Sleep Amuletを渡してくれた。相手を疲れさせて集中力を乱すものみたいだな。簡単にお礼を言うと、店を出た。
 オヤジさんは喜んでたけれど、実際どうだろう。オヤジさんがJeanneさんをやっかんでたのは、商売が上手いのに加えて、外国人だからかもしれない。それに、本当にJeanneさんが商売上手なら、これくらいのトラブルは何とかしのぐことができるだろう。人を貶めて自分が上になるっていうのも、あまりいい傾向じゃないな。人を呪わばって言うし、長い目で見ると追い落とされるのは、結局オヤジさんの方なのかも。
 でも、入ってくる荷物が少なくなって価格が高騰してるってのは気になるなあ。経済には詳しくないんだが、価格が高騰してるって事は、需要に対して供給が少ないってことだろ? 帝国がどんどん入ってきていることを考えると、供給量や取引は増えててもおかしくは無いんだが、何かそれを滞らせる原因があるはずなんだよなあ…って、やっぱ治安の悪化だよな。好き好んでBlightやCorprusの病がはびこってる島に来たくないだろうし、病に冒されて凶暴化した獣がうろついてるから、道中の安全も保障されなくなっている。あのGuarを連れたおっさんも、Vivecが近い人里だってのにわざわざ俺を雇ったくらいだし。街道が物騒になれば商人も来なくなるから取引が減る。取引が減れば、少ないパイの奪い合いが起きるから、価格は上がるし、オヤジさんみたいな姑息なことをする人も出る。

 原因は明らかだ。俺が何をしなくちゃいけないかもわかってる。でも…。


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(2009.1.16)