狩人さんと推薦状



 Bravilから次の街に向かう途中、大きな石像を見かけたので立ち寄ってみた。この国では初めて見かけたが、Daedraの聖地の一つらしい。鹿頭人身のこの神は、狩猟を司るHircineだ。信者はみんなハンター。捧げものもハンターらしく、狼の毛皮か熊の毛皮ときた。神様のお使いをこなすといいものが貰えたりする。楽なお使いだったらいいな、と早速弓矢を構えてその辺をブラブラすることにした。


 余談だが俺は、というか中の人が弓が下手糞でこの距離でも当たらなかったりする。まあ倒せることは倒せたので皮を剥ぎ取ってお供えした。


『餌を使って呼び出せ。狐が口を閉ざさねば、野兎はその身を縮めるのだ』

 辺りに響くDaedra特有のしわがれた声。現世に早速召喚されたようだ。ただ、例の障壁が邪魔をしているため、石像をよすがに声のみを送ってくる。
 ハンターが崇めるだけあって、お使いの内容はユニコーン狩り。Harcane Groveっつーところでミノタロウスに飼いなさられたユニコーンがいつそうだ・・・ああ、何か思い出してきた。道を外れてショートカットしたらそんな奴等に襲われたな。襲ってきたもんで倒すしかなくて・・・。
 ・・・。俺は鞄の中からユニコーンの角を出した。

 まあ、変なことになったがそれでもHircineは喜んだようだ。報奨として耐魔法25%のSaviour's Hideっつー毛皮で作られた高性能の軽装鎧をくれた。Sigil Stoneのエンチャントでも20%がやっとのところを25%もいくとは、流石。




 Cheydinhal。


 ここの厩に黒馬がいるとのことで、早速お金を出した後は、ギルドにお邪魔した。ここの支部長のFalcar師はやたら上から目線+メイジギルドの最近の方針に攻撃的な物言いのHighElfだ。ま、それはおいといて、試験の内容は、先日「重荷の指輪」の試験を行っていたところ、俺と同じAssociateがそれを持ち出し、不当に手に入れて、何を考えていたのか裏の井戸に投げ込んだから取りに行って来い、とのこと。これを取りにいけば推薦状を贈ってやるそうだ。
 井戸の鍵を持っているのは、DeetsanというArgonian。


「もし私に分別が無かったら、私は彼が君を殺そうとしていると叫ぶでしょう!」

 穏やかな物腰のDeetsanは、俺の腕を掴むとひそひそと耳打ちした。物騒な内容に俺が思わずじろじろと彼女を見ると、井戸に指輪を投げ込んだ、というAssociate、Vidkunについて話をしてくれた。彼は熱心な若者だったが、先日、俺と同じ課題を与えられたきり行方不明になったそうだ。話がおかしい。俺は眉をしかめた。彼は指輪を投げ込んだのではなかったか。

「どうも話がおかしいですね。わかりました。俺は溺れることは無いでしょうが、十分気をつけます。何かあったらいち早く知らせますね」

 不安そうな彼女から鍵を受け取り、ついでにちょっとした変成魔法も教えてもらうと俺は裏に向かった。


 これが井戸か。土を舞い上げて汚す事が無いように静かに身を沈めると、魔法光で辺りを照らして奥に進んだ。


 ・・・。
 俺が見たのは、行方不明になったVidkunのなれの果てだった。最近井戸の水の味がおかしい、と出て行くときに誰かが話しているのを聞いたが、まさかここで果てているとは・・・。荷物をさぐると、非常に重い指輪が見つかった。しかし、こんな身軽な格好で持ちきれないものだろうか。おまけにここは変成魔法のギルドだ、初歩の軽量化や水中呼吸の魔法くらいはいくらなんでも使えるのではないだろうか・・・。いざとなったら指輪を捨てるくらいもできたはずだ。俺は首をひねった。もしかしたら、Vidkunは課題に見せかけて殺されたのだろうか。俺は背筋が寒くなり、誰かがつけていないか周囲を見た。幸い、俺が水中が得意なArgonianだからか誰もいなかったが、俺は用心して井戸を出た。


 武器に手をかけつつギルドに入ると、心配顔のDeetsanが真っ先に駆け寄ってきてくれたので、指輪を見せた。しかし、彼女はそれはその辺に捨てておけばいいと言いつつ、俺が井戸に行っている間のことを打ち明けた。
 最近の横暴な振る舞いに彼女はとうとうFalcar師に対峙し、俺を援助したことを話したという。彼は彼女がこれまでのことを本部に報告すると言うと、聞くに堪えないことをわめき散らし、「お前たちの命はもう長くない」と吐き捨てて出て行ったそうな。責任ある支部長の言動とはとても思えない。俺は首をかしげた。とりあえず、Vidkunが死んでいたことを短く告げると、彼女はひどく悲しんだ。急いで井戸から引き上げしかるべき葬儀を行うと呟いた。
 ま、このままだと推薦が受けられない。困った俺に、Deetsanは手を差し伸べた。ホントにええ人だ。

「彼の部屋に推薦状か何か変わったものを見つけたら持ってきてください。部屋は地下にありますから。恐らく引き出しや箪笥の中を調べる必要があるでしょう」
「わかりました」

 泥棒のマネをする俺を彼女は優しくフォローした。本当に良く出来た人だ(2回目)


 ここか。
 引き出しなどを探ったがこれといったものは出てこない。が、オープンなメイジギルドにふさわしくなく、厳重に鍵をかけた箪笥があったので、


 えい。
 開錠魔法をかけて中を探ると・・・どす黒いソウルジェムが見つかった。

 噂に聞いた事がある。
 通常のソウルジェムは、最大の容量をもつものでも魂の大きいヒトを捕らえる事が出来ない。しかし、ネクロマンサー御用達のこの黒いソウルジェムならそれが可能だと・・・。今のギルドはTravenが指導者になってから死霊術は禁止している。倫理的な問題や、人権に反するせいだろう。死霊術めいたことといえば、たまに錬金の店で死体の肉や骨粉が売ってたり、召還でスケルトンやゾンビやリッチを呼び出すくらいだ。そして、今や死霊術師は殺害対象。俺もMorrowindのギルドで殺しを請け負ったことがある。
 何はともあれ、評議会は半分が辞任し、かなりの人間がギルドを抜けたそうだが、こうして残っていたネクロマンサーもいたのか・・・バレれば殺されかねないかなり危険な行為だが、何か目的があったのか?

 Deetsanはソウルジェムが見つかったことにひどく驚いて、しかし推薦状は見つからなかったのだが、この事件の報告に含めておくと約束してくれた。俺は井戸に戻ってVidkunを引き上げる作業を手伝った。
 ま、死霊術全てが悪いというわけではなかろう。例えば死霊術の極意であるGhost Gateは、Red MountainのDagoth Urを押し留めていた。だからこそ最近まで禁止されなかったんだろうが・・・要するに使い方の問題だ。死霊術それ自体は悪ではないと考える者も多い。ただ、個人の肉体と精神は侵害してはならないし、黒ジェムなんかも倫理の問題がある。第一、死体を利用するからイメージも悪いんだよな。扱いどころの難しい術であることは確かだ。例えて言えば、死霊術は包丁のようなもの。料理に使えば人を喜ばせられるが、人を刺すことも出来る。問題は、人を刺したがる使い手が多いことか・・・。


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(2007.1.8)