よい子はまねしてね!

 あれから数日経ち、体調が元通りになった頃、寺院から呼び出しがかかった。まだ服が出来上がっていなかったので、別の服を着て寺院に向かうことにした。


「Acolyteよ? 最近たるんどらんかね?」
「えーと、まあ」

 最近Morag Tongの事務所やメイジギルドでごろごろしていたのは事実なので、素直に認めると、「ならば、君にぴったりの務めがある。体調も良くなっただろうし」と手を振って話を続けた。

「君の信仰を見せるのも務めの一つ、Maar Ganに巡礼しに行かねばならぬ」
「Maar Gan?」
「Maar Ganの神殿に行きたまえ。岩に刻まれた碑文を読み、Vivec様の行動に倣うのだ。もし何か困ったことがあれば傍の僧侶に話しかけたまえ。君を助けてくれよう」
「助け・・・? 何かあるんですか?」
「試練とだけ言おう。まあ行ったら何をすればいいかわかる。今ここで全てを話すことは出来ん。及び腰になっては困るからな」

 師はそれ以上言うと、口を閉ざした。うーん?


 Maar GanにはSilt Striderがあるので早速それに乗って向かうことにする。
 師の話から推測すると、多少は危険を伴うもののようだ。大抵のことなら何とか対処できると思うが、何だろうな?
 Silt Striderに揺られている間中、そんなことを考えていたが、まあ助けてくれる人もいるらしいし何とかなるだろ、と思うことにした。


「でかい岩だなー」

 Maar Ganについて、早速寺院を訪ねることにした。この巨石がここの名物みたいなものらしい。  えーと、岩に彫られている碑文を読めば次にすることがわかるのかな。
 岩の表面に目を凝らすと、そこには次の文句が刻まれていた。

 これはMehrunes DagonがDunmerの頭上高々と持ち上げた岩である。Vivec様はMehrunes Dagonを挑発なさり、Dagonは民の上に岩を落とさずVivec様のほうに投げたのである。

 ほうほう・・・って。


 さっきから俺にガン飛ばしてくるDremoraがいるんですが・・・。
 まさか・・・。

 俺は近くの僧官に話しかけることにした。

「あのー、俺、ここに巡礼に来てVivec様の真似をするように言われてるんですけれど、それってまさか・・・」

 僧官はうんうんと満面の笑みで言った。

「巡礼に来たのだな。Anhaedraは手強いから手助けしてあげよう。Templeの祝福を受けてみるかね?」
「・・・おねがいします」
「よろしい。ちょっとじっとしていなさい」


 そういって僧官さんが俺にかけてくれたのは攻撃力と回避アップの魔法・・・そういうことらしい。


 んー、もっと装備を固めて来るべきだったなあ。ま、Dremoraなら今まで相手にしたことあるし、強力な魔法をかけてもらったし、多分倒せるとは思うけど。ただ、寺院内で暴れるというのもアレだよなあ。
 視線に気付いたのか、Anhaedraはスゲー嫌そうな顔をして顎をしゃくった。

「我はAnhaedraという。もしお前が巡礼者なら、さっさとそこの忌々しい岩の碑文を読むことだな」

 やっぱりこいつを挑発で間違いないようだ・・・一丁やってみるしかねえな。
 Anhaedraは最初は「お前の脅しなど肉のように柔いものだわ、定命の者が」とか「定命の者よ、侮辱を続ける気ならお前の骨の髄まで大いに貪り尽くしてくれるわ」と、まあ大人の対応というやつをしてくれたのだが、「ハッ! そんな言葉を次から次へと繰り出しおって、Guarのような惨めな死をくれてやろうか」とすげえ青筋を立てて怒りはじめた。正直言って、遺跡とかで問答無用に襲い掛かかられるより、じわじわ精神攻撃をしかけて怒った姿をじっくり見つめるほうが心臓に悪いな・・・まさに鬼の形相ってやつだし。
 そしてとうとう、「Mehrunes Dagonなんてただの筋肉野郎だろんなとこの手下なんて襲い掛かられてもねじ伏せてやれるもんねープププ」と挑発したところで、Anhaedraは剣を抜いて笑いながら斬りかかってきた。

「お前を殺した後、その死体を犯してやるぞ! 心配することはない、痛くせぬからなぁ!!」

 うわーお! 優しさの方向性を間違えてるっす!!


 必殺の一撃をかわすと手を広げて短く呪文を唱えた。怒りに任せたゆえの大振りは当たると痛いが外れたときの隙も大きい。「沈静」の魔法を唱えて大人しくしてもらった。


 挑発をした時点で試練は終わったらしく、岩に手を触れると、魔法が溢れた。
 俺も適当にお供えものを置くと、僧官にお礼を言って退出した。


 まあ、逃げるとも言うがな!!


 街の外までスタコラサッサして、もし奴が追ってくる気なら現世からお引取り願おうかと思っていたが、追っかけてはこなかった。道すがら獣には襲われたが。
 Blightの風も吹いてきたし、さっさとAld'ruhnに帰るかなーと思ってたら、西のほうから誰かが駆け寄ってくるのを見た。街とは反対の方角なのでAnhaedraなわけがないし、まさか別のDremoraかGolden Saintの高位の人型Deadraかと剣を構えかけたが、普通のDunmerだったのでホッとした。


「すいません、この哀れな巡礼者を助けてくれませんか?」
「巡礼者?」
「Ruddy Manのところに行こうと思ったのですが、道に迷ってしまって。もし助けてくださるなら、その場で150Septim支払います。なるべく急ぎたいんですけれど。聖地めぐりの道中で、是非見て見たいものがありまして。Koal CaveのRuddy Manです。二日以内に連れて行って欲しいんですけれど、助けてくれますか?」
「いいよー」
「ありがとうございます! それでは行きましょうか。西海岸にあるって聞いたんですけど、急ぎましょう」


 俺たちはMaar Ganに戻った。道中は危険な上にBlightの嵐が吹きまくっていて道に迷いやすい。街に戻ってSilt Striderを使った方が安全で早い。既に俺は巡礼したことがあるので、割と話は弾んだ。うん、別に急いで戻れと師は言わなかったし、これくらいの手助けは構わないだろう。


 GnisisでついでにAsh Maskを見学したり。


 そして川を渡って海岸まで下っていくと、巡礼者さんは目を輝かせはじめた。そして、洞窟の扉の前まで行くと、「案内はここまででいいです」と、足を止めた。

「ありがとうございます、Yui-Liさん。お約束どおり、これがお礼です」

 そう言って、約束どおり150ゴールドを渡して扉の中に入っていった。
 たまに巡礼者の人みるけど、こうしてみると、本当にTempleは人々の心の中に入り込んでるんだなあ。Templeは人々の心の中に灯りをともしているという点では悪ではないのだが・・・。


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(2009.3.13)