黒衣の英雄・中
気がつくと、俺は城門前でゲートが閉じるのを見つめていた。
俺・・・生きて帰ってこれたのか。
遠くから歓声が聞こえてくる。さっきの様子を見て、のことだろう。
先ほどまでの赤い空も消えている。門は完全に閉じられたらしい。俺はホッとした・・・が、置いてきてしまったあの人のことを考えると胸が痛んだ。
俺は、とにかく今までのことを隊長に報告した。隊長は黙って聞いてくれていたが、最後まで終わるとこんなことを言い出した。
これを好機とみなして、中でまだうろついているDaedraの群れを一掃するつもりらしい。俺も賛成だ。加えて、隊長は、俺に対して助太刀してくれないかとも言ってくれた。俺は少し考えて、申し出を受けることにした。
「多いほうがいいからな」
「For the Kvatch!」
隊長以下、隊員は口々に叫びながら突進して行く。フラストレーションがかなり高かった分、反動が一気に来ているようだ。しかも、俺と違ってKvatchへの思い入れもある。俺も遅れじと、彼等の後を追っていった。
「ハハ! 我らはあの悪魔どもを一掃したぞ!」
俺たちは魔物を蹴散らして、教会前を制圧。教会で立て篭もってる人たちのための道を確保した。聖堂の屋根がぽっきり折れてしまっているが、扉はまだ無事らしい。見たところ、飛べるDaedraはいないので大丈夫だろう。Azura様の配下のDaedraは飛べるんだな、これが。居ないみたいだけど。
Savlianさんはすこぶる上機嫌だ。俺は、他の避難した人も気になるがMartinが生きているのかどうか気になる。
とにもかくにも、安全な街の外へ、生き残った人を、街を奪還する戦いに巻き込まれないように避難させなければ。俺たちは教会へ安否を確認しに行くことにした。
教会は、大分被害を受けているが何とか突破されずに済んでいたようだった。助けに来たことを外から告げると、中から鍵やバリケードが外される音がした。
足を踏み入れると、取り残されていたガードや住民たちから歓喜のどよめきが聞こえた。まだ無事な人がいて、素直に嬉しい。内部は椅子や本棚が散乱していたりと混乱したようだが、助けが来たことで、安堵の空気が市民の間に広がっている。俺は、僧侶らしい人物を探そうとしたが、Savlianさんに城に突入しないかと持ちかけられた。確かに、隊長さんたちは強いけど助けが多ければ多いほどいい。それに、ここまで来たら城に突入しても同じ・・・だが、俺もJauffreさんから別の重大な使命を授かっている。隊長も、避難民の安全を確認したことで少し休憩することを許してくれたから、その間にMartinという人を探してみることにした。
目的の人物はすぐ見つかった・・・が、何と言えばいいのか戸惑う。隠し子っていうからには、世が世なら・・・って、今がその世なんだが、一応王子だ。皇位継承問題にも関わるし、権利を主張すると何かしら騒動に発展する可能性があるし、出生の秘密なんか知らないかもしれない。だから、俺がここでいきなり皇帝の息子って言っても、コイツ狂気の神、Sheogorathでも信仰してるんじゃね? とか思われるのがオチだ・・・が、話さないと始まらない。
「何か?」
Martinは多少メタボリックが気になりだすような(太ってないけど)年頃の中年って感じのオヤジだった。つまり、その辺にいるような普通のImperialのオヤジだ(2回目)まあ、Urielさんの年齢(86か7)を考えれば妥当か。暗殺された他の王子も50とかその辺のはずだし。
あ? 誰だ王子って言えば若くて美形だろって思う奴は。御伽噺じゃあるまいしそんな都合のいい夢のようなことが起こるわけないだろ!!
「うーん・・・あのさ、皇帝が俺に、あなたを探すようにって命令したんだ、ですけど」
「皇帝はお亡くなりになった。君は何者なんだ? 私に何を求めているのだ?」
怪しまれた・・・俺、説得下手糞なのね(泣)
加えてArgonianだから顔の造り的に、表情にほとんど変化がない。人間やエルフ、Khajitと比べて喜怒哀楽が分かりづらいと評判だ。早速Martinさんが俺のことを信じてくれるか不安になった。
「えーと、あなたがMartinさん・・・ですよね、司祭様」
「はい、私は僧侶です。僧侶の力が必要ですか? あなたの助けにはならないと思いますが」
「いや、そうじゃなk」
「今、神々への信仰に戸惑いを感じてしまっているのです。これが神のお考えなら、何をすべきか分からないのです」
神のオミチビキ・・・か。聖堂のステンドグラス、今問題になっている、Oblivionとの壁を作った竜頭人身のAkatoshが冷ややかに俺たちを見下ろしている。Martinが、Akatosh教会に勤めていることも、運命だろうか。平凡な暮らしを送って、もしかしたら死ぬまで平凡な暮らしを送る事が出来たかもしれなかった。けれど、神は、運命は、俺だけでなくこの人も巻き込んで、むごい仕打ちをする・・・。
「神のオミチビキ、アンタの崇める神の計画の一部ってやつかもな。俺たちはそれの一部に過ぎない」
Martinはすっかり疲れきった顔で呟いた。Akatoshが冷ややかに俺たちを見下ろしている。
「何のつもりだ? 何を言っているのだ?
私はあの恐ろしい夜にずっと、Akatoshに祈りを捧げていた。しかし、助けは来なかった。来たのはDaedraだけ・・・このような神の御心を理解する事が出来るかい?」
「Nineの神は慈悲溢れるようなやっさしい存在じゃないさ。Daedraくらい、簡単にやっつけれるはずなのにさ。それをしなかったのは、神の試練かもな。ここで死ぬような弱い存在なら・・・Uriel Septimの息子を名乗る資格はないと」
何時の間にか口調が戻っていたが、ついつい口を滑らせて皇帝の息子だと告げてしまった。案の定、突然の言葉にMartinは非常に驚いている。当たり前だよな。俺は心底Martinに同情した。
「何を・・・君は大きな勘違いをしている。私はAkatoshの僧侶。父は農夫だったのだよ」
ほう。Jauffreさんは何も言わなかったが、農夫の養子にしたのか・・・その割りに教育を受けている感じがするのは、まあ「職業選択の自由」ってやつがあるからかもしれないが、腐っても皇帝の息子だから、Jauffreさんか、Martinさんのことを知っている人たちが何かしら援助をしたのかもしれない。
「いや。本当だ。Daedraの最初の標的は帝都でもどこでも、極端な話、Morrowindのように外国でもよかったはずだ。それなのにKvatchが襲撃を受けたのは、多分、アンタがここにいたからだと思う。Daedraなら、大勢の中からアンタ一人を捜し当てる事だって出来るんだから」
「私のために都市全てが破壊されたのか? 何故だ? 私が本当に皇帝の息子だからなのか・・・?」
「嘘じゃないよ。別に狂ってもいない。つか、嘘言ってアンタを無闇に落ち込ませる必要無いだろ」
うっ、まずいことを言ったかもしれない。MartinさんはKvatchが襲われたことにすっかり責任を感じてしまっている。俺って本当に話が下手糞だな(泣)
しかし、Martinさんは俺の顔を見て、何かを決意したように告げた。よく見ると、皇帝と似ているな。皇帝の顔はもう少し柔和だった気がするんだが。母親が漢らしい顔つきの人だったとか・・・俺の思考は、一瞬どうでもいい方向へ飛んだ。
「・・・不思議なことだが・・・君は真実を述べているのだと感じる」
皇帝は不思議な力のようなものを持っていた。もしかしたら、Martinもそれがあるのかもしれない。
「まあ、詳しい話はJauffreさんがしてくれる。アンタが生まれたての時から見守ってきたらしいし、詳しい話が聞けると思う。まずWeynon修道院に行こう」
「ああ、君がOblivionの門を破壊したと衛兵から聞いたよ。君は希望をくれた・・・よし、Weynon修道院に行こう・・・と言いたい所だが、私も奴等を追い出すのを手伝いたい」
「ええ!?」
「Kvatchが襲われたことについては私にも責任の一端がある。一人では無謀だが、君やガードもいる。協力したい」
「何か心得があるのか? 言っておくが俺だって何度も死に掛けたぞ。アンタが死ねば終わりだし、自分の身は自分で守れるほどじゃないと困る」
「こう見えても魔法や剣の心得がある。失望させることはしない」
「わかった。危なくなったら迷わず避難してくれ。山を下ったところにキャンプがあるから、そこで待ってればいい」
「隊長。用意が出来た。Martinさんも参加したいって。足手まといにはならないつもりだ。行こう」
Savlian隊長は頷くと、計画を打ち明けた。こんな状況でも思考を停止させず、作戦を立てている。絶望的な一夜を明かしたにもかかわらず、タフな御仁だ。
隊長の作戦は正面突破。まず、城門を確保。城の前の広場に出るのに、必要らしい。それから城内に入るつもりだろう。戦力は向うのほうが上かもしれないが、あちこち崩れている以上、裏から回りこめるかどうか怪しいから仕方ないか。
俺たちは礼拝堂を飛び出すと、武器を片手に魔物たちを蹴散らしていった。Martinも意外に強い。若い頃何か武術をやっていたんだろうか。
「くそ、まずい!」
しかし、その快進撃も肝心の城前に続く門が封鎖されていることで強制的に止められることとなった。目を凝らすと、Dremoraの戦士や魔術師たちが城門の上にいて俺たちを狙っている。一旦間合いの外まで退避したが、作戦の変更を迫られた隊長は次の手を打った。篭城戦に備えるために作られた門だから、外から城門を開けることは出来ない。しかし、Gatehouseという場所があり、そこから開門できるという。そこへ行くにはガードの駐在所の閉鎖された入り口を通る必要があり、俺たちの拠点である礼拝堂を守備しているBerich Inianという人が鍵を持っているそうだ。
「わかった。すぐに開けるから待っててくれ」
急いで礼拝堂に戻ったが、ありがたいことに、異変を察知した帝国の巡回兵が応援に駆けつけてきてくれた。拠点にいるKvatchの衛兵から事情を聞いたらしい。
「ついて来て!」
「あんたの後ろについてくよ!」
あれ? 何時の間にか俺がリーダー?
という疑問がわいたが、何分猫の手も借りたいほどの非常事態だったので、疑問は一瞬で消えた。鍵を持ってるBerichさんを捕まえて、事情を説明すると、どうも城門が閉ざされてからかなり時間が経っているということと、更にBerichさんからも助力を申し出てくれた。更に、何かがあったときのために門の開け方まで教えてくれた。教会の地下墓所から出る事が出来る裏口を通って、俺たちは進んだ。
「Kvatchは帝都以外に唯一闘技場があった街だったんだよ」
闘技場跡で誇らしげに、そして悲しげにガードさんは言った。それくらい、大きい街だったんだろう。多分、帝国第二の都市として相当自慢してたんじゃないかと思う。思い入れも強いはずだよな。
偽装のために荷物で見えにくくしていた落し蓋を開けて城門地下に入り込み、通路を辿って城門内部に侵入し、門のハンドルを回す。すると、待ち構えていた隊長さんたちが飛び出して城前広場に殺到する。奇襲に、広場にいた魔物はあっという間に全滅。伯爵を助け出すため、俺たちは内部へ突入した。内部も魔物の巣窟と化し、所々で火の手が上がっていた。
ここで、教会に次ぐ二次拠点としてSavlian隊長がここを維持し、俺が分隊として伯爵を救出するようにと指示を受けた。これだけ人がいると、怖いのは同士討ちだ。広いところなら数がものを言うが屋内のように狭いところは危険極まりない。広い城でさえ例外ではないのだ。俺はそれに随うことにした。
「行こう」
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うちの場合、某所で配布されていたガード強化MODを入れているため、衛兵の皆様が強いことになりました。本来はレベルが高くなると装備などの問題から相対的に弱くなってしまうガードに愛の手を差し伸べるMODですが、レベルが低いうちならなおさら効果覿面のようです。
ちなみに、強化のほかに、ガード増加や、武器種類を多くしたりするそうで。
強いPCでも、チートか、難易度を低くするか、ポーションを飲みまくらないと、集団できた場合にボコボコにされること請け合いです。すげえぜ。
(2007.1.1)