RedoranのNord

 Kogoruhnの探索をするかどうかは迷ったが、師から任務を受けて以来、かなりの日数が経過していた。それに何かの拍子で服を失っては困る。
 そういうわけで、服を取り戻すと、師の元に帰って来た。


「これだ。確かにHair Shirt of St. Aralorだ」

 師は溜息を吐きながら、暗い顔で服を受け取った。

「よろしい。服を取って戻ってきた・・・ということは、Feril Salmynは亡くなっていたのだな? 悲しいことだが、少なくとも聖遺物は戻ってきた」

 予想はついていた。最前線であるGhostgateの任務は死と隣りあわせだ。ここにいる人は、そういうことを覚悟した戦士たちだ。それでもやはり・・・ということになってしまうのは辛い。
 俺だって、知り合いや同じギルドの誰かが死んでしまったら、とても悲しい。Morag Tongは冷血の集まりのよう本には書かれているけれど、割り切れないものだってある。仲間が死んで喜ぶ人間もいないだろう。

「吸血鬼やSixth Houseの一味に制裁を下しただけのことはある。次の仕事も、別の失われたTempleの聖遺物でな、Cleaver of St. Felmsというものだ」


「MendelはSt. Felms the BoldのCleaverを持っていた。彼は勇敢で誉れ高きBuoyant Armigerの者だったが、Red Mountain山麓北東のTureynualという名のAsh Vampireの巣窟にて亡くなった。敵の手からCleaverを取り戻し、Templeに返還してくれ」


 Red Mountainは魑魅魍魎が跋扈する、雨も陽も差さない不毛の地。


 さて、Tureynualは如何なる場所か。


 山麓にはわずかに人の手が入ったところも。風に吹かれているせいでボロボロだが、何とか用は足していてくれている。


 ・・・まさか、こんなところで誰かに会えるなんて思っても見なかったな。


 Red MountainはDaedraの祠がいくらかあるようだ。


 Ghostfenceが出来る前はRed Mountainは普通の火山(とはいっても、Lorkhanの心臓がある時点で普通とは言えないかもしれないが)だったんだから、神殿の一つ二つあっても不思議じゃないか。
 物好きなことに信者さんがいたんだが、ちょっと沈静化の魔法で落ち着いてもらって話し合ったらわかって頂けた。
 うんうん。探索で疲れているんで人間と争ってるヒマはないんだ。


 師は詳しい箇所を教えてくれなかったので、嵐を避けて遺跡の中で休んだり、Ghostgateに戻ったりを繰り返しながら探索をしていたら、寺院の北東にTureynualを発見した。山の北東ではないことに注意だ。


 Tureynualの扉には、何とか読める字で「Kagrenac's Liblary」と書かれていた。これは、聖遺物以外にも何かありそうな予感だ。


 そして! 奥には!!


 House Dagothの一人、Ash VampireのDagoth Tureynual!


 Ash Vampireは吸血鬼という名前はついているものの、アンデットども吸血鬼とも異なる存在であり、何らかの魔力で魂と身体を保っているらしい。
 恐らくはDagoth Ur、もっと突き詰めれば心臓の力か。


 Dagoth Tureynualは強力なエンチャントのついたアミュレットと、この机の鍵を持っていた。
 引き出しを開けてみると、一冊の古ぼけた本が――しかし、手書きと思われる本は俺には分からない言語で書き記されていた。Dwemer語だ。何とか始まりの所はAldmer語で「Kagrenac's Planbook」と書かれいるのが判読出来た。

 Kagrenacの直筆だ。真正のもので間違いないだろう。


 だが、混乱で失われてしまったのか、Kagrenac及びDwemer語の本はこれ一冊しか見つからなかった。他にも本はあるにはあるが、全て俺にも読める本・・・つまり、後代に書かれた本で占められていた。帝国について書かれた本とか、吸血鬼に関する本などだ。
 Dagoth Tureynualが『Kagrenac's Planbook』の入った机の鍵を持っていたということは、たまたま奇跡的にKagrenacの本が一冊残っていたというよりは、House Dagothの奴らがここに本を色々持ち込んだ――というほうが論理的だろう。


 机の上に何か手紙のようなものがあった。

 全ての嘆きし者は目覚めたり!
 白き者の最も白き者たちよ!
 黒き者の最も黒き者たちよ!
 羞恥と子孫、太陽、そして影!

 神々よりも強く、定命の者より光り輝ける方が!
 あの方は目覚められた!
 あの方は蘇った!

 あの方は名前と名付けの意味を理解なさっておられる!
 あの方は待ち受けることと待ち続けていることを理解しておられる!
 あの方は全ての星と月の中に入られる!
 あの方はそれら影のなかで最も輝くのだ!

 一つの形、一つの呪文!
 一つの幽霊、一つの詠唱!
 闇より、あの方は武器を身につけ降臨する!
 光より、あの方は見守っておられる!

 あの方は全なり!
 竜! リッチ! 予言者なり!
 炎の川にあの方は現れん!
 夢の嵐の中よりあの方は馬に乗りて現れん!
 鋼鉄の銀を持ち、あの方は心臓を貫きなさる!

 全ての呪文、力、呪いは壊れよう!
 鎖は粉々に砕け散る!
 鱗は剥がれ落ちるのだ!

 私は目により汝を見る!
 そして全ては沈黙となる!
 私は目覚めた! 私は覚えている!
 主よ!

 「!」が腐るくらいついてるな。もうちょっと落ち着いて欲しいものだが。
 Dagoth Urを讃える詩文・・・のようなものか。Dagoth Tureynualの書いたものかな。狂人の戯言みたいな文章だが、ここでは狂人の戯言が現実になってしまっている。笑えないな。
 さて、俺がここに来たのはSixth Houseの奴らを倒すのが目的ではない。あくまでオマケだ。捜索を続けよう。遺跡はそれほど広くはなさそうだ。元はKagrenac個人の図書館みたいなものだったのだろう。


 図書室の下の階に、男が一人倒れていた。彼がBuoyant ArmigerのMendelだな。
 Nordとは思わなかった。しかし・・・やっぱり、人が死んでるのを確認する仕事ってのは、実りが無くてキツいな。


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(2009.8.3)