ぱんつじゃないけど恥ずかしい

 さて、巡礼者さんを無事送り届けたことだし、さっさと帰ろうかと川を渡っていたら、見知らぬDunmerの男から声をかけられた。

「ちょっと助けてくれ!」
「ど、どうかしたんですか」
「Hainabの奴がオレのパンツを盗みやがったんだよ!!」


「は、はあ?」

 つい男の下半身を見てしまったが、パンツははいてる・・・って、そっちのパンツじゃなくていわゆるズボンのほうのパンツか。

「ちょっと水浴びしてたらHainab Lasamsiってのがオレのパンツを盗んだんだよ。なあ、あんた奴に話をつけてパンツを取り戻してくれないか」

 こりゃまたオバカな依頼だな。っていうか、普通ここは困った美女が配置されるべきだろ。
 水浴びして着ているものを取られて身動きが出来なくなったなんて話、被害者は普通女だぞっ。
 とはいえ、そんな文句を言っても仕方が無いし、このままだとHentusさんも風邪をひいてしまいそうなので、パンツを盗んだHainabを見つけに行くことにした。「魂の病」の一つにショーロク・ダンシビョウという、やたら下半身や排泄物に興味がいってしまう病があるらしいが、いい年でどうしてんなもん盗みたがるんだか。
 っていうか、この人恥ずかしがりやだよなあ。女性ならまあともかく、男なら別にいいんじゃ…。

 ただ、オレはHainabという人のことは知らないので、あちこち行って聞きまわることになってしまった。


「というわけでHainabさんのこと知りませんかおまわりさん」
「チミィ、ここは関係者以外立ち入り禁止だよ」

 偶然にもTalos Cultという禁教の教会に入ってしまったのだが、まあ何とか無事にHainabを探し出すことが出来た。
 Orcと一緒に立ち話をしていたのだが、見知らぬArgonianがやってきたのを見ると胡散臭げな顔を向けた。


「何か店でも探してるってんなら――」
「いや、そうじゃないんです、Hentusさんのズボンのことで」

 そう言ったHainabさんは、ますます顔をしかめた。

「なんであんたがHentusのパンツなんか欲しがるんだ? あの野郎、助けが無きゃ取り返すこともできねえってか」
「いや、こっちも引き受けた以上は。それに、パンツのことで騒ぎになるなんてだっさいじゃないですか。ただ困らせたいってなら、もう用は済んだんじゃないですか? これ以上放っておくとHentusさんも風邪ひいちゃいますし」

 俺の言葉にHainabさんはうーん、と唸ると傍にいたOrcと見交わして、持ってたズボンを出してくれた。

「どうしてもあのアホのパンツが欲しいってわけだな? ほらほら持ってけ。単なるおふざけってやつさ」


 良かった、話が通じて。早速持っていこう。
 Hentusさんはオレがズボンを手にこっちに向かってきたのを見ると、ざぶざぶと水を掻き分けて岸に上がってきた。

「パンツを取り戻してくれたんだな? 俺もあんたのようにHainabに立ち向かえたらなあ」
「これから頑張ればいいじゃないですか」

 Hentusさんはズボンをはくと、そうそう、と懐から薬草を出してくれた。

「持ち合わせが無くてお礼したくてもアレなんだが、Hackle-Loをちょっと持ってるんだ。ほら、受け取ってくれ。パンツを取り戻してくれたお礼だよ」
「あ、嬉しいです。俺のような錬金術師にはありがたいです。どうもありがとうございます」

 Hackle-Loの葉は薬草になるんだが、高級…とまではいかないが、店で買うと結構値が張る代物なのだ。それを三枚もくれるとは太っ腹だなあ。

 俺はそこでHentusさんと別れ、折角なのでぶらりとその辺を探検することにした。


 川沿いの墓で、あのDwemerのおっさんの本にもあった「Denstagmer's Ring」という指環を見つけたり。なかなか収穫が多い小旅行だったなあ。




「Maar Ganの巡礼は終えてきたのだな?」
「ええ。DremoraのAnhaedraを挑発してきました」

 まあ、命とかアレとかがいろいろな意味で危険な目に遭うところではあったが、大体起きたことをかいつまんで報告すると、嘘ではないと判断してくれたようだ。

「ふむ、Anhaedraをうまく扱ったようだな。Vivec様の教えを学んだということだ。この本をあげよう」
「あ、ありがとうございます」
 
 Valen師がくれたのは『Death Blow Abernanit』という本だった。早速持ち帰って読んでみよう。
 にしても、Dremoraも大変だよなー。Golden Saintのおねーちゃんよりも扱いやすいとはいえ、巡礼者の試練のために日々挑発に耐える使命を果たしてるなんてさー。

 そんなことを思いつつ、退出しようと思ったら、師から引き止められた。

「そうそう。次の仕事は君が有能な人物だとTempleに証明しなくては引き受けることが出来ないんだ。一つやって欲しいことはあるにはあるんだがね、君のほうが準備が出来ていない。もし良かったら、GhostgateのUvoo Llarenと話すか、VivecのEndryn Llethantと話しなさい」
「んー、BalmoraではMolag Marも人手が必要みたいなことを言われましたけれど」
「そっちのほうでも良いがな。どこに行くか決めたら紹介状を書いてやろう」

 メイジギルドはそこそこ普通な状態だ。相変わらず師はDwemerの研究に精を出しているが、俺に用事は無いみたい。部屋を引き払っても大丈夫そうである。となれば、あとはMorag Tongかな。
 出来上がった服を受け取りに行ってから、事務所に顔を出してみることにした。


「おや、Knowerよ、Writの封を開けにきたのかな?」
「いえ。ちょっと相談したいことが」

 そう言って、Templeから別の支部に移ることを勧められたことを話すと、ならばMolag Marがいいのではないかと言ってくれた。Ghostgateは危険で遠すぎるが、Molag MarはVivecに繋がる交通機関もあるからWritをもらいに行くのもそう不便じゃない。VivecでTempleの仕事をすると、暗殺対象はよくVivecに住んでいるから噂が立ってあまりよくないとも助言してくれた。

「そうそう。Vivecといえば、二つのWritが未開封でな。一つはGuril Retheran、もう一つはGalasa Uvayn宛てのものだ。どの道Molag Marに行くならVivecを通るだろうし、ついでにやってみないかね?」
「わかりました。Enoさんに報告しに行きますね」
「Guril RetheranはRedoran CantonのWaistworkにあるFlowers of Gold Cornerclubにいるだろう。彼の一家はRedoranにコネがあってな。まあ色々怒ることだろう。とはいえ、Writが偽者で無い以上は名誉を持って暗殺すること。こっちはGalasa Uvayn宛てのWritだ。その者はRedoranの支配者の恨みを買った。その女はHlaalu CantonのWaistworksにあるHlaalu Treasuryに務めている。では行きなさい」


 こうして聞くと、Morag Tongは政治的にも上手くやってるよな。


 そうそう。Ienas Sarandasだけど、本当にTempleに入ってた。まあ、真面目に生きてくれるなら両親も喜ぶだろうさ。


 師にMolag Marに行きたい旨を告げると、紹介状を書くから明日取りに来なさいと言ってくれた。


 その間にメイジギルドにも事情を話し、借りた部屋を掃除して荷物を整理することにした。元々あまり沢山荷物を持ってるってわけじゃないけど、気に入った本以外は優先的に貸してもらえるって条件でギルドに寄付することにした。




 Ald'ruhnも悪いトコじゃなかったな。いい人が多かったから、離れるのがちょっと残念だ。


 それにしても…このお店、雰囲気が凄く好きだったから出来ればいざこざは起こしたくなかったんだけどな。何気ない客を装ってそれらしい人物を探す。今はそれほど人はいないみたいだ。


 あれか。やたらそわそわしているDunmerがいた。俺の姿に気が付くと、青くなって助命を嘆願する。

「Morag Tong! 見つけられたのか! 助けてくれ! どうか…見逃してくれ!」


「すまないね。こっちも仕事だから」


 もうこうなったら、と破れかぶれの勢いで短刀を抜いて襲い掛かってきたが、それに先んじて胸から腹へと袈裟懸けに斬りとばす。Daedricの刀は骨も鎧も易々と断ち割る。Guril Retheranは店の床に転がって息絶えた。苦しむ時間も無かっただろう。

 一応死体を調べると、Sanguine印の手袋を所持していた。Redoranにコネがあると言っていたが、Dark Brotherhoodとも何らかのつながりがあったんだな。
 俺は手袋を懐にしまうと、遠巻きに見守る人たちの視線を受けながら店を後にした。


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(2009.3.15)