エスコートにご用心

 今日もVivecはいい天気。Blightの風もここまでは吹いていない。空気は美味しいし、空は晴れてるし。ならばやることは一つ。


 巨大キノコの上でのんびりご飯食べるのはたまんないよなー。景色は綺麗だし、ここなら獣に襲われる心配もあんまりないし。Ash Zombieどももここまではこれまい。

 ぼーっと遠くを見ながらメシ食って、その後少し昼寝していたら、人の騒ぐ声で目が覚めた。何だろうと思ってみると、DunmerのおっさんがKwamaの幼虫に襲われているらしい。足元をぴょこぴょこ動く虫を何とか踏んづけようとしているが、動きが素早いので上手くいかないようだ。Nix Houndとかの大型の獣よりは弱いが、皮が分厚いので、なまくらの剣でちょこっと叩いたくらいでは切れない。あいつ、弱いのに喧嘩ふっかけてくるんだよなー。もうちょっとScribを見習えばいいんだが。


 キノコから飛び降りると、そのまま走りながら刀を抜き、幼虫をすっぱり一刀両断にした。さすがDaedric製の刀だ、この程度の相手なら難なく切れる。


「怪我とかしてない?」

 闖入してきた黒尽くめのArgonianにDunmerの男は驚いていたが、状況に気がつくと「あ、ああ」と短く返した。どこにも怪我はなさそうだったので、もう一眠りでもするかな、と思って刀を拭っていたら、「助けてくれたことには感謝するが、ほっといてくれ」と冷たいことを言われた。まあ俺はArgonianだからなあ…と思いつつも、街も近いというのにこんなところにたむろしているのが気になった。ここはTelvanni地区の北。Vivecに用事があるか、Vivecで用事を済ませた後だとしても、どうも中途半端な位置だ。

「えー? でもこんなところにいつまでもいたら、獣に嗅ぎ付けられるじゃないかよ。おっさん、見た感じ商人っぽいけど、街に行くなら早く行かないと危ないよ。この辺は人家もあるっていっても、最近治安も悪くなってきたんだからさ」

 おっさんは俺の腰の刀を見たりして何か考えているようだった。何となく立ち去りがたくて、そのままそこにいたら、「随分いい刀だが、冒険者か何かか?」と言われた。そうなんです、と答えたら、おっさんは手を叩いた。

「もしよかったら聞いてくれ。ワシのかつての『護衛』が任務を放り出したどころか、荷物を全て盗んでしまったんだ」
「あ、それでイラついてたんだ。それで? 荷物って、具体的にどういうもの?」
「ああ。荷物は全てRaw Glassだ。もし荷物を取り返し、あのイカれ野郎どもに天誅を与えてくれたら、商売の秘伝というものをいくらか教えてあげよう。将来的に考えれば、かなりの金が貯まることになるぞ。『護衛』の名前は、Alvur HleranとDondirだ。そう遠くには行っていないはずだ。あの腐れ野郎どもはこの辺でたむろっているはずだ。ワシの戦利品を数えながらな! 南東を探してくれたまえ。奴らはそっちの方角に逃げていった」
「わかった。荷物取り戻しにいくよ」
「そうか、ならば早く行ってきたまえ! 全速前進だ!」

 うーん、俺の刀をやけにじろじろ見てたな。まあ、エンチャントはかけてないけど、最高級品のDaedricだしな。Artifactクラスには劣るけど、これ一つ売り払えば一財産築ける代物だ。鉄やスチール製の大量生産品とは格が違う、商人なら興味を持って当然の代物だ。
 DremoraやGolden Saintとかの上級Daedraはバカ高い武器をよく持ってるんだが、奴等の鍛冶屋は一体どうなってんだ。あいつらと戦争だけはしたくねーなー。
 まあ、このおっさんが扱ってるのが最高級の軽装備の原料となるRaw Glassということは、武器防具にもそれなりの造詣はあるんだろう。それに、「そういう刀を持っているのだから、こいつは手練で、金には困ってなさそうだし、商品をガメることもあるまい」と判断されたのかも。
 それにしても、盗人はけしからん奴らだな。まっすぐ逃げて行ったらしいし、どっか根城があるんだろう。

 早速、キノコの上に置いたままの籠やら何やらを回収し、地図を開きつつ南東の方向に足を向けたのだが、Telvanni地区から出ている橋が近くなったところで足を止めた。


「…この先って、昨日探索した場所だったような…」


 レア本もあったんだが、Raw Glassもやけに沢山あったような…。

 ……。

 …………。

 やっべ!(´∀`;)


 うわー! やっちまった!! そーだよ、大量のRaw Glassなんて滅多に手に入らないもんだから、おかしいとは思ってたんだよ! あのオッサンのもんだったんかい!! 洞窟の奴らは全員殺してるから、依頼の半分は達成できてるはずだが、Glass、Glass! まだ売ってなかったはずだ!


 急いでArenaの地下に引き返し、チェストを開けた。


 あったあった。お金に困ったら売ろうと思ってたから、取っておいて幸いだった。
 この緑色に透ける綺麗な鉱石がRaw Glassと呼ばれるものだ。俺はまだ見たことはないんだが、Ebony同様、Morrowindにもいくつか鉱山があるらしい。


「ね、おっさんの言ってたRaw Glassって、これ? 全部で10個あったけれど」

 おっさんは俺からGlassを受け取ると、しげしげ眺めて「間違いない」とホクホク顔で言った。末端価格で一つ200はする代物だ。このおっさんそれなりに商才があるわけだから、全部まとめて売り払ったら1000G以上で取引できるはず。何としても取り戻したかったわけだよなあ。

「うん、ワシのGlassだ。それに、あの愚か者どもも天罰が下った…素晴らしい! 真面目にやってる商人に手を出すとこういう目になるといういい見本だな。さあ、商才のコツというものをいくらか教えようではないか。きっとアンタのためになるだろうよ…」

 そう言って、商売についてあれこれ伝授してくれた。うんうん、Argonianってこういう方面の才能はちょっとアレだからな。とてもタメになったよ。「知識は力なり」とか言うけど、ホントにそうだ。

「ワシはGlassを取り戻せたし、アンタはちょっとばかり賢くなった。悪い商談じゃなかったな。さ、もう行かんとな」

 商人らしい言葉で、おっさんは話を締めくくった。やっぱり、何をするにしても、真面目が一番だよな。

 所変わって、Vivec南。潮の干満で小さな島が顔を出すところにやってきた。


 冒険者と難破船は切っても切り離せない縁がある…ような気がする。今日の息抜き兼冒険はここだ。


 遠くから見た限りでは小さそうに見えたんだが、実際近づいてみるとかなり大きいことが分かる。座礁したか嵐に巻き込まれたかでこうなったんだろうなあ。大きな街も近いというのに、不憫なことだ。ちょっと泳いだらVivec神が助けてくれそうなもんなのに。


 中はスケルトンがお出迎え。さっさと成仏しろい!


 おりゃー! 俺を食うんだったらさっきの骨でも食え!


 無事な積荷を検分すると、何故か枕が16個もあった。枕のほかにもSkoomaがたくさん置いてあったなあ。船員って、甘いものが好きなのかね。Skoomaの空き瓶はデザインが好きだけどさー。
 早速寝床に一部をもふもふと置いてみた。何故か、TarosさんやEnoさんに呆れられた。いいじぇねーかよ。奴隷の頃は枕もクソもない、それって寝床って呼べるのかってくらいボロボロの布きれや板きれを敷いて寝てたんだし。ていうか、そういう敷くもんがあればラッキーだったし。そのお陰でどんな寝床でも文句はないけど、こういう柔らかくてあったかいものに憧れるんだよなあ。


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(2009.2.8)