悪いAshlander


 さて、お使いは済んだが、師が想定していたよりも早く終わったはずだ。このまま帰るのもいいが、折角だからあちこち見て回りたい。というわけで、その辺を見て回ることにした。船で対岸のVosの町に行く。Tel MoraとVosの間は、水上歩行さえあれば歩いてもすぐ渡れる程に近い。


 この辺りは緑も豊かで、灰の影響はほとんど見られない。風の香りも、海からの清浄な潮の香りしかしない。火山からの、病を含んだ風が吹いているなんて、とても思えないくらいだ。風向きがいいと見えるな。おまけに、この近辺はヘルス回復の効果のある薬草が摘み放題になっていて、なかなか美味しい。
 Vosの西に、帝国の砦っぽい建築物が見えたが、あれがAryonとかいう人の住んでいる魔術師の塔だったんだろうか。意外だなあ、Telvanniの人間が帝国様式の建築物にいるなんて・・・。


 それにしても、マジで摘みきれないくらい沢山ある。いくらか持ち帰って、Templeの薬作りの足しにでも差し出そうかな。巡礼地が近いから旅をしている人が結構いるし、Redoranの人もたくさん駐屯してるから、そういう人たちにとって、傷薬はとても需要があるのだ。


 どんどん北に進んでいくと、Ashlanderのキャンプを見つけた。小規模ながら、緑豊かな土地に支えられてそれなりに暮しているようだ。土地の雰囲気を反映してか、他のAshlanderの人もわりと穏やかに対応してくれる。商いをしているテントを教えてもらって、いくらか入用なものを売買した後、ついでにご飯をご馳走になった。


 にこやかに別れを告げて、花や草を摘みつつ道に沿ってのんびり歩いていたら、立ち往生しているDunmerを見つけた。最初は道に迷っているのかと思ったら、そうでもないらしい。俺の姿を見つけると、慌てて駆け寄ってきた。


「見知らぬ人よ! そう、あんたのことだ! どうか助けてくれないか? 糞ったれなAshlanderの二人組みに襲われて、荷物を奪われて野垂れ死にさせようと置き去りにされたんだ!」
「Ashlanderが?」

 Ashlanderと聞いて、キャンプの人たちを思い出した。さっきキャンプから来たばかりだし、特にあの人たちに不審なところも無かった。この辺は緑も多いから、まあまあ余裕もあるだろうし。だから、あの人たちが盗賊を副業にしてるなんて考えにくいんだが・・・。

「とりあえず、知っていることを話してくれませんか」
「ああ、話すとも。奴らはその辺にいるDark Elfと見かけはほとんど一緒だったが、もっと粗野な感じだった。動物の皮を仕立てたものを着ていて、刺青もしてたな。髪型も変だった。見つけるのはそんなに難しくないと思う。盗みを働いたとしてもおかしくない感じだからな」
「何を盗まれたのですか? その時のことを話してください」
「ああ。糞ったれの馬鹿どもは俺を殺そうとして、荷物のGuarの皮を全部持っていきやがったんだ。奴らのものが俺のだってのは簡単に見分けられるぜ。そいつらの持ってるものに、けったいな印をつけておいたからよ! なあ、もしあんたが俺の味方になって皮を取り返して、盗みを働いたあの野郎どもをぶっ殺してきたら、それなりのものを約束してやるぜ。襲われちまったから何も持ってはいないんだが、Tel Moraの俺の友達のBerwenってのがすごくイイ奴なんだ。約束するぜ? そんで、あんたはどうするよ」

 ふむ、Ashlanderがらみの事件か。これがあそこのキャンプの意思でやったことか、それとも野良Ashlanderの個人的な暴走によるものかで大分違ってくるな。とはいえ、この人は武装しているわけでもないし、礼儀を重んじるAshlanderは非武装の人間を襲うなんて普通はしないはずだ。後者の可能性が強いな。キャンプに聞き込みに行くだけでもしてみるかな。

「わかったよー。やれるだけやってみる」
「よしきた。糞ったれのAshlanderどもをとっちめてきてくれ。皮を持ってきてくれたら、Berwenが対応してくれるぜ。彼女は取引先でよ。Guarの皮の商人が襲われて仕事がご破算なんて、俺たちはどちらも御免だしな」


 そうと決まればまずはキャンプに行って聞き込みをしなくてはならない。


 Guarってのはこういう感じに、荷物を積む旅の友でもあるんだが、皮も色々利用されてる。


 早速、キャンプの人たちに聞きまわってみると、すぐに教えてくれる人たちが見つかった。

「・・・というわけでさ。何か知らない? Ashlanderってことははっきりしてるみたいなんだよね」
「いや。我々は関わっていない。あんたが探してるのはEmul-RanとKashtes Ilabaelだな。あいつらは追放されてな、どこの部族の者でもないんだ。ここから南のところにいるんじゃないかな。波打ち際沿いに行くことだ。速やかに制裁を下してくれ」

 やっぱりここのキャンプの人たちがやったんじゃなかったんだ。むしろ、制裁が下されることを全面的に支持している。Dunmer特有の正義感て奴かな。とりあえず、ここのキャンプの人たちの犯行ではないことを胸をなでおろし南に下る。この二人組みは追放されてるってことは、以前に何かやらかしたってことか。追いはぎに身を落とすとはねえ。やっぱり、普通のAshlanderにとっちゃ、非武装の人間を襲うなんてのは処罰対象の行為らしいな。


 ・・・。


 ん? なんでこんなVos近くまで来ちゃってるかって? そんなん俺が知りたいわい。
 確かに南なことは南だったんだけど、奴らが拠点にしてるキャンプ地に誰もいなくってさ・・・どういうわけか前世と違って所定の場所にいなくて・・・いや、個人的な話だ。


 それっぽい奴らは、どうもここの店の飼ってるGuarに興味があるようだ。色の違うGuarは珍しいから、興味があるんだろう。あわよくば皮を剥いでしまえ、と思ってるのかも。でもその店のご主人、Guarを苛めるんじゃないぞ、と、メチャクチャ怖い顔で注意してきたんだが、あいつら命知らずだな。この店の主人、吸血鬼なのに・・・。
 でも、襲われた商人さんは「刺青に変な髪形」と特徴を話してくれてはいたんだが、二人とも兜を被ってるからその特徴が全くわからない。とりあえず、通りすがりの人を装って確認しにいかなくちゃならないな。いきなり殴りかかると俺のほうが通報されかねない。

「何だ? よそ者」
「この辺でGuarの皮を盗まれたって事件があったんだけど、あんたらの仕業? キャンプで聞いたんだけどさー」
「俺たちが皮を盗んだんだよ、Argonian。それをほとぼりが冷めるまで隠しておくつもりさ。お前はここにやってくるなんていう間違いを犯したな。みすみす見逃すなんてことはさせないぞ。神様にお祈りでもしておくんだな。もうじきに死ぬことになる」


 やっぱりな!!
 弓矢で距離を取って攻撃してくるが、ここら辺は地形も込み入った岩場だ。狭い場所に追い込んで首を斬り飛ばせば、あっという間に決着がついた。


 二対一だが、こっちは暗殺やってるプロだ。舐めないで頂きたい。男の身体を漁ると、それらしい皮の束が出てきた。軽く検分したが、争いあったにも関わらず傷はついていない。商品に傷をつけるなとは言われてないが、無いに越したことはないので、ほっとした。
 店の前に死体を放置するのもアレだが、まあ構わないだろう。この店のおやっさん吸血鬼だから、多分、食事の用意の手間が省けて願ったりだろうしー。


 Guarにも傷はついていない。よかったよかった。人懐っこい黒Guarを撫で撫ですると、商人のおやっさんに報告するために元の場所に戻った。


「荷物を取り戻してくれてありがとよ。糞ったれどもに仕返しをしてくれて嬉しいぜ。Tel MoraのBerwenに会いに行って報酬を受け取ってくれや。商人たちの伝を頼って、あんた、Yui-Liのことがわかるように言付けておくからさ」
「ありがとうございます」

 こうして後日、俺はヘルス増強のポーションと、Ring of Hornhandという、スタミナを傷つける指環を頂いた。うんうん、旅の安全が確保されるってのはいいことだし、Tel系の街に知り合いが出来たってことは、TempleとしてもTelvanniの牙城を崩す上ではいいことだと思うことだろう。

 そのままこの町でのんびり滞在しても良かったが、所詮俺はよそ者。というわけで、慣れ親しんだVivecに戻ることにした。いつの間にか、Vivecが俺の家みたいになっちゃってるなあ。


 ※この話に出てくる店はMODで追加したGoth Shopという店です。どういうわけか店の前に例の二人組みがいるというバグがおきてしまいましたが、今回はそれを利用して話を組み立てました。

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(2009.4.16)