Atronachと知恵比べ
前にも言ったように、俺のRecallの帰還ポイントは現在Vivecに設定してある。のんびり羽を休めるついでにEnoさんに顔を見せて、みんなとわいわい遊んだりして一日を過ごした。色々おしゃべりとかしたが、Houseは最近世代交代の機運も高まっているらしい。エルフは寿命が長くて、世代交代のスパンもまったりしてるけど、世情的にも新しい風ってものが求められているんだろうか。
Mephala様の祭壇にお祈りしてから、Molag Marの船便に乗った。
Vivecでは、天気も風もひどくなかったのだが、Molag Marは生憎の砂嵐だった。船室を出ると、急いで寺院に駆け込んだ。服についた砂と灰を払い、口をすすいでから、師に報告する。
「Letteを治療したと? Tribunalの栄誉に浴するに値する行いをよくぞしてくれた。お前にはこの本がふさわしいことだろう。異端のものではあるが、治癒と抵抗することについての教えについて、宝石のように良いことを言ってくれているのだ」
そう言って、師は棚から『2920, Rain's Hand』と書かれた本を出して俺に与えてくれた。Tribunalの神々も活躍する、有名な歴史小説のシリーズだ。早速受け取ると、師は次の任務・・・というか、巡礼を申し付けてきた。
「お前には、Molag Marの北西にあるMount Kandに巡礼しに行ってもらいたい。残された試練の一つであるというわけだ。地図に印をつけておこう」
「ありがとうございます。どういうところなんですか?」
「Mount Kandはだな、Vivecさまが三体のDaedraと知恵比べをなさり、勝利をお納めになったところなのだ。洞窟はあまり明るくない。これらのポーションをとっておきなさい。あまり謎に明るくなかったら、『The Yellow Book of Riddles』の写しを見つけなさい。本屋を回れば探し当てることができるだろう」
「わかりました」
しかし、嵐は一向に収まらないので、天気が回復してMount Kandに行けるようになるまで、傷薬を作ったりしながら数日待つことになった。Daedraならしばき倒せなくも無いが、そりゃ試練の趣旨に反する無粋な行為だ。
この試練の趣旨は、Daedraの繰り出す謎に答えること。出題範囲は『The Yellow Book of Riddles』らしいな。それをTharar師がわざわざ教えてくれたってことは、カンニングしてもOKと暗に言ってくれたようなもんだが、はてさて。合ってりゃいいってことか?
ということは、間違ったら何か罰が下されるのかな。例えば、間違ったら殺されるとか・・・Daedra相手だったらありえるな。巡礼に送り出した奴が死ぬような目に遭ったら、師も寝覚めが悪かろう。ヒントをくれるというのも、そういうことだな。
でも、嵐が収まらないから船もSilt Striderも欠航しがちだし、本屋に行くって言ってもちょっとムリだ。俺なら多分、Daedraとやり合っても生きて帰れるだろうし、ぶっつけ本番で行ってみるかな。
さて、嵐が収まったので、この間を縫って巡礼に行くことにした。
どちらかといえば暗殺に行くような格好だが、いつ天気が崩れるかわからない上、山登りするというのにヒラヒラする服を着ていってもしょうがない。一応、砂嵐が吹いたときのことも考えて、マスクも用意した。はめ心地を確かめるために着けてみたが、寺院の皆から「どこに暗殺しに行くんだ」と言われてしまったが。
道中はぴーかんで、獣に襲われた程度。人里離れるとDaedraも出ることがあるので注意が必要だが、幸い杞憂に終わった。
「これがMount Kandの洞窟だな」
扉には「Mount Kand」という字が彫られているのが読み取れた。
師は簡単にMount Kandの洞窟深くにある祠について説明してくれた。それによると、洞窟の中の一番奥深くに、巡礼地によく見かけられる三面石の祠があるというのだ。さて、ここからが本番だ。「知恵と勇気を示し、Mout Kandを巡礼せよ」と師も励ましてくれたし。
洞窟の中は話の通りに暗く、Night Eyeのポーションがとても役に立った。
しばらく進むと、汗ばむほどの熱を感じた。溶岩が流れているらしい。そして、道を塞ぐようにFlame Atronachが茫洋と揺れていた。思わず身構えたが、Atronachはこちらに気付いても全く襲ってくる気配が無い。なるほど、Elemental Daedra、Atronachが「謎」を出題するというわけだな。
「我の謎に答えよ、愚か者よ。さもなくば我と戦うのみ!」
熱無き炎を揺らめかせながら佇むFlame Atronach。いつもはそんな余裕はないんだけど、こうしてじっくり見ると、美しいよなあ。
「ってことは、ここが巡礼地で合ってるんだな」
「我はMount Kandにて仕える者だ――永遠にな。我の謎に・・・お前は答えなくてはならぬ。そして、お前は我の炎で焼き尽くされるのだ」
Daedraってのは好戦的なせいか、どうも俺に間違えて欲しいみたいだな。
「まあいいや。とりあえずその謎を出してよ」
Flame Atronachは優美に頷くと、ゆっくりと、はっきりした声で告げた。明らかに、何度も繰り返してきたような調子だ。
この謎しか言わないって決まってるみたいだな。なるほど、それで師があんちょこのことを教えてくれたのか。
それは黒くも無く、赤くも無い金属。
人の持つ黄金の欲と同じほど重い。
友と矢と軍馬の力になるもの。
Ebony。
Glass。
Daedric。
鉛。
鉄。
どれなのか当ててくれってことか。
えーと。黒や赤じゃないから、黒いEbonyや赤みのあるDaedricじゃないな。黄金と同じくらい重いんだから、軽いGlassや鉄もナシ。というわけで、残るは鉛だな。
「通るがいい、定命の者よ」
「お、サンキュ」
Flame Atronachは脇にどいて、通るように促した。第一関門通過ってことか。もう一度Atronachを見て、奥に向かった。
・・・さっきまでは溶岩のおかげで熱かったが、今度は凍えるように寒い。
これは・・・ただの山じゃないな。歩いているうちに、氷の張った泉の上で佇むFrost Atronachを見て確信した。多分、ここは一種の力場みたにになってるんだろう。そうでなければ、こんな近距離で溶岩と氷が居合わせられるわけがない。
冷気をゆらめかせながら、第二のAtronachが口を開く。
「謎に答えよ、定命の者よ。それとも、汝が血を凍りつかせてしんぜようか?」
「あんたが第二の関門ってことでいいんだな」
表情に乏しい顔に、かすかに感情めいたものを浮かべながら氷の精霊は頷いた。
「我はMount Kandに仕えている者――永遠に。同胞のように。さあ、我の謎に答えるがいい」
「わかった」
「汝が嘘を口にすれば我は汝を剣にて殺す。汝が真実を口にすれば我は汝を呪文にて殺す」
んー。論理の矛盾を突けってことか・・・。剣か呪文のどちらかで俺を殺せって言えばいいみたいだな。嘘を吐くと剣、本当のことを言うと呪文・・・。呪文でお願い(嘘)→剣、呪文でお願い(真実)→呪文。剣でお願い(嘘)(本当)→あ、あれ・・・? ってことだから・・・。
「剣で殺してくれ?」
「素晴らしい。汝は良き相手であることだ。Oblivionの冷気を骨身に味わいたくなければ、もう行くがいい」
「わかったよー」
この調子で行くと、最後はStorm Atronachか。
しばらく行くと、今度は水の滴る音を聞いた。本当にこの洞窟はバリエーション豊富だな。そして予想通り、泉の奥には嵐の精霊がゆったりと佇んでいた。
「定命の者よ、我は汝の最後の障害だ。我の謎に答え、できるものならば――解き明かして見せるが良い。我はMount Kandに仕えし者――永遠に、同胞のように。さあ、我の謎かけに答えるがよい」
「お願いします」
「我の仲間のAtronach、Zedias-sokoが殺された。AltmerはDunmerが犯人だと主張した。DunmerはKhajiitがやったと言った。OrcはZedias-sokoを殺していないと言った。KhajiitはDunmerが嘘を吐いていると言った。さて、彼らのうちたった一人が本当のことを言っているとするならば、Zedias-sokoを殺したのは誰であるか?」
「うーん、ちょっと考えさせてください」
そう言うと、Atronachは了解したと言わんばかりに瞳を閉じた。長考はOKみたいなので、早速座り込んでメモをしつつ考えることにした。「たった一人が本当のことを言っている」、つまり「一人が正しく、三人は嘘を吐いている」と手がかりはもらっているので、場合分けして考えてみることにする。
Altmerの主張が正しい場合。
Dunmerが犯人(主張どおり)、Khajiitは犯人ではない(Dunmerが嘘)、Orcが犯人(Orcが嘘)、Dunmerは正しい(Khajiitが嘘)
→犯人が二人になってしまう。矛盾。
Dunmerの主張が正しい場合。
Dunmerは犯人ではない(Altmerが嘘)、Khajiitが犯人(主張どおり)、Orcが犯人(Orcが嘘)、Dunmerは正しい(Khajiitが嘘)
→犯人が二人になってしまう。矛盾。
Orcの主張が正しい場合。
Dunmerは犯人ではない(Altmerが嘘)、Khajiitは犯人ではない(Dunmerが嘘)、Orcは犯人ではない(主張どおり)、Dunmerは正しい(Khajiitが嘘)
→犯人がいない。矛盾。
Khajiitの主張が正しい場合。
Dunmerは犯人ではない(Altmerが嘘)、Khajiitは犯人ではない(Dunmerが嘘)、Orcが犯人(Orcが嘘)、Dunmerは正しい(Khajiitが嘘)
→Orc。
「汝の答えは正しいことを認める」
「やったあ!」
脇を通り抜けて進んでしばらくすると、広くて静かな空間に出た。三面石の柱が見える。これがMout Kandの祠だな。頭を使う試練を乗り越えたせいか、ただでさえ厳粛な空気がより荘厳に感じられるようだ。
石碑に触れると、込められていた魔法が俺にかけられた。石碑の祝福だ。
これでMount Kandの試練は終了。帰ってTharas師に報告しなくっちゃな。
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(2009.4.18)