凶悪魚と推薦状


 帝都のある島を取り巻くRumare湖に生息する凶暴なRumare Slaughter Fish Blood Mother。

 暇が出来たので依頼を完遂することにした。


 水上歩行+生体探知の魔法で探し回り、いざArgonianが得意とする水中戦に・・・。


 ドカッ! バキッ!!

 イテエエエエエエエエ!!!! なんだこりゃ! 魚ってレベルじゃねーぞ!!(泣)
 普通のSlaughter Fishならこんなもん1発でプカプカだが、こいつは体力がある上に一撃一撃の体当たりが重い。下手すりゃこっちがプカプカする羽目になる。あのオッサンよくこんなのを相手にして生きてたな・・・。


 作戦変更。魚からの攻撃を受けない水上からアタックする。Argonianの名前が泣くが、仕方がない。
 ん? 何で漁師の格好かって? まあ、それは気分の問題だ。安全に攻撃できるなら打撃武器のスキルも鍛えておきたいしー(汚)


 たまたま飛び跳ねたところを見たんだが、人の身長を超えるくらいの魚。こりゃすげえ。
 鱗の効果は、他の鱗となんら変わるところがない。まあ、即席のポーション作りでは作成不能の何かに使うんだろう。倒した後は鱗をべりべり剥がす。漁は早朝から開始したけど、終わった頃には昼になっていた。俺は少し休憩すると、元漁師のおっさん、Aelwin Merowaldさんに報告しに行く。


「Nineにかけて! 鱗を手に入れたのか! 感謝するぞ! この世にいい奴なんぞおらんなどと、もう言えんわな」

 ガッツポーズなんかしちゃって。
 Aelwinさんはとても嬉しそうに言うと、お礼として指輪をくれた。足をやられた以上、もう漁をすることは出来ないし、この鱗を錬金術師に売れば老後は安心だから、だそうな。Rumare湖の名前がついた指輪は水中呼吸と運動能力+4の効果。これさえあれば溺れる事は無い。Aelwinさんはこれで漁をしてたんだな。俺はArgonianだから必要ないけど、漢の心意気として大切にすると約束した。


 所変わってLeyawiinはメイジギルド。
 本格的に推薦状を集めることにしたので、最南端のLeyawiinから開始することにした。ArgonianとKhajiitの国に挟まれてるためか、彼等の姿をよく見かける。心なしか雨も多い。まあ、水陸両用種族としては濡れるのは構わないが。でもべたべたな格好で入ると嫌がられるんだよな。


「どうもー、こんにちは」

 基本、ギルド員にはギルドの人は優しい。周囲の人たちはあったかく歓迎してくれたが、推薦状の事を聞くと、支部長のDagailが扱ってくれているとのこと。噂では、彼女は神秘魔法に通じているらしい。


「私の知恵を求めてきたのですか? ああ、違った。あなたは予言を求めてきたんだね」
「いえ、違・・・」

 Dagail師は尚も話し続けた。どうも、予言をかき消す騒音に悩まされているらしい。アミュレットでその騒音をかき消して予言をいつも拾っているらしいが、今は何らかの事情で持っていないようだ。うーん、この案件を解決すれば推薦状もらえるかな。

「いいですけど、その代わり推薦状くださいね」

 了承すると、助手を務めているAgataを紹介してくれた。その人に話を聞けばいいのか・・・と、Dagail師は手を見せてくださいと言われた。俺は言われた通りに差し出す。

「あなたの手に街が見えます。そして星も見えます。塔が門の番をしている。でも門は鍵を握っている。王は鍵、そして手が王を守っている」
「!!」

 ・・・この人はマジモンだ。恐らく街はKvatch、ひょっとするとOblivionの脅威に晒された他の街。塔はOblivionの門を開閉できるあの塔、鍵はSigil Stone。王は恐らくMartinのことで、王が鍵ってのは、Martinは世界を隔てる結界の要の一つであることか。手ってのは、俺のことか。そういやMartin、俺に命を預けるとか言ってたよな・・・。

 ま、この人と話していてもこれ以上埒が明かないので、早速Agataさんに会いに行く。

「推薦状のことなんですが、Dagail師の不調を治せば出してくれますか?」


「彼女があまり良い状態じゃないってしっているよね」
「ええ、騒音がどうとか言ってました」

 Agataさんによれば、彼女には予知能力があるそうだ。ただ、アミュレットを紛失してからうまくいかなくなってるらしい。アミュレットは精神集中に効果のある代物。彼女はその能力が高く評価された。ただし、年のせいで予見が明確なものでなくなり、とはいえこれまでの功績から評議会は地位を与えたそうな。
 だが、DagailがAgata無しに支部を回していけないのは事実。ギルド内でも彼女が支部長に就任していることに疑問を持つ者もいるそうだ。

「予言者の石についてだけど・・・何かご存知ですか」
「それについて彼女が君に話すとは驚いたな。彼女は誰にも知られたくないようだったが・・・私も話してみることにしよう」

 さっきの会話では精神集中程度の扱いだったアミュレットが、今度はそれがないとほとんど無力になる、と打ち明けてくれた。今の彼女は無力、というわけだ。指導力を疑問視する者もいる中で、これがばれればどうなることか・・・。Agataは石を見た事がいる人がいないか、探してくれと言った。


 錬金術師のDarkElf、Alves Uvenimは、石が大事な物で、それが紛失した、とKaltharから聞いたそうだ。


 宝石マニアのKhajiit、S'drassaも、紛失騒ぎは耳にしているが、同じく情報源はKaltharからだそうで、しかも彼は紛失について喜んでいたと、かなり不審な行動をとっていたようだ。
 ところでチェストにSkoomaがあったんだが・・・。まあ、Khajiitは麻薬が効かないから罪の意識も無いわけだが。


 ま、Kaltharが一番怪しい。都合のいいことに入り口近くで本を読んでいた。

「聞いた話じゃ、Leyawiinギルドホールは好意で彼女に任されたんで、彼女がそれに値したからではないんだ。これは間違ってるよな、そうじゃないか?」
「俺は部外者だからねえ・・・」

 内輪もめはギルドの長い友人。Dagailの部屋にあった本、ギルドの起源についての本だったな。あれにも内輪もめのことが書かれていたっけ。

「で、予言者の石の紛失について聞かせてもらおうか。アンタが話を広めたってみんな言ってるぜ」
「ああ、知っているとも。AgataとDagailが話しているのを立ち聞きしたんでな」

 こいつ、開き直りやがった。フン、反Dagail派の急先鋒はこいつか。彼女の力はマジだが、いかんせん彼女は神秘的すぎて一歩間違うとボケ老人だ。そういう彼女に嫌気が差したか。

「彼女はこれ以上ここにいるべきじゃない。彼女の父が上手くやってきたのはいつも低姿勢だったからに他ならない。それで奴はどうなった? 帝国に何年も仕えておいて、墓さえないんだぞ?」

 こちらが聞いてもいないことをペラペラと・・・こいつは本格的に怪しい。大方、石をどっかにやったのもこいつじゃないのか?

「もう少し・・・」
「何? まだ十分に話して無いだと? ただ去ればいいんだよ。ここで何が行われてたか知ろうもんなら、事はそうも行かなくなるぞ。あんたもいずれ分かるだろう。変わらないものなんてないんだよ」

 下手に出ればつけあがりやがって。まあいい。奴が去ったのを見計らってAgataさんに経緯を話した。


「Kaltharが盗み聞きしていたのですね、違いますか? 彼が最近怒りっぽかったのもそれで説明がつきます。しかしDagailの父親については何も話したことはないんだが」
「蹴落としたい相手のことくらいは調べるからね」
「ま、Dagailに聞いてみるといいよ。その間、Kaltharから目を離さないから」
「ありがとうございます」

 当のDagailはすぐそこにいるので聞いてみた。相変わらず神秘的な言い方をする人だ。悪く言えば、回りくどい。


「血は青ざめ、竜は空高く舞い上がった。壊れた塔と崩れ落ちた死体の下で、それは見つけられるのを待ちながら横たわっている。お前に求める言葉があるのなら、私の父のものであったものは私のものに違いない。お前は彼の石を見つけに行かなければならない」

 ふむ。なくなった例の石がそこにあるのか、それとも父が同じものを持っているのか。いずれにせよ、そこに行かなければならない。それにしても、ねえ。「青ざめた血」の「塔」か。砦のことかな。地図を広げると、「Fort Blueblood」っつーそれらしい名前の廃砦があった。


 早速馬を走らせる。街道を途中から山道に進む。


 修道院から馬借りっぱなしだが、故人の持ち物だし幾らなんでもそろそろ返したほうがいいだろうか。うーん、どこかに黒馬が売ってるはずだし、ギルドを回るついでにそれでも買おうかな。


 ここか。確かに「壊れた塔」だ。


ただし、


 住んでる奴らはいるがな!


 盗賊どもだ。家具が置いてあるところを見ると、ここを根城の一つにしていたらしい。
 頭と思われるOrcから鍵を抜き取る。しかしどこで使うんだ、と思ったら奥に向かう扉に鍵がかかっていた。わざわざねぐらの中に鍵をかけるのもおかしな話だ、と思ったら中に男の死体。はてな、と死体を探っていたら殺気が押し寄せてきた。


 Will-o-the-WispとSpriggan。共にやっかいな敵だ。Will-o-the-Wispは移動がすばやく、気がついたら眼前にいるなんてことになるし、Sprigganは熊を召喚してくる。ははあ、こいつらを閉じ込めていたのか。
 ま、ちゃっちゃと倒した。見回すと、ここが一番奥だったらしい。棺が並べられている区画だ。ここに件のものがあるだろうし、さてさてどこかなーなんて探すと、その中の一つに求めるアミュレットが見つかった。「崩れ落ちた死体の下」だな。さて、さっさと帰ろうか、と思ったその時。


 お?

「待て、そ、そこで止まれ。いいな?」
「おま・・・何しにきたんだ」

 Kaltharめ。アミュレットをよこせとか言ってきやがった。ち、Agataさんを振り払ってやってきたか。ギルド内では、ギルド員に対する盗みや傷害、殺しはご法度なんだがな。脅しも似たようなもんだろ。やれやれ、こいつが元々Dagail師の持ってたアミュレットを盗んだ犯人か。


 俺が首を振らないのにキレたKaltharは襲い掛かってきた。スケルトンを出して斬りかかって来る。しかし、奴が着ているのは防御力も何も無い魔術師用のローブ。そして、狭い場所では剣が有利だ。


 あっさり返り討ちにして、さっさと帰った。ギルド員に対する盗みに脅しに殺人未遂。除名処分級のことをしでかしてまで欲しいものなら、その努力をさっさとマトモなことに回せばよかったのにな。


 俺の雰囲気から察したのか、それとも予言の力か。Dagail師は、俺が何かを言う前から石を持っている事が分かったようだ。Dagailは悪い人ではない。年長者だから若いギルド員を子供のようにかわいがってくれる。俺も彼女にかかれば「坊や」だ。
 ま、案件を解決したことで、推薦状を書いてもらえることになった。よっしゃー! と思ったが、Dagail師はそこで俺に予言をくれた。


「汝の未来に見えるものがある。それは、すでに、いや、すぐそこに、ある」
「え・・・」
「いくつもの運命の中から、お前はそれを選ばねばならぬことになる。生と死は奇妙なもの。簡単に操られる。二つともおまえ自身の手によって変えられる」
「・・・・・・」

 俺がCyrodiilに暮らす人たちのの生殺与奪を握ってる、とでも言いたいのだろうか。確かに、Oblivionの侵攻は多くの人を犠牲にするだろうし、俺もそれを止める活動をしている。だから間違いというわけでもないが・・・話が大きくなりすぎてイヤだな。とはいえ、運命がいくつもあるってのはいい。一本道で、最初から何もかも決められてるなんて最悪だからな。

 予言の内容を心に留め、俺は次の街、Bravilに向かった。
 そうそう。後始末だが、Kaltharは俺の報告で不名誉な死を迎えることになった。反Dagailを最も強く唱えていたのはアイツだし、それが不法行為をしたのだから暫くはDagailの退任を求める声は止むだろう。年だから流石にこの先長くは務めることはないだろうが・・・後に就任するのはAgataかな。彼女は魔法を売ってくれるが、売り物のリストからすると結構な神秘魔法の使い手でもあるし、ずっとギルドを回していたのなら反対の声も起こりにくいだろう。きっといい支部長になってくれるはずだ。


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(2007.12.30)