Molag Marへの転勤
さて、次の標的はHlaaluの役所に勤めているDunmerだという。職務柄、いかにも他のHouseの人間と衝突を起こしそうではあるが、標的は実際にRedoranの家とひと悶着してしまい、恨みを買ったんだっけ。
下層は監獄となっている。Treasuryってと、普通は財務を取り扱っている部署ってな感じの言葉なんだが、この場合は単にHlaaluの役所って意味なんだろう。この家は商家らしいし。
何気ない振りを装って標的を探していると、裏の通路にそれらしい女を見つけた。
「Galasa Uvaynだな」
「…!」
っ!
流石Redoran家に喧嘩を売るだけあってか、俺がMorag Tongと見るや否やエンチャント付きのダガーを振り回して応戦してきた。表には人もいる。二人がかりで応戦されるとまずいな。標的以外を斬るのもアレだし。
ダガーの刃を弾いて胴体をがら空きにする。一瞬よろめいたところに接近し、頚動脈を切り裂いた。
騒ぎに気付いた人がようやく駆けつけてきたが、血の海に沈むGalasaと、刀をしまう俺を見て、何が起きたのか理解したようだった。舌打ちすると、「このことは忘れないからな」と吐いて、誰かに報告するためか、急いでどこかに消えていった。
外に出ると、夜風が涼しくて、しばらく星空を眺めていた。仕事が終わった後や、冒険に出かけて血なまぐさいことをした後は、新鮮な空気を吸うに限る。Vivecの空気は都市らしく、鼻先を掠める水の臭いにわずかに悪臭が漂っているが、それでも血よりはマシだ。かといって、仕事が嫌になることはないのだが。
Dunmerが嫌いだからこんな仕事をしているのか、と言われることがある。
暗殺の対象者はDunmerが一番多いと聞いているし、実際その通りだ。それに、奴隷だった頃の主人は思い出すのも嫌なくらいの奴で、刺したことはこれっぽっちも後悔していない。Argonianを嫌っているDunmerなんて、それこそ星の数ほどいるし、逆も然りって感じだ。
かといって、Dunmerでもいい人はいくらでもいるし、そういう人たちは嫌いでもないから、Dunmerが嫌いなのか、と言われると、それは否定したくなる。第一、Morag TongはDunmer系のギルドだし、本気で恨んでるならDark Brotherhoodにでも行ったほうがいいだろ。それに、Morag Tong入ったのは、まあRanis師に反発してのことで、師もDunmerなんだけど、それはDunmerがどうこう言うより、師の方針がアレなせいでどうせ殺しを依頼されるならもっとまともなギルドで依頼されたいと思ったせいだ。お陰でよくしてくれる人に出会えたけど。
で、そのよくしてくれる人、Enoさんとこに報告しに行くと、いつもの仏頂面で金貨の入った袋を渡してくれた。しめて2000ゴールド。そして、この任務の完了をもって、腕も足りてることだし、と、Masterクラスに昇格させてくれた。
Masterクラスといえば、どっかの支部を任せられるようなレベル。つまり、やろうと思えば支部を建てられなくもない。
MorrowindはArgonianの身で出世を図るには厳しい場所だ。今ひとつ現実味が湧かなかったけれど、それでも、それなりの身分を手に入れることが出来て嬉しかった。とはいっても、俺はまだ入会して半年くらいしか経っていない。腕のほうはともかく、まだまだあれこれ経験不足だし、何より若いってことで、当分現場で働いてもらう、ということをぴしゃりと言われた。
まあ、身体も今が一番動くときなんだから、そりゃEnoさんの言うとおりかな。このまま無事生き延びて、身体のキレが衰えたら、Enoさんのように事務に行って帳簿でもつけたり、Mephala様の祭壇の前で説法する仕事に就くんだろうか…ってな想像がよぎったが、俺はCorprusに感染している以上、その未来予想図は怪しいわけで。それもかなり。
…俺がNerevarineだってバレたらどうなるかなあ。やっぱり追い出されるのかなあ。
そんな想像を膨らませてもしょうがないので、今日はもうゆっくり休むことにした。まずはベッドの確保だ。ここのベッドはフリーだが、他の人も寝る場合があるので先に確保しておかねばならない。巣作り巣作り。
いざとなれば、地べただろうがどこでも寝れることは寝れるんだが、こういう日は寝心地のいいベッドで寝たいものだ。
そうそう、ここにRecallの帰還ポイントを設置してもいいと許可をもらったので、Markを唱えておいた。Molag Marに行こうが、Ghost Gateに行こうが一瞬で転送される。Molag MarはメイジギルドやMorag Tongの支部が無いので心細かったんだが、これで安心だな。VivecからはMolag Marへの直通便が出てることだし。
翌日、朝の便でVivecを出て、Silt StriderでMolag Marへと向かった。
Molag Marへは上記のSilt Striderと船便が出ているので、交通の便は割かしいいところだ。水辺の街だからってのもあるんだが、ここは巡礼地が近くにあるらしい。俗っぽく言えば観光スポットなので、それなりに整備もされているというわけだ。
当然巡礼者も多く、それなりの施設は整っている。街は、Vivecの居住区が一つだけ建ってるって言えばいいんだろうか。建物の構造はほぼ同じ、違うところといえば、Prazaに当たるところの屋根が取り払われてるってところくらいだ。Vivecを歩きなれていれば、さして迷うこともない。
ああ、そうそう。
Morag TongのMoragとMolagって間違えやすいんだが、Moragのほうは「森」を意味するらしい。Morag Tongは「森のギルド」ってわけだ。こっちのMolagのほうは…Molag Balと関連があるんじゃないか? 確か。
更にここはBuoyant Armigerの拠点でもある。Buoyant Armigerってのは、Templeの武装集団の一つで、House Redoranの者が多いらしい。Molag Marの他にはGhostgateにも拠点があり、その地の防衛や、死霊術師とかの討伐なんかを主な任務としている。Temple系の派閥なので、当然Templeの僧侶とも仲がいい。
…とはいえ、あまりこの街は好きになれない。奴隷市場があるせいだ。俺はそういうの例外なく大嫌いなんで、出来れば奴隷商人など闇討ちしてみたいのだが、一応公に認められてる商売ではあるし、それに喧嘩売ってMorag Tongの名に傷をつけるのも避けたい。くそ…。
あちこち歩き回って、Templeに到着。さて、どんなお仕事が待ってるのかな。
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(2009.3.19)