盗賊ギルド加入試験
そのやることとは・・・。そう。
以前俺は不可解なメモを手渡された。差出人は盗賊ギルドのマスターと言われるGray Fox。彼、というか彼率いる盗賊ギルドは物乞いたちを使った独自の情報網を持ち合わせているとされる。物乞いの情報網については『乞食王子』参照。Bladesの任務にこれは使えるだろー。
地下組織っていったらDark Brotherhoodもあるんだけどさ、あれ非合法でヤバイ組織だし、関わらないに限る。第一俺はMorag Tongだし。ボスのEnoさんの命令で奴等の組織のメンバーを暗殺したりしたことが何度かある。

いつものローブ姿じゃまずいので、いつぞやのユニコーン狩りのときに貰った鎧を着てそれっぽい格好をしてみた。少しはらしく見えるだろうか。

おっと、既に先客が居たか。
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一人はWoodElfのMethredhel。俺と同じで、ここに家を構えている。それっぽい格好をしていたとはいえ、盗賊志望だったか。
長年ギルドに入るための準備をしていたらしい。なかなか出来そうだ。理知的な目つきをしている。
もう一人は、物乞い一歩手前の格好をしたArgonianの少年、Amusei。Methredhelと違ってちょっとやぼったい格好をしていることは否定できない。

俺はArmandにメモを見せた。
「『黒衣の英雄』。ふふ、馬泥棒で留置所に捕まった間抜けな悪党よ。Gray Foxはお前に盗賊ギルドに入るチャンスを与えている」
「間抜けは余計だ」
ふん、流石というべきか、調べはつけられていたか。『黒衣の英雄』と聞いて、一瞬二人がざわついたが、Armandは手を上げて場を制した。盗賊なら英雄でもなんでも構わないらしい。

「ではこれより始める。お前たちは皆、盗賊ギルドの入団資格を求めている。ギルドは作り話ではない。我々はGray Foxの部下であり、俺は彼の指示を受け取る『長老』だ。まずは俺を見つけることで最初の試験は合格とする・・・が、同時に三人もの希望者がいるのは珍しい。そこで通常の技能試験ではなく、コンテストを行う」
それは公正じゃない! とAmuseiは怒ったが、大学の推薦状のためにで全土を駆けた俺からすれば妥当なことにも思われた。それに、見つけなければならない人が地上にいるっていいことだぞ。合法暗殺ギルドで有名なMorag Tongなんか、街中に堂々と支部がある割にはVivicにある本部は秘匿されてて、そこにいるボスを自力で探し出すことが入会の条件だったりする。支部の人はVivicにいるってことしか教えてくれないし、複雑な構造の区画がいくつもあるので、下手すりゃ帝都よりややこやし・・・おっと。のんびり思い出に浸かってる暇は無かった。
Armandはルールを説明する。Methredhelは何故かルールを知っていたが、要約するとこうだ。試験においてお互いを殺しあうことは禁止。ターゲットも例外ではなく、Amantius Allectusを殺さず、彼の日誌を盗んでArmandに持ってきた者をギルドに加入させる。物乞いが情報を教えてくれるかもしれないそうな。
俺はそこで寝ていた物乞いに話を聞くと、ぐずぐずしているAmuseiを置いて駆け出した。

前方にはMethredhel。中々早いな。

だが、俺だって足には自信がある!
情報によると寺院地区にターゲットは住んでいる。俺は一番早くそこに行き着くと、手早く魔法で開錠した。ちんたらやってるとMethredhelに追いつかれる。しかしまあ、怪盗Bal Molagmerとして活躍してた頃が懐かしいな。


日誌、であるからか、それは机にしまわれていた。
だが、そこに書かれていたものは・・・吸血植物の生育日誌だった。最初はネズミ。そして猫、犬、そして人血。何とこの日誌を書いた人物は、ヴァンパイアと植物の雑種を作ろうと試みたのだ。しかし、手間がかかりすぎることから、破棄することを決断している・・・。
ホントにそうかね? 日誌の最後には、土壌の生成方が書き残されていた。

ほら。

地下に降りると、血液にまみれた植物が育っている。ふうん。気が変わったか。しかし、Armandはこれをどうする気かね。吸血植物なんて物騒な上に手間暇かかるもんを、暗殺系ならともかく盗賊ギルドが栽培したがるとは思えないが。日誌を入手したということは、目的は配合法と生育記録の破棄か? 奥さんが植物のことでぼやいてた気がするんだけど、でも奥さんが顧客なわけないよなあ。だってこんなに近くにあるんだから破棄するなら自分でできるだろうし。ま、俺には関係ないことか・・・。

俺は下水への扉を開錠すると、さっさとそこを通って外に出た。ふむ、大学の推薦を貰う時の試験より、ある意味試験らしい内容だったな。情報収集、開錠、誰にも見られない隠密の技術。これらが無いと駄目だもんな。大学の推薦はアレ、力技でも切り抜けられるんだよ。ぶっちゃけ戦士のほうが向いてた気がする・・・。

日誌を手に戻ると、既に、ArmandとMethredhelが先に居た。Amuseiはどこかに行ってしまったのかどこにもいない。俺は彼に日誌を手渡した。
俺は正式に加入することになったが、ギルドには三つの掟があるという。団員から盗まず、仕事において誰も殺さず、貧者から盗まず。農民と物乞いはGray Foxの保護下。特にWater Frontではそうなんだとか。ま、一つ目の掟はメイジギルドでもあることだな。
基本的に盗賊ギルドの方針は品行方正な悪、つまり義賊。Morrowindでは新参者の盗賊ギルドは、3st Era初期に活躍した怪盗Bal Molagmerの名を利用し、借金のカタに取られたアミュレットやら土地の権利書やらを盗んで返し、弱者を救済していたことがある。地元のギャング団Camonna Tongとの抗争の激化で名声を上げる必要があったのだ。折角なので、もっと詳しい話を聞いてみた。
話によれば、Gray Foxはギルドマスターのようなもので、もう三百年生きているとされる。しかし、手配書は明らかに人間の特徴が記されている。エルフならともかく、そんなに長く人間は生きていられるわけないのだが・・・はてさて。
ま、俺はまだ新米なので特に、ギルドから任される仕事もない。それに、盗品を買う人にも色々いるようで、仕事をこなさないと他の仲買人を紹介してもらえないそうな。ここら辺はスパイ防止のためか。確かに、うっかり官憲のスパイを入れてしまったらギルド関係者を芋づる式に一網打尽しかねないもんな。俺も表では英雄だし、金に困って盗賊やってんじゃなくて情報網欲しさだからなあ。ある意味うさんくさい。ま、一人、Brumaに住んでる仲買人を紹介してもらった。盗品って普通のお店で売れないんだよな。これからは盗品を売りさばくことで信頼を得ることになるだろう。

話が終わると、Methredhelは帰っていった。
俺は、内心首をかしげた。彼女は、盗賊ギルドについて知りすぎている感じがする。もしかして、彼女は新人の振りをして紛れ込んでいるギルドの人間なんだろうか・・・。
だがまあ、Cyrodiilはおおむね平穏なので、敵といったらガード連中くらいだろうな。上は鼻薬で符抜けにされてるようだし、それくらいなら何とか血を見ずにやりすごせるだろう。あっちでは抗争で団員が何人か殺害されたし、向うの戦士ギルドとCamonna Tongが癒着していたお陰で何人か連中を暗殺せざるを得なかったが、本家本元はのんびりしているようだ。
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(2007.1.13)